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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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若き日の少女の純愛。其の一

◇夢に出てきた女
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その早朝、私は面妖な夢を見た。
能面の鬼達が、太鼓を打ち鳴らしながら舞い狂う、
石川県能登の郷土芸能[御陣乗太鼓]の夢だった。

御陣乗太鼓は私の好きな演太鼓の一つで、二十数年前に再婚妻と能登を旅し、
曽々木海岸のホテルでその演舞を見た経験がある。だから、その夢自体は別に
妖しくはない。いや、妖しいどころか、夢の中の私は妻と共に、鬼達と一緒になって
太鼓を連打していたのだから、夢としてはたのしいものだった。

だが私は、目覚めてから奇妙な事に気が付いた。夢の中の女性は妻ではなかった。
なのに私は、その別人女性を夢の中で妻として受け入れていた。

(はてな・・・)私は首を捻った。
ゆっくりと覚醒していく脳裏に、夢に現れた女性の、顎だけが少し尖った丸顔。
目尻に笑み皺がある丸い眼や、上を向いた鼻、そして白い前歯の二本だけが
大きい、オチョボ口が浮かんでくる・・・。

「あれはアコ、外川朝子だ・・・」
呟いて、隣の寝床で軽い寝息を漏らしている妻の顔を見つめた。
能登に同伴したのは、その直後に入籍した、この15歳も年下の
二度目の妻であるのは間違いない。
それが、どうして夢の中で、朝子と入れ替わったのだろう・・・。

フロイトの言によれば、『夢は無意識的な己の願望の充足である』であり、
その意味では確かに、私には思い当たる事がある。

二十八年前、前妻と別れる原因となった女性が朝子だった。
私の意識の奥底に、朝子への想いが潜んでいたのは否めない。

しかし夢には、[夢枕]の言葉もある。
(もしかして、朝子の身に・・・)そう考えると、私は戦中生まれの七十二歳の日本人。
夢占いは、不吉な方に傾いてしまう。

朝子と私は、彼女に言わせると[赤い糸]で結ばれた縁だったらしい。
だが私は、その赤い糸の存在に、三十年前まで気が付かなかったのである。
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若き日の少女の純愛。其のニ

◇華やかな世界
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そんな可愛げのない朝子から、私は自然に離れていった。
その年流行った言葉で言えば[不快指数]が50%の少女。
前年ヒットした映画タイトル[勝手にしやがれ]である。

それに、その時の私には恋人がいた。
さらに夏から、私は舞踏用品部の[日劇]係にもなっていた。
それは華やかで愉しい仕事だった。
昭和三十三年から始まったウエスタン・カーニバルで隆盛した日劇は、
宝塚レビューでも客を集め続けていた。
さらに、その日劇の上階にあるミュージック・ホールの上品でエロチックな
レビュー・ショーは、連夜満員になるほどの人気を呼んでいた。

まだ公には、ポルノが解禁になってはいなかった。
ピンク映画の第一号と言われる[肉体の市場]が封切られるのは、
翌年の三十七年三月である。
裸の女体を堂々と観られるミュージック劇場に男が群がるのは当然だった。

その劇場の舞台裏に、私は自由に出入り出来たのだ。
成熟した女性の裸身を間近に見られて、親しく会話も出来る仕事だった。
朝子など、とても構う気にはなれない。

その業務は、男女ダンサーの舞台衣装をオーダー・メイドで販売する事だった。
男性ダンサーはともかく、女性ダンサーの身体サイズを測る時は眩しい。
相手の女性のむほとんどが素足素肌の裸。ミュージックホールのダンサー等は、
乳房丸出し、股間には小さなバタフライのみである。
しゃがんで彼女らの下半身を測る私の眼には、眩し過ぎる。
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若き日の少女の純愛。其の三

◇派手な生活
純愛3-1
私の人並み以上の放蕩無頼、女体遍歴の数多い経験は、
その時の彼女(アカネさん)との恥戯によって培われたのは間違いない。

週に一、二度。約二か月間。彼女の青山の洒落たアパートから、
会社に出勤した事も数多くあった。
だが福運は長くは続かず、破局が来た。

夜遊び好きな私は、遅刻欠勤の常習者だった。
それに加えてアカネさんとの情事がバレて、上司にこっぴどく叱られたのだ。
お客様である日劇の踊り子さんと、ふしだらな関係になるなんて、
Yの社員にあるまじき行為だ、と。

その年の四月の末、私は竜郎や朝子に何も話さず、銀座Yを辞めた。
アカネさんが、私の知らぬ若い男とアパートに深夜帰ってきたのを、
待っていた私が目撃してしまった故もある・・・。

十月。私は新宿東口のF(今は廃業している)に再就職した。
この店には、地方から集団就職した若い女店員が十数人も働いていて、
銀座Y出身者でちょと粋がった長身の私は、かなり愉悦を味わえたのだが、
今回は朝子との私の話、省略することにする。

ただ、私がこの新宿や渋谷で夜遊びできる金を、稼げた訳だけは記しておく。
Fは当時新宿に多かった、廉価販売の店むだった。同業店の販売合戦は激しく、
各店には歩合とも言うべき褒章制度があった。

Fも例外ではなかった。粗悪で安いメーカーの品物を売ると、一つ百円ほどの
バックマージンが貰えたのだ。さらに、返品の利かぬ傷物を売ると、
給料の日給計算並の五百円。何しろラーメン八十円、コーヒー七十円、
新宿牛屋の鉄板焼ききですら五百円で食べられた時代だから、
これは大きな余禄だった。

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若き日の少女の純愛。其の四

◇破瓜の儀式
純愛4-1
井の頭線の階段を降りて、左手に五十歩程歩くと、
[ムーン・ライト]の洒落た木製のドアがある。
各席はキャンドルの明かりだけ。暗い店内中央のピアノだけが照明を浴びている。
そのピアノには、仲良くなった中年のピアニストが楽譜をめくっていた。

私は片手を挙げて挨拶した。笑顔で頭を下げた彼が、すぐ鍵盤に両手を伸ばす。
ムーン・リバー。来れば私が必ずリクエストする曲だった。
何時ものように、支配人が私を席に案内してくれる。

ステーキが八百円。バイオレット・フィズのカクテルが百五十円。
ウイスキーのダブルも二百円。その夜の懐なら大余裕だ。

好みの曲を弾き続けてくれるピアニストに酒を奢り、
支配人や料理を運んでくれるウェイターにもチップを渡し、冗談を交わす。
どうにも鼻持ちなら無い若造で、思い出したくも無いが、仕方が無い。
それが私の青春時代の素顔だった。

その場の雰囲気に呑まれて、初めは強ばっていた朝子の表情が、
カクテルの酔いもあってか緩み、
銀座では見たことが少ない、笑顔が浮かび続けるようになった。

酔って愉しげにはしゃげば、リスのような眼は可愛く、小さく幼そうな肢体にも
魅力が生まれる。ノースリーブの肩口から露な二つの腕や、薄めに膨らむ
乳房の形も、酔いの回った眼で眺めれば官能的だった。

私は腕時計を見た。深夜の一時少し前。タクシーの初乗りは八十円。
だが、まだ鶴見まで朝子を送る気にはならなかった。

勘定を済ませて外に出て、ふらつく朝子の肩を抱いて身を支え、
相合傘で道玄坂の暗い裏道を登った。
道は途中で、玉川線の雑草が繁る線路沿いになる。
私は朝子の腰を引き寄せた。思った以上の尻の弾力。
私は無防備に仰向いた小さな唇に口を重ねた。

朝子はキスに応えた。しがみつく腕の力の強さに、それが彼女の意志だ、
と私は勝手に解釈して、道玄坂を横断して丸山町。連れ込み宿は何軒もある。
宿泊料は五百円程度。その夜の私には安いものだった。
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若き日の少女の純愛。其の五

◇17年目の再会
純愛5-1
昭和五十六年六月二十六日。
今から三十年程の前、その日私は朝子と十七年振りに再会したのだ。
その頃の私は、Mの豪放な社長に重用されて、四十一歳で月給が四十万円を
越える、幹部社員になっていたのである。

Mは私の入社後の十二年間に、女性雑誌やテレビ等にも取り上げられ、
店舗数も売り上げも多い、横浜の超有名店に発展していた。

閉店間際の夕刻だった。私は店の前にある商品本部にいた。
「昔のお知り合いの方から、お電話が・・・」
インターホンの声で、私は何気なく受話器を取り上げた。

「もしもし、わたし相沢朝子です・・・」
記憶にない姓名を名乗られて、私は首をかしげた。
「相沢さん?えーと・・・」
「うふふ、覚えてないの?あ、そうか、旧姓は外川朝子、アコです・・・」
「あ!」私は受話器を握り直した。

「アコか?あのアコか?」私は声を小さくした。隣室は店の経理部だった。
「そうよ、覚えていてくれたのね?ああ、良かったあ!」
聞き覚えのない熟女の声だった。しかし、語尾が跳ね上がるアクセントは、
紛れもなく若い頃の朝子の特徴だった。だが、懐かしさの故か、
その電話の朝子は饒舌な熟女に変わっていた。

結婚して、二人の子供が居る事。私の居場所は、以前に銀座Yの古株に
私が渡した名刺で知った事。今日は女の友達と横浜に遊びに来て、
今は横浜駅の地下街から電話をしている、等を性急な声で喋り続ける。

「判った、判った!でも電話じゃ仕様がない、店が終ったら、
 その友達も一緒に夕飯でも食おう、何処かで待っててくれ」
忘れていた朝子の声を聞く私にも、強い懐かしさが込み上げてきた。
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若き日の少女の純愛。其の六

◇甘美な不倫の味
純愛6-1
私達は山下公園前の通りを歩き、往来する車の雨飛沫を自然に避けて、
マリンタワーの下から裏道に入った。
街灯は明るいが、人影はない。港で霧笛の音が響き、霧雨に濡れた黒い路面に、
さらに黒い、相合い傘の私達の影が伸びる。

「なあ、あの彼女、もしかして・・・・」
「思いだした?そう、あの日の友達・・・」
朝子がクスッと笑う。
「似てるわねえ、あの夜と・・・霧雨も降ってるし、友達も遠慮して帰っちゃたし、
 あの時と同じ・・・それにね、今夜もあの日と同じ様に彼女がカバーしてくれるから、
 泊まっても平気よ・・・」
「じゃあ、あの時も・・・」私は絶句した。
「そう、兄貴は何も知らないわ・・・」

朝子が足を止めて私を見上げた。
「ねぇ、あの時と同じ様に、あたしを抱いてくれない?思い出したいの・・・」
私は無言で朝子の肩を引き寄せた。

強く彼女を抱き締め、眼を閉じて仰け反る白い顔に、情熱のキスの口を重ねた。
朝子の濡れた唇も舌も、燃えるように熱く私の口に吸い付いて、
狂おしい鼻声のすすり泣きと共に、私の心を激しく揺さぶる。

処女を与えた男を、女性は忘れる事が出来ない、と言う。本当にそうだった。
この濃厚なキスは、彼女の恋慕をはっきりと示していた。震え続ける肌の熱さ、
キスの合間に私を見つめる潤んだリスの眼・・・。

「探したのよ、ずっと探していたのよ・・・中学の時から好きだった・・・
 絶対あなたのお嫁さんになるって、兄貴に頼んでYに入れて貰ったんだから・・・」
その言葉も私の胸を激しく打つ。

私は昂揚してくる彼女の言葉を、深いキスで封じた。もう言葉は要らない。
互いの燃える肉体で語り合おう、と。

ラブホテルで朝子と合体した瞬間、彼女は乱れに乱れた。
激しく身悶えながら涙を流して泣いた。果てても私を離さなかった。
私の精を注がれた豊潤な裸身を快楽の余韻に震わせつつ、
私にしがみついて泣き続ける。
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儚く消えた年上の女。其の一

◇エレベーターガール
儚く1-1
昭和三十七年(1962年)六月中旬の午後五時過ぎ、
私は地下鉄銀座駅の狭い階段を昇り、鳩居堂前の銀座通りに出た。

銀座のデパートや商店が定休日になる月曜日。表通りは閑散としていて、
歩く人の姿も何時もより少なかった。
通りを往来する都電の車輪の音も妙にのんびりと響き、蒸し暑い地下鉄から
出た身には、普段と違う静かな街の空気は爽やかに感じる。

私は脱いでいた夏ジャケットに腕を通し、六丁目方向に歩き出した。

空は明るく晴れていた。だが、私が歩く側の歩道や都電通りは、
西日を背にした建物の影がほの暗く覆っていて、立ち並ぶ柳並木の緑も黒っぽい。
逆に通りの反対側、松坂屋デパートの上部は残照を浴びて、
休店しているのに目立って明るい。

小松ストアの手前で右に曲がり、不二家洋菓子店の前を通って、
私はニブロック裏の、みゆき通りに向かう。

銀座の裏通りは月曜日でも賑わっている。勤め人相手の飲食店が多いからだ。
特に、みゆき通りの三平食堂のガラス張りの一階二階は、
早くも宵の雰囲気が漂う日陰の中に煌々と明るく、
庶民的なガラスの二枚扉を出入りする男女の姿も多かった。

その手前にあるトリス・バーの看板にも照明が入っていたが、
柳原史子と待ち合わせた時間は六時半。幾らなんでも早すぎた。
初デートなのに、事前に酔ってしまっては洒落にも成らない。
西日に向かって少し進み、私は小さな喫茶店に入った。

念願叶って、史子との初デート。私の懐には、給料の前借分を足して、
九枚の千円札が入っていた。軍資金としては充分だし、彼女のために、
それを全部使い果たしても悔いは無い。気分も高揚する。

その彼女、柳原史子は私より七歳上の二十九歳で、未だ独身だった。

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儚く消えた年上の女。其のニ

◇同伴喫茶
儚く2-1
空はまだまだ明るいが、みゆき通りはすっかり夜のムードになっていた。
この通りをうろつく若者、みゆき族が発生するのは二年後の昭和三十九年頃からで、
まだこの頃は、トリス・バーやニッカ・バーが軒を並べる大人の飲食街だった。

私は人込みを縫って、西銀座通りの角にある、地球儀型のネオン看板を
屋上にした森永ビルに歩く。その一階のゴルフショップの前が、
史子との待ち合わせ場所だった。

ゴルフ店が定休日なのは承知のうえ。網アルミのシャッターの内、
ゴルフバッグやクラブが並ぶ暗いショーウインドーのガラスを鏡にして、
私は自分の姿を点検した。

髪は短め、散髪したばかり。
白地に細縞の夏ジャケットに白ワイシャツ、紺のニットタイ。
ズボンは裾が細めの濃紺で、靴は渋谷駅前の靴磨きに磨かせて、
ピカピカ輝く黒革のスリップオン。まあまあだ。

六時二十五分。眺めた腕時計から顔を上げたとき、森永ビルの角から、
淡い藤色のシャーベット・トーンのワンピースを着けた女性が駆け寄ってきた。

史子だった。
「あら、またせちゃった?」
私は慌てて首を振った。今来たばかり、と口の中で呟く。
何故か揚がってしまって、声が出なくなっていた。
制服を脱いだ彼女は、まるで別人のように変貌していたのだ。

手にしたバッグと、履いているパンプスもパール加工の濃い藤色。
口紅の色も、パールトーンのピンクに変えている。
そんなトータルファッションが凄く似合っていて、私は何か圧倒されていた。

「なんだ、待たせちゃ悪いと思って、走ってきて、損しちゃった!」
そう笑う声も若々しい。それに最新の流行色を身に纏っているせいだろうか、
史子は仕草も馴れ馴れしく、私の腕に軽く腕を絡めてくる。
そして先んじて歩き出す。

気が付けば、みゆき通りを歩く銀ブラ女性の殆どが、
シャーベット・トーンの淡い色彩の服を着ていた。

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儚く消えた年上の女。其の三

◇恥毛の中の熱い場所
儚く3-1
史子は、背を屈めてグラスにストローを差し込み、
「ここ、同伴席ね?初めて入ったわ・・・」小声で言い、上眼使いに周囲を見回す。
その怯えた兎のような白い顔を見て、私は激しい罪悪感に駆られた。慌てて、
「下が満席だったから、でもすぐ出るから・・・」と言い訳がましく囁き返した。
「ううん、良いのよ、平気。何か面白いし、もう少し居ましょうよ・・・」

ストローを口にしたまま、史子が私に眼を走らせて、微笑んだ。
そしてストローを口から放して背を起こし、柔らかなウエーブの髪の毛を撫でつつ、
私を見つめた。
「今日は楽しかったわ、でもごめんね、最後に私、だらしなかったわね・・・」
その囁くような声。優しく笑む眼。私の身体に熱い衝動が湧き上がった。

思わず、「史子さん」と熱い息で名を呼び、私は彼女の肩に左腕を回していた。
史子が悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「うふ、私はうんと年の離れたお姉さんなのよ、それでも良いの・・・?」
引き寄せた白い顔が仰向き、潤んで光る眼と、ピンクの唇が微笑む。

綺麗だった。妖しかった。私は史子の頭を抱き締め、
紅を塗り直したその唇に、夢中で吸い付いていた。

柔らかく冷たく感じる唇だった。だが、蠢く舌は甘く温かい。
私は逆らわぬ史子を、いや、それどころか胸の膨らみに手を当てても
拒まぬ彼女と、狂おしいキスを続けた。

乳房を揉むと、史子の息遣いも荒く忙しくなった。
その喘ぎと柔肌の感触に煽られた私は、
彼女のワンピースの裾から差し込んだ片手を、太腿の肌に這わせた。

滑らかなストッキングが付け根で途切れ、温かな柔肌に触れた指先が、
バンティの布地を膨らませた恥部に押し当たる。。

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儚く消えた年上の女。其の四

◇遠くへ行きたい
儚く4-1
翌週の月曜日。一抹の不安を抱いていた私の前に、
史子は約束どおりの時間に現れ、松坂屋裏の洋食屋でご馳走してくれた。

ただ、その後、長袖の白い絹ブラウスに薄茶のタイトスカート姿だった史子は、
先夜と違う、大人の女性だった。言葉遣いも姉のように穏やかで、
優しい微笑みは絶やさないが、はしゃいだ態度は片鱗も見せなかった。

だからと言って、そんな彼女に私が落胆した訳ではない。食事前に、
「この間は変な事をして、ごめんなさい」
と同伴席での悪さを改めて詫びた私を、
「良いのよ、そんなことを謝られたら、また君と会えなくなるじゃないの・・・」
と白い頬を恥かしそうに赤く染めて、軽く睨んで呉れたのだ。

そう、私はそんな彼女の大人の面、甘えられる成熟女性の雰囲気に、
憧れていたのだ。暫くは、弟の身分で充分だ、と私は恋の原点に戻る事にした。

その日以来、私達は週に二回ほど、夜の食事デートをする仲になった。
休日が違うから、夜しか会えないのは仕方がない。
私の休みの月曜日か、彼女の休日前の土曜か金曜の夜。
私達は銀座の街を、姉弟のように仲良く徘徊した。

ただ、史子は深酔いしなくなった。
楽しげに街を歩いていても、腕をあまり絡めてこない。
若い私の獣心を刺激しないための、大人の女性の配慮だったのだろう。
むろん私も、自分の欲情を押し殺して、四月に封切られた映画、
[キューポラのある街]で純愛を守り通した、若者役を務めていた。

その結果、彼女はさらに私に心を許してくれ、八月の末頃になると、
史ちゃん、幸ちゃん、とお互いを親しく呼び合うようになり、
常連になった飲食店の連中から冷やかされるような、恋人同士になれたのだ。

そして、ケネディ大統領がキューバを海上封鎖し、
いわゆるキューバ危機が報じられた日、十月中旬の月曜日だった。
私達は銀座梅林でカッを食べ、みゆき通りのトリス・バーに入った。

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儚く消えた年上の女。其の五

◇最高のセックス
儚く5-1
私はこういう手順に慣れていない。いつも簡単にセックスできる女性しか
知らない若造なのだ。微笑みながら襖を開けて、行灯明かりが枕元にある
夜具に静かに潜り込む史子の姿を、私はぼんやりと見つめていた。

その私に史子が無言のまま微笑み、くるりと身を捻って、背を向けた。
それが私の呪縛を解くきっかけになった。私は恐る恐る夜具に潜り込んだ。
すると彼女が身体ごと振り向き、肌を重ねた私の首に両手を回してくる。

「幸ちゃんよりお姉さんなのに、私余り知らないの、教えてね・・・」
囁く声が震え、恥かしそうに細められた眼の縁も、その頬も早くも紅色に
染まっていて、睫毛や唇も慄いている。何か感動した私は、
「俺もあんまり知らないけど、乱暴にはしないから・・・」と囁き返した。

うん、と史子が頷き眼を閉じる。その唇を塞いだ。
史子は顔を反らせ、喘ぎながら、私の首にしがみつく。
夜具の上だ。互いの熱い肌とも密着している。
同伴喫茶の時よりも激しく、そして狂おしいキスになるのは当然だった。

白い顔を真っ赤にして、史子は激しい息漏らしつつ舌をうねらせ、身悶える。
その間に私は彼女の帯を解き、浴衣の前を大きく開いて、
淡い藤色シャーベット・カラーの、ブラジャーやパンティを脱がせた。

艶々と滑らかで、きれいな肌だった。乳房の膨らみは大きくはないが、
尖った乳首が小さくて可憐だ。範囲が狭い恥毛の茂みも、
私が経験したどの女性より繊細で、覗いている赤い秘烈も初々しい。

乳首を口に吸って、恥部に手を埋めた。
あっあっ、と小さな声を漏らし、史子が私の首や髪の毛を撫で回し、
力を緩めた股間を大きく波打たせた。恥唇は濡れそぼって、
吸い込まれるように柔肉に沈んだ私の指は、深く史子の胎内に進んだ。

ああっ、と顔を反らせた史子の肌が、燃える様に熱くなる。
それ以上に熱いのが膣の奥だった。襞がざわついていた。
それを指の腹で擦ると、史子の肌に震えが沸き、腰が浮き上がってくる。
股も開いた。そして弄る膣道が甘美な収縮を始めた。

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花の銀座で芽生えた恋。其の一

銀恋1-1
昭和十五年、(1940年)東京渋谷の駅前で生まれた私は、
今年三月多摩川沿いの静かな川崎の町で七十四歳の誕生日を迎えた。
戦中、焼夷弾の降り注ぐ空の下を、母親に手を引かれ逃げ延びた幼児時代。
黒煙が渦巻く天空を覆う、銀色に輝くB29の爆撃編隊の姿を、
私はおぼろげに覚えている。

敗戦後。混乱期の食糧難の少年時代は、大人が味わった苦労を、
スイトンやカボチャが主食の姿で、僅かに知っている。
つまり私には、戦中の恐怖や戦後の生活難の記憶が、殆ど無いのである。
その代わりに、青春時代の記憶は濃い。

黄金の六十年代と呼ばれた昭和中期。
日本の高度成長時代に、私は自由気ままに青春を謳歌していたのだから、
甘酸っぱい思い出が数多く残っているのは当然だった。

そんな甘酸っぱい思い出の中に、私が数多く重ねた恋愛の中で本気に愛し、
そして失恋した。忘れ得ぬ一人の女性がいた。

昭和三十四年(1959年)四月。
私は目指していた多摩美術大学を諦め、商業高校を卒業して、
銀座の老舗洋品店に就職する事にした。

その頃、一回りも年が離れた長兄が肺病になり、
勤めていたその洋品店を長期休職する事になったからだった。

別に健気な気持ちからではない。銀座の知名度が学友に対して格好良かったし、
デザイナーを目指すと言えば、もっと格好よかったからである。
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花の銀座で芽生えた恋。其のニ

◇年上の女性
銀恋2-1
私は映画スターの石原裕次郎が軽く足をひきずる、いわゆる裕次郎歩きを
真似をして歩き、みゆき通り入り口角にあるゴルフ用具専門店に入った。

その頃の私は、背がひょろ高く、だから脚も長くみえるから、
そんな歩き方も結構サマになっていたようである。

その頃は映画の絶頂期で、休日や通勤に裕次郎を真似たラフな服装を
好んで身につけていた私は、給料のすべてを使える四男坊のせいもあって、
意外なほど酒場や食堂の女性達にモテていたのだ。

いつ訪れても閑な店であった。
客が無人の店内には、顔見知りになった女店員の西田典子が一人いた。
「いらっしゃい」と笑顔を向けて、ガラスケースの上に灰皿を滑らせる。
「それ、新しいたばこでしょ?アメリカの煙草みたいで、格好良いんじゃない」

店内の床は銀座でも珍しい、分厚い緑のカーペット敷きだった。
私は短くなったハイライトを灰皿に揉み消して、
「ここは涼しいから、いいね・・・」と、これも珍しい店内奥の冷房機を指さした。
銀座の商店でも、扇風機がのさばっていた時代である。
冷房の効いた店は数少なかった。

「今日はなあに、パターの練習したいの?それとも何か買ってくれるのかなあ?」
典子が明るい笑顔を傾ける。私はその仕草と笑顔に惚れていた。

まだゴルフはこの店が常に閑なように、一部の上流階級の遊びで、
一般的には普及していない。しかし私は、高給取りの古顔先輩に強引に誘われて、
この春から数寄屋橋の角にあるビルの狭い屋上練習場で、彼の手ほどきを受けていた。

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花の銀座で芽生えた恋。其の三

◇欲望に震える接吻
銀恋3-1
私はゴルフの練習をやめた。
典子との映画デートが叶ったその日から、
その費用と時間が惜しくなったのだ。

典子は二十七歳。私は二十歳。
姉と弟のような年齢差だが、恋する私の気持ちと、
誘えば必ず映画デートに応じてくれる典子の優しさが、
私たちの関係を恋愛にまで発展させてくれたのだ。

私はその恋に夢中になった。典子も同じく、そうだったろう。
その日以降の私と典子は、休日のたびに映画を見、
毎日のように店の閉店後には喫茶店で談笑する恋人関係になった。

だが、それはあくまでも清い交際、キスも交わさぬ姉弟のような関係でもあった。
しかし、当時はそれが普通の男女の恋愛観でもあったのだ。
絶頂期だった映画の銀幕のヒーローやヒロインは、常に忍従の恋愛期間を費やして、
破局したりハッピーエンドになったりしていたのである。

現代の若者のように、心が通じ合う前に、いきなり肉体関係を迫るような恋愛は、
女の貞淑とか貞節の言葉を重んじていた、この時代の男女の間には生じなかった。
清き純愛への憧れとその実践が、若者達の心に根強く染み付いていた時代なのである。

翌昭和三十六年。
正月三日、アメリカとキューバが国交断絶した年である。
そんな世界の動きと関係なく、私と典子はますます親しくなり、
互いの友人を紹介しあい、グループとなって新宿の歌声喫茶に行ったり、
流行っていた奥多摩ハイキングに出掛けたりしていた。

その頃の写真が数枚残っている。
私の中学生時代の男の同級生三人と、典子の友人女性一人と奥多摩の
高水三山巡りをした時のものだ。

私と典子は、山社を背景にした記念写真でも、山道を歩いているスナップでも、
常に腕を組んで寄り添っている。
私はサングラスをして、袖をまくり上げた黒い長袖シャツに、細身の黒いズボン姿。
典子は白っぽいポロシャツに、これも細身のズボン姿だった。モノクロ写真だから、
その服の色は判らないが、アルバムには私の字によるメモ書きが残っている。
[ノンちゃん(私は彼女を、その頃には愛称で呼んでいた)の、イエローのシャツの
 胸のマークが羨ましい]
そうメモした理由は覚えている。刺繍されたマークは有名ゴルフ場の物なのだが、
私が羨ましいと書いたのは、その下の典子の右の乳房に密着していたからだった。

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花の銀座で芽生えた恋。其の四

◇激情の迸り
銀恋4-1
その勃起に気が付いたのか、
舌をうねらせていた典子が低く呻き、顔を仰け反らせて舌を離した。
私は典子の白い喉に口を滑らせ、
さば折りの形で胴を回した腕で絞り、彼女をさらに仰け反らせた。
典子の膝が折れた。
支えた私の腕の力に身を任せて、激しい喘ぎを漏らしつつ、
ずるずると地面に崩れ落ちていく。

私は抱き締めた典子の肌に重なった。無防備に仰向いた典子が、
「だめよ・・・」と小さな声を漏らして身悶えた。
初めて密着した彼女の肉体は柔らかく、そして異様なほど熱かった。

「ノンちゃん!」私はその名を呟き、ワンピースの上から乳房を弄り掴んだ。
柔らかく円い膨らみが、モワッとした感触で弾む。
「だめ、だめよ・・・」典子が乳房を揉む私の腕を押さえる。
「お願い、キスだけ、キスだけにして・・・」
典子が顔を起こした。額でふんわりと双つに割られ、耳を包む位置で
カットされた黒髪の間で、典子の目が潤んで光っていた。

「ごめんね、私は来年結婚する事になったの・・・」
私は愕然とした。まさに青天の霹靂だ。
「結婚?どうしてっ?誰と!」
「仕方なかったのよ。いつまで独身を続けるんだ、と社長に叱られてね、
 お見合いを断ったあのメーカーの人と、社長や親と一緒に今日会ってね、
 婚約してしまったの・・・」
「そんな・・・!」私は絶句した。

頭の中が真っ白になった。
その痺れた頭の中に、遠い典子の声が染み込んできた。
「でも、わたしはゴウちゃんが好き・・・
 結婚するなら、その前にせめてキスだけの思い出は作って置きたかったの」
その哀願的な告白に、私の全身には言いようのない衝撃が起こった。

裏切られた怒り、いやそんな簡単なものではない。爆発的な衝動、
そう、理性を失った暴力性の激情と言うのか・・・。
「嫌だっ!」
私は叫び、典子の頭をかき抱いた。
「ノンちゃんは俺のものだ!誰にも渡さないぞ、絶対に渡さないっ!」
荒々しく唇を奪った。ワンピースの裾を強引に巻き上げ、
膝頭で割った典子の股間に片手を押し込んだ。

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花の銀座で芽生えた恋。其の五

◇女体を知った夜
銀恋5-1
夏が来て八月の末、私と典子は互いの店で同日の、
二日間の休暇を取る事が出来た。むろん彼女の婚約者は知らない。
今考えれば、私も典子にも、ふしだらで破廉恥な、一種の不倫旅行だった。
しかし、世間知らずの若い私はともかく、典子はそんな旅先でも年上らしく大胆で、
しかも屈託が無かった。

信越線の横川駅で下車し、昼食に名物の釜飯弁当を食べる間も、
横川の町を歩く時も、まるで夫婦のように振る舞っていた。
町外れにある信越線の小さなガードトンネルを潜り、
眼下に流れる渓流沿いに山道を緩やかに登って行く。
腕を組んだ典子は楽しそうだった。

車一台がやっとの狭い山道は、奥多摩以上に鳥の鳴き声も野趣に満ちて、
そして空気も盛夏とは思えぬほど清涼だった。
行き会う人影もなく、私達は愉しく喋りながら、のんびりと歩いた。

四キロ一里。約三里の道程だった。しかし夏とはいえ、山奥の日暮れは早い。
渓流が細くなり、その急流を見せ始めた水車小屋の橋を渡って、
木造の宿の玄関先に辿り着いた辺りで、すでに霞のような薄闇がせまっていた。

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愛情一杯の茶封筒。其の一

◇大好きなお兄さん
a1-1
「おや、これはなんだろうな」
もう年齢的にも、そろそろ身の回りの始末をつけるべき時期が
来て居る事も有り、年末に古い写真や郵便物を整理していたら、
二つ折りにした汚れた茶封筒が出て来た。

表書きはない。もしかすると死んだお袋が残したヘソクリでも
入って居ないかと思って、いそいそと開いてみると、黄色く変色した
便箋が二枚出て来た。私は、はっと胸をつかれる思いがした。

「民子が私に呉れた手紙だ」
長い間忘れていて、無くなった物と思って居た、
民子からの懐かしい手紙だった。

「そういえば、あの時俺は確かにこの封筒に入れて仕舞い込んだのだった」
手紙を読み返す前から、当時の事が私の脳裏にまざまざと甦って来た。
「民子、覚えているかい?この手紙を呉れてから、
 おまえは俺を頼って上京してきたんだよ。覚えているかい」

独り言を言っているうちに、目頭が熱くなってきて、
私は一人暮らしの老いの寂しさに泣いた。
涙に濡れた目に、ぼんやりと民子の手紙の文字が滲んで見えた。

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愛情一杯の茶封筒。其の二

◇純真無垢な笑顔
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私が民子と知り合ったのは、私が新潟県庁職員で東京駐在のツアーコンダクター
等をしていた時の事だった
当時、私は県主催の物産店の企画や県立高校の修学旅行生の世話などをしていた。
民子はその修学旅行の高校生の中に居たのである。

新潟の海辺の町から修学旅行で上京してきた民子は、生徒の中でとりたてて
目立つ方ではなかった。と言うより地味な存在だった。
それなのに私が彼女に興味を持ったのは、
態度がきわめて慎ましやかだったからである。

修学旅行とあって、バスに乗って浮かれはしゃいでいる生徒達を尻目に、
彼女はいつもはじっこ席で、静かに私の解説を聞いていた。
すこぶる真剣に聞き入って呉れていたのである。まず、其の事が私の注意を引いた。
いつしか私は、重要なところでは、彼女の目を見て生徒達に解説するようになっていた。

次に私の目を引いたのは、ある建物を案内した時の事だった。
ズック靴を脱いで、スリッパに履き替える時に私は見てしまったのである。

なんと彼女の靴下は、目立たないように繕ってはあったが、
ツギハギだらけだったのである。私はショックを受け
「この子だけが、どうしてなんだ?」と思った。
その理不尽さに怒りさえこみあげてきた。

その理由(わけ)は間もなく判った。三時の休憩時間に成って、
その建物の周囲の庭で皆が一斉にオナツを食べ出した時だった。
ふと気に成って彼女を探したら、彼女は一人だけ群れから離れるようにして、
芝生の上に長い両足を揃えて投げ出していた。
(彼女は当時としてはわりと背の高い方だった)
私は背後からそっと彼女に近づいた。そして、また見てしまったのである。

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愛情一杯の茶封筒。其の三

◇やさしくして!
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民子と私の文通が始まった。文通はだんだん頻繁になって、
暫くすると週に一度は手紙をやり取りした。
そして私は時々、小包で封筒と切手を20枚便箋を一冊送ってやった。

民子が高校二年生から三年生に成る頃には、私達はもうすっかり親しくなり、
民子は私の事を「望月のお兄さん」と呼ぶように成っていた。
その呼び方には少しばかり不満もあったが、
「望月さんみたいな、お兄さんがいたらよかった」と、ある時民子が書いて来たので、
それならそう呼んでもかまわないと私が返事したのである。
私は「民子」と手紙に書くようになった。

そして、それから一年近く経って、私は民子に「東京に来ないか」と
手紙に書いてやった。
まさか来るとも思えなかったけれど、この頃になると、私と民子は単なる

ペンフレンドとしてではなく、恋人として相手を思う様になっていたし、
私は「民子の傍で暮らせたら」と言う思いが募っていた。

それから一カ月もしないうちに民子から「東京にいきます」の連絡が有ったのだ。
この日は私の人生で三番目に素晴らしい日となった。
一番目は民子と出会った日、そして二番目は彼女と初めて結ばれた日だ。

「あ、ああ、お兄さん・・・望月さ~ん」
私が住んで居たのは古いビルの2DKの部屋だった。
秋の西日が当たる寝室のベッドで(私は安物ながらベッドを使っていた)
私は初めて民子の体を抱いた。

部屋でコーヒーを沸かして飲んだ後、私はドキドキしながら彼女に覆い被さっていった。
夢中で前後の事はよく覚えていないが、彼女の額にキスをし、頬にキスをしてから、
初めて口を吸いあった。其の事はよく覚えている。
民子の口は、コーヒーと一緒に食べたケーキの甘い味がした。

私は片方の手を下腹部に移動させていった。
スカートの中をまさぐった。
「???」
民子はパンストを穿いていた。
其の事に初めて気が付いた。
パンストは確かこの頃から流行りはじめたものだった。

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愛情一杯の茶封筒。其の四

◇鏡に映る民子
パンストを穿く女
過去に私は、女を三人ほど知っていたが、彼女達はパンストを穿いていなかっものだ。
「これ、どうするんだい?」
私の手はツルツルした妙な手触りのする、パンストの表面を撫でるばかりで、
それをどう脱がせればいいのか判らなかった。

パンツと同じだとは判っていたが、何しろゴムの処も含めて、
パンストは民子の腰と太股にぴったりと張り付くように密着している。
指の入る隙間さえなさそうに思えた。

「うーん、たみこ・・・」
じれったくなって、私はパンストの上から彼女の盛り上がった部分を撫でた。
すると民子は「んん、あんんーっ」と呻くような声を上げて身悶えた。
私はなおも民子の股間を撫でさすった。

「うっ、うっ、あううう」
じんわりと温かいものが、私の掌に伝わってきた。
温かいと言うよりも、そこは他の肌に比べてはっきりと体温が高く、
熱いと感じるほどだった。

(火照っている!)
それだけで私は興奮し「民子は私に発情しているんだ」と単純に思った。
「脱げないよ、これ」
「ああ、ごめんなさい」
ファッションは都会的になっても、中身は純真な田舎娘のままの民子は、
目を開けてすまなそうに謝った。

「あの・・・」
民子は半身を起こすと、手をパンストにかけ、はっとしたような目で、
私を見つめた。
「・・・ん?」どうかしたの、と私は聞いた。
「これ、取るから・・・」
民子は恥じらいを見せてうつむいた。
「ああ、そうか・・・ごめん」
その仕種だけで、言いたいことが分かった。
「あっち向いて、見なければいいんだな」
私はちょっと戸惑いつつ壁の方を向いた。

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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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