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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の一

◇浴室のセクシードール
ゆびさきの詩3-4
日豊本線の列車が鹿児島駅を発車して、鹿児島湾沿いに潮の香りを嗅ぎながら
約一時間余り、煙草で名高い国分駅に着く。
この辺り一帯は霧島系温泉が無数に点在している。
山間の段々畑の傍らの小さなため池の様な露天風呂が山肌に白い湯気を染込ませて、
岩間から懇々と湧き出て、野良帰りの農民の憩いの湯と成っている風景が
心温かく旅人の旅情を慰めている。

宵闇と共に南国の晩秋の風が冷たく吹き抜ける。
国分の街から自動車で一時間余り、その昔、関所の有った宿場が昔ながらに
細々と湯の香を漂わせているK温泉は、時折史跡を訪ねて来る客の他、
ほとんど人に知られていない。

幕末の頃、勤皇の志士が尽忠報国の念を切々と詠った。
“我が胸の燃ゆる想いに比ぶれば 煙は薄し桜島山”
その桜島をはるか海上に望み、昼間は噴煙がたなびいてかすみ
時には中天高く溶岩を噴き上げて鼓動し爆発する様がうかがわれる。

薄墨の闇の中に浮かぶ対岸の灯・・・鹿児島湾一面に遠く近く
幾百千ときらめく漁り火は、大空の暗黒に瞬く星座の様にチカチカと点滅して
夢の国の風景と情緒をかもしだしている。

姉の初七日の法事も済み、親族達も引き上げて人心地ついた志津子は、
冷えた身体を数奇を凝らした岩風呂にとっぷりと沈めた。

豊かに溢れる出湯が乳白色の湯気をたなびかせて、ほの暗い明かりの中で
三十の坂を越えた女とは見えない脂の乗り切った張りの有る人魚の様な桜色をした
肉体のくねりが澄み切った湯の中に妖しく揺らいで居る。

乙女の様に豊かな乳の線、腰から尻に伸びる美しい曲線、
総てが艶かしく女盛りのたえなる匂いさえ伴うよ様な気さえ起こってくる。

近くを流れる小川のせせらぎが迫る外、落葉の音が、はらはらと聞こえる様は、
静けさの中で志津子の胸が怪しく乱れて、娘時代から人妻の頃の思い出が鮮やかに蘇って、
淫らなうずきが悩ましく、胸を突いて湯の中にうごめく己の身体を愛しく見守ると、
乳首がジーンと固く成って一層切なく、志津子は湯の流れにも揺れる豊かな乳房を、
ひしと抱きしめて悩ましく身悶えた。

  1. 小説・指先の詩(うた)
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其のニ

◇土地の風習(夜這い)Ⅰ
指先の詩02
昭和四十年前頃まで夜這いはこの地方の風習として青年の特権であった。
夜這いとは、宵闇の中の他人の家でも歩きもならず、
這って女の許に近寄る事から生まれた言葉である。
現在の様に不法侵入だとか、婦女暴行とかで兎や角の問題は起こらない。
娘持つ親達も身に覚えのある事なので文句の付けようが無いのだ。

夜這いも隣り部落への遠征ともなるとあらかじめその部落の
青年団幹部に酒の一、二升も届けて筋を通しておかないと、
時たま青年団対抗の乱闘事件となる。
乱闘と言っても切ったの刺したの殺したのと言う殺伐なものではなく、
口角泡を飛ばしての言論戦から始まり、最悪の事態に立ち入った時でも、
タンコブの一つ二つ出来るか、目の下に黒いあざをつくる程度の
犠牲者を出して物別れになる。

十六歳の春、村の中学校を卒業すると、男子は部落の青年団に、女は処女会に入る。
部落には青年宿が有って気の合った者達がグループを作って宿泊し、
見よう見まねによる性教育が施されて、その達人達を生み出すのである。

初歩の手始めは陰毛の長さ比べに始まり。
反り具合、太さ、長さが品評され、リンリンといきり立つ男根の障子の穴ほがしに始まり。
男根の根元に紐を掛けて、火鉢をつる重量揚げに至る室内競技の練習が行われて
其の成果に依って外征時の順位が定められる。

夏、スイカのシーズンともなると青年達はスイカ畑の番小屋に移動する。
夜中、十二時頃ともなるとスイカの番人の活躍時と成る。
他部落の青年が素裸で前進攻撃して来る。
こ奴等は、細い竹の先を削いだ筆の軸の様な物を持っており、
其の先をスイカに突き立て、かき回して中の甘い汁だけを
チュウチュウと吸い取って満腹すると、
愈々夜這いの本業に取り掛かるのである。
油断した青年達を尻目に村の娘達の穴を掘りまわして
風の様に引き上げてゆく。

翌日の夜半、やられた村の青年達に依って復讐攻撃が開始されるのである。
夜中の十二時頃、六人の青年が素裸になり越中ふんどしの前を外して、
チンポを夜風に吹かせて、無言でタッタッタッと駆け出す。
ふんどしは夜目にも白くハタハタとはためき源氏の旗印宜しく風になびいて居る。

  1. 小説・指先の詩(うた)
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の三

◇土地の風習(夜這い)Ⅱ
指先の詩03
指先を、割れ目にスーッと差し入れると、あっけなく飲み込むので、
二本の指に力を込めて膣の中をかき混ぜた。
処女だと信じていただけに小首をかしげ、少しがっかりしながらも、
最早堪り兼ねて、女の上へ這い上がり、マラに反りをくれて、
割れ目に押し当てぐーっと腰を落とした。

女は待っていましたとばかりに、
「フウーム」と尻を持ち上げて、くるりと廻す。
亀頭の先がコリコリした子宮口をつるりと撫でる。
「ウウーム・・・ハァーン」

女の喜悦が声に成って漏れ、巧みに持ち上げ、ゆすり、呻き、
のたうち、擦り付けては、ヨガリ泣く。
卓越した女の性技と溢れ出る淫水に茂男の官能は有頂天に成って、
口を吸い乳首を吸う大奮闘となった。だが其れはとんだ間違いで、
娘を狙って母親を授かったのである。

お春は昼間の仕事で疲れて夢うつつの中に受け入れたものの
今夜の親父のチンポは何と威勢の良いことかとその怒りかたの
物凄さに一人鼻を鳴らして狂喜し、仰け反って呻き持ち上げて
揺さぶったが、何時もの親父との調子とは違っているのに
ハッと驚き気が付いたが、今更止むに止まれぬ盛り上がりに
毒を喰らわば・・の例えの通り、四十女のふてぶてしさも手伝って、
むしろスリルを伴った喜悦をたのしみつつ益々盛んに情炎を燃やした。

女房を寝取られた被害者の親父さんは、至極のんびりした顔で
隣の室でグウグウスウスウと白河夜船の最中で、夢にお咲さんを
口説いていても、まさか女房の不貞はご存知あるまい。

被害者と言えば久方ぶりに母親と寝床を共にした志津子こそ
最大の被害者であったかも知れぬ。

傍に寝ている母親の異様な呻き声に目を覚まして、
うなされているものと思い声をかけようとして、痺れるようなムードが
漂っているのに気付いた志津子はハッと耳をそばだてた。

彼女の好奇心が動物的な母親の痴態を・・・
荒々しい熱気をはらんだ男と、女の息遣い、悩ましい呻きを
全神経を集めて聞いていた。

おぼろげにしか知らなかった男女の交わりを、母親によって
つぶさに見せ付けられて志津子の頭はカーッと火照り、
五色の火花が散り、あまりにも手近であまりにも強烈な刺激に、
瞬間呆然となって乳を抱いた。

目に見えない雰囲気の激しい感覚は志津子の肉体にも反応して、
体中が汗ばみ恥部に血の走るのを感じてムズムズ痒くなって来た。
一瞬の驚きが去り好奇心だけが残っている。

志津子は暗闇であるのを幸いに少しづつ落ち着きを取り戻し、
大胆になって、闇に動きを探ろうと一心こめて透かして見るが、
僅かに布団がむくむくと動いているだけである。

押し殺そうとする男女の荒々しい呼吸と悩ましい呻き・・・
バサバサと衣擦れの音に混ざって、クチャクチャと性器の触れ合う音が
志津子の聞き耳に流れ込み、異様な臭いが微かに鼻を突く。

生臭い熱気の様な雰囲気に志津子の胸は妖しく乱れて
炎のような吐息が漏れそうになる。粘っこい、つばが喉に掛かって、
咳払いが飛び出しそうになる。

必死に堪える志津子の頭はもうろうと霞んで性の疼きと未知の
交合の世界の片鱗を覗き、憧れと好奇心がはやり立って大胆になり、
片足をそっと母親の布団に差し入れて、そろりそろりと近付けた。
足先を通して、布団の律動が胸に迫って只やるせない。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の四

◇指の生命(Ⅰ)
画像 Z0001
母親に似て小柄な志津子も十八歳の春を迎えると身体全体が
女らしく膨らみ一寸したしぐさにも娘々した色気がにじみ出て、
女に成る日の遠くない事を忍ばせている。

白くふくよかな顔の端に、潤む眼差しに、風情を添えて、
時折り若い青年を見る目がキラリキラリと悩ましく媚態を囁いている様だ。
形良く整った可愛い受唇は匂い、男心を誘うように咲いている。

母親が性交に悶え、狂喜して、のた打ち回って痴態を晒した、
あの夜を境にして、女性の性の疼きを知った志津子は、
折お見て度々オナニーを楽しみ、もはや大人の世界に踏み入って
オルガスムの喜悦を、わきまえていた。

たまに都会から来た宿泊客の酔いに紛れた放言悪戯に、
また村の若い男達の口説きにも胸躍らせる年頃に成っていた。

八月の暑い昼下がり、鹿児島の辰雄兄さんが訪ねて来た。
彼は、母親の縁先に当たり、大学時代には野球部で捕手をしていた
今年二十三歳の逞しい好青年で、その男らしさは、
小娘の志津子の想いを募らせて密かに恋焦がれて居た。

それでも去年までは、兄さん兄さんと甘えて、縋り付けた志津子であるが
今の彼女には、眩しいような、恥ずかしさが先に立って、彼と向い合っても、
「お兄さんいらっしゃい」
小さく言って頬を染めた。
「志津ちゃんか、見違えるように綺麗に成ったな」

辰雄の視線は眩しそうに瞬いて志津子の胸の膨らみや腰の揺るやかな
スロープに食いついて離れない。
志津子は身体全体に視線を感じて、心の奥底からの温もりに
モヂモヂと恥じらいを見せて目を伏せた。

「全く驚いたなぁ。ニ、三年前までは、僕の背に負われたりして遊んだのに、
 こんなに可愛い美人に成るとは・・・」
「いやーん・・・そんなに、からかわないで・・・意地悪・・・イイーだ」
打つ仕草と言葉遣いは昔の様な無邪気さを見せたが、
真っ赤に頬を染めて、堪らぬように逃げ出した。

恋知り初める頃の娘らしい志津子の仕草は辰雄の心の琴線に触れ、
彼は温かい愛情を感じて、かねてから志津子を憎からず思う自分の中に
恋心の住んで居る事に気付いて、温かい微笑を送るのだった。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の五

◇指の生命(Ⅱ)
名称未設定 1396
辰雄は力を込めてその肩を抱きしめたが、
怒ったように只黙りこくって歩を進めるだけだった。

今にも辰雄が、がっちりとした其の腕で力強く抱いて唇を吸って呉れるのでは無いかと、
期待して志津子は恐ろしくも有るが、又恥ずかしくも有ったが、自分は其れを、
どう受け止めたら良いかと思案しながらも密かに心弾ませて、俯いて歩いていた。

楽しい夜道は短く、何事も起こらぬ侭に家の前に着いて
淡い志津子の期待は裏切られた。

辰雄の手の中からスルリと抜けた志津子は恨みを含んだ眼差しで
チラッと辰雄を見上げて家の中に駆け込んだ。

「ただいま」
明るい声で呼んだが何の応答もない。お父さん達、もう休んだのかしら。
「お母さん、お母さん」
家の中に志津子の声だけが反響して何の気配も感じられない。
「ホホ・・・、帰ってないんだわ・・・きっと藤山さんとこよ、
 あそこに寄ったら長くなるわ、泊まって来る事だって有るんですもの」

「お兄さん暑かったでしょう。汗を流しません事」
初々しく湯浴みの準備をする志津子に辰雄は新妻のような錯覚を起こして、
「あーそうするか」と湯殿に去った。

其の後へ客用の浴衣を持った志津子が続いたが、流石に混浴は仕切らず、
男女別の浴室で盆踊りの汚れと興奮を流した。

温泉で温めた身体に、南国特有の大きなやぶ蚊が飛んでくる。
湯上りの二人は二階のテラスで向かい合って涼んで居た。

踊りのゴミと共に洗い流した筈の興奮が二人の心に
埋火の様に残っていて息苦しい差し向かいである。

「叔父さん達、おそいなぁ」
辰雄の声は興奮の為にひからびてかすれている。
「久し振りにのんびりと、又飲んでるのでしょう」
志津子の答えも何となくぎごちない。
「あっ、痛い、この辺の蚊は大きいな、
 さあ、もう寝ようか、志津ちゃんもおやすみ」
この場の空気から逃れる為に辰雄は立ち上がった。

「ええ、ではおやすみなさい」
もう少し辰雄の傍で、たとえ言葉だけでも良い、
と未練を残して志津子が寂しそうに降りて行く。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の六

◇指の生命(Ⅲ)
名称未設定 1363
志津子も、今宵初めて触れた肩と肩の感触に女心を燃やして、
男の積極的な愛情を心待ちし興奮状態で有る、
抱かれたいと思う心の疼きが志津子の心の何処かでくすぶっている。

女の性へ目覚めた肉体が求める欲望は幼く未知で有っても
官能の燃え上がりに変わりは無く、男の持つ男独特の体臭が嫌が上にも
志津子を煽って何時も泊り客に寄って見せ付けられていた。
痴態を思い浮べて彼女の身体は熱く成って居た。

目眩む様な想いに呼吸を弾ませて、
ものも言わず辰雄の膝に縋りつき顔を擦り付けた。
雛鳥の震えにも似た志津子の戦慄が辰雄の膝にデリケートな感覚を伝えて、
同じ想いの極に達した陰と陽は口説きも口説かれもせず、相寄った。

「志津ちゃん、顔をあげてご覧・・・ほら・・・」
辰雄の手が可愛い志津子の頬に掛かって、
持ち上げると志津子は目を瞑って仰向く。

荒々しい男の手が乙女の頬を、挟みつける様にかき抱いて
激しく口を合わせ志津子も自然に男の身体に自分を密着させて、
其の手が男の首に巻き付き、映画のヒロインの様に甘い切ない接吻をかわした。

男と女の交わりを未だ其の身に知らないだけに、接吻の感触だけで、
ひたむきな陶酔の中に浸りこんで、精魂を傾けて、縋りつき、
吾が船を男の中に渡したい衝動に駆られ、胸は疼き、心が慄くのだった。

クネクネと半身を擦り付けると、体の中に火照りが襲い掛かって来て、
むずがゆく官能が痺れて、ヌラヌラと濡れて行く。

純愛より発して一途に思い詰めるひた向きな志津子の欲求に
辰雄の理性の枠が一つ一つ崩れ去り、今はもう動物的欲望だけが
蠢いているが、「王者の貫禄」が名残を止め、
志津子の後頭部と腰だけを抱いて静かに横に成った。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の七

◇指の生命(Ⅳ)
名称未設定 1415
微かに擦れ合う衣擦れの音が悩ましい雰囲気を
醸し出して、これまで、押えに押えて来た辰雄の
男根が猛り立ってドキンドキンと脈打ち。
男根に疼きを覚えて、辰雄は最早これまでと、
志津子の両股を開き、震える女陰にそそり立つ
男根を宛がい、片手で持ち添えて、入り口を
ヌルヌルと撫で回し充分に濡らして、
しずかに男根を差し入れた。

身体の中心に激しい痛さが走って志津子は
「ウゥゥッ・・・」と微かに呻いて仰け反った。
「痛い?・・・我慢してね、志津ちゃん」
初割の極意にしたがって、辰雄は、
静かに腰を押して興を極めようとする。
「ウゥツ・・・」
志津子が尻を引いた瞬間を捉えて辰雄が大きく
追い討ちをかけて尻を押すと、ヅヅツと言う様な
感触が男根を包んで根元まで入り込んだ。
「ハアッ・・・イタイ・・・」
「うぅぅ・・・うぅぅ・・・」
未通の秘肉を割って滑り込む快感に彼は
喜悦の声を出した。

静かに静かに腰を動かして六・七回も抜き挿しすると、
辰雄の情感は直ぐに極達して、志津子の身体を強く抱き締めて
その体内深く、思い切り射精してしまった。
志津子は彼が射精した瞬間、子宮の熱いシーメンにピチッ、ピチッと
心地良い感触を微かに覚えたにすぎなかった。

志津子が恐々ながら期待した欲情も興奮も一向に盛り上がるものが無く、
指の魅惑に比べれば誠に呆気ないものであった。

初夜にして性交による完全な性感の盛り上がりを望んだ
彼女の願いこそ無理であると何時の日にか志津子が、
女体の神秘を知り尽くして思い知る事が出来るであろう。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の八

◇性の行脚(Ⅰ)
指先の詩01
昭和39年、40年当時は「東京オリンピック」の開催を引き金に
日本は好景気に沸いていた。
霧島地方の主だった観光地にも大資本が導入されて、
軒並み改築工事が行われた。

すすけた木賃宿が堂々と旅館の看板を掲げる者が有ると思うと、
ちっちゃな商人宿が設備の行き届いたホテルに装いを新たにして、
名も無い湯の街がたくましい宣伝によって、一躍スターダムにのし上がって来た。

志津子の家では、母親の春子が、時代の波に置いてきぼりを喰って
日毎に衰退して行き、其れに加えて、お人良しの父親の保障被りで
益々行き詰まっていた。

幸か不幸か、南九州のの「林業王」と自他共に許す伊集院翁が、
近くに有る持ち山視察にこの村に来て居たのだった。

伊集院は好色と云う程の事も無いが、美しい物は総て自分の物に
したいと言う「独占欲」の強い老人で、訪れたこの村で志津子の
艶姿を見初めて、持ち前の独占欲が頭を持ち上げてきた。

今までの様に書画骨董の類であれば金に糸目をつけずに、
難なく入手出来るが、相手が人の子であるので、その訳にもゆかず、
志津子ゆえに伊集院は此の村で一番きたない旅館の客となった。
その経緯は志津子の母親、春子が若い頃「伊集院家」に行儀見習いとして、
伊集院の屋敷に奉公していたことが切っ掛けとなっていた。

伊集院と、どんな約束が出来たのか定かでは無いが、
伊集院は惜し気も無く、す寂れた旅館の改築に金をつぎ込んで、
日一日と大工事が進み一流の旅館に生まれ変わって行った。

落成披露を後数日後に控えた或る日、
志津子の姉、佐智子が実家に帰って来た。
佐智子には坂崎と言う恋人が居た。同じ福岡のデパートに勤める
サラリーマンで中々の好青年である。優しい坂崎は公私に渡り
佐智子の理解者で何時も佐智子を庇って呉れるのだ、
彼女は結婚の許しを得る為に勇んで帰って来たのだが、
家で彼女を待って居たのは辰雄との祝言の話だった。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の九

◇性の行脚(Ⅱ)
ゆびさきの詩2-1
だが志津子は更に哀れである。
最愛の人を姉にゆずって六十の坂を越した伊集院には
志津子には父にも匹敵する息子がいる。
彼等は、それぞれに独立して別の事業を経営していて家には居ないが、
何時の日にか会った時、彼らは何と挨拶するだろうか。

ともかく姉妹夫々に哀愁を胸に秘めて、その運命に従った。

金の力ゆえとは言いながら、総てを観念して自分の許に来た志津子を、
伊集院は目に入れても痛くない程に愛おしくなった。
月に一度か二度の務めを果たしさえしてくれれば、
彼女がどんな我が侭を言っても自由にさせて咎める事は無かった。

いきおい金にあかせて旅行することが多かった。
今度の志津子は東京の従姉妹を訪ねて、一月あまり帰って来ないので
ボツボツ伊集院の身体が、志津子を求めていたので、
毎日街の郵便局へ便りの有無を問い合わせているが
なしのつぶてで何の音沙汰も無かった。

その頃志津子は寝台特急はやぶさの壱等車で(現グリーン車)、
今度の旅行が殊更に退屈に日々を過ごしたので憂鬱だった。
鹿児島で待っているだろう年老いた夫の顔を想い出すと
更に気が滅入って、暗い顔を車窓におしつけていた。

春だと言うのに箱根の山は、雪を頂いて冬を思わせるように寒い。
名古屋へ着く頃には一段と寒気が増して、乗客はコートを羽織っているが、
ヒーターが壊れているのか暖房の効きが良くない。

列車が名古屋に着いた時、志津子の前の客席に、壱等車には不似合いの
三十二、三の男が乗り込んで来た。様相も優れてはいないが、
目元に愛嬌があって口から鼻の感じが何処と無く辰雄に似たところが有って、
志津子は、目を見張って男を見つめた。
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十

◇性の行脚(Ⅲ)
指先の詩09
時間の経過に比例してときめきが溜まって来てそ知らぬ振りに、
過ごせないまでになると、志津子は高田の足をコートの下で
キュッとつねってトイレに立った。

今のつねりは、悪戯をとがめてか、
それとも着いて来い云うのか判断に苦しんだが善意に判断した高田は、
志津子の後を追ってトイレに行った。

トイレの中で彼女は、
「いやな人」と睨んだが、怒っては居なかった。
「誰か人が来るわ」と言おうとすると高田は強引に、
志津子を抱きすくめて唇を吸った。

香水の香りと甘い芳しいヌメヌメとした感触が高田の
欲情を一層掻き立てる。高田は誰も来ない深夜の
トイレで志津子の片脚を高く抱え上げ、ひきった膣に
反り返った男根を差し入れた。

この所浮気する機会に恵まれず、一月余り男日照りを
過ごして居た、志津子の肉体はもう完全に燃えて居た。
唾もつけていない高田の大物を何の苦も無く飲み込んで、
「ハァー・・・」悩ましげな声を出した。

カタコトと列車が奏でる振動が巨大な男根に伝わって、
子宮の内、外にジーンと伝わって、時折レールの継ぎ目で
突き上げるショツクが加わると、志津子は高田の首に
しがみ付いて尻を左右に振って力んだ。

高田の男根が固く子宮を突き上げて痛いほど子宮が
膣の方に競り合って男根に絡みつくので、男も女も
共々心地良く、高田が無理な体位で、
十四、五回も抜き差しすると、
「いいわ・・・・とてもいいい・・・」
「うぅぅーん、アハァアハァ・・・ン」
「いきそうよ・・・・アーン・・・イク・・・イク・・・」
「僕もいい・・・イキマスよ・・・」
と二人同時に呆気なく精を遣ってしまった。

志津子は列車の振動を局所に感じるのか、
たまらぬ程、快感をそそるので、何時までもこの体位で、
この侭居たかったが、深夜とは言え何時、
人が来るか判らず、その方に気を取られて、
「此の儘では私未だ満足出来ないわ、
 私、京都で途中下車するから貴方も付き合って」
と高田の同意を求めた。

早々に高田の腕に持ち上げられた脚を外して、
ハンカチで高田の男根と陰毛に粘りついた淫水を
拭ってやり、自分の陰部はパンティで拭いて便器に捨てると、
恥ずかしそうに席に戻った。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十一

◇性の行脚(Ⅳ)
画像番外 0394
先程の仲居が手持ち無沙汰に立って待っていた。
茶碗に漬けた黒い輪は大きく膨らんで、中ほどの穴が
五円玉程に成っている。
丹波の山奥の野生のコンニャクで作った性具リングである。
野生のコンニャクは畑のコンニャクの十倍以上のひきが有り、
如何に精製してもアクが強く、エグミが抜けず、
食用には使用出来ないと言う。
此処の一風変わった仲居は得々として説明を続ける。

志津子はそ知らぬ振りで鏡台に向かって居るが・・・
鏡の中の其の顔は好奇心に輝いて居るようだ。

仲居の話しは更に続いた。

中央の穴を指で開いてカリ首とサオの境目に首輪の様に
嵌めると亀頭の首を締め付けて、その圧力で少々
しなびれ掛けた一物でも「カッ」と充血して怒張する。
是を嵌めて女性の膣に差し入れる。

性交を行っている中に、滲み出た淫水でリングは
益々ふやけて膨らみ、エグミが性器を刺激して
かゆみを覚える。
大きく膨れ上がったリングであちこちと撫で回されると、
如何なる女性でも半狂乱と成って、
其の快感にのたうち、よがり泣く。

普通の性具と異なって使用している男根も
エグミの作用が性感を刺激し、
得も言われぬ快感に満足する。

是はインポテンッの人に良く効くので有名である。
この様な内容のことを説明し終わって仲居が、
「旦那様、私がはめて進ぜますから、チョツト出してお見せやす」
と、膨れたコンニャクを持って差し出した。

高田は慌てて前を押えて、
「いゃ、ありがとう、貴女の説明で良く
 判りましたから、もう結構です」
その過剰すぎる親切に辟易して断った。
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十二

◇性の行脚(Ⅴ)
画像 2085
志津子も、二度や三度のオルガスムスで有ったなら、
疲れの色も見せなかったろうが、
男のカリ首に嵌められたリングから浸み出る汁の刺激と、
膨れ上がったリングが、男根の様に膣の天井をグイグイと、
小突くので、何時もの様に思って、
余韻の喜びに浸って腰をうごかして居ると、
其れが次ぎの盛り上がりに繋がってしまうのだ。

今はもうどうする事も出来ない淫魔地獄に陥って、
男が其の男根を外さぬ限り何時までも続くのか判らない。
男の性感を損なわない事が特徴だと、
仲居が力説していたが・・・
アルカリの作用で血の巡りを良くして、
勃起に著しい効果があると言うが、
肝心の射精の時の通路を余りに強く締め付けるので
精液が吐き出されず精嚢に逆戻りする感じで、
男根は勃起し続けるが射精感が無いのだ。

高田はリングを外して、自然に勃起するのを待って、
志津子の中に挿入した。
「フゥフゥ・・・ハァハァ・・・」
吐息も荒く、スカスカ、ピチヤピチヤ、狂気した様に
腰を使って突きたて攻め立て、嵐の様に荒い息を
志津子の首筋に吐き掛けてドクドクドク・・・
と射精して動かなくなった。

夜も明けて、仲居達が忙しく、掃除を始めた頃
彼と彼女は、大きく取り乱したまま深い眠りに
さ迷いこんでいた。

旅は道連れとか、旅の恥はかき捨て、とか言うが。
ふとした巡り合わせで燃え上がった恋は、
旅の徒然にしては、刺激が強すぎた。
志津子は辰雄の指の思い出を高田にかぶせ、
伊集院家の妻で有ることを忘れ、性の快楽に溺れた。
京都に二日も滞在し、昼と無く夜と無く、二人は
求め合い、貪りあった。

三日目に福岡に移動し、伊集院翁と滞在した事の有る
Sホテルに宿泊した。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十三

◇女のなやみ(Ⅰ)
ゆびさきの詩4-1
鹿児島湾を抱き込んでいる薩摩半島の南端に指宿がある
指宿を指呼の間に臨む山川港は枕崎と並んで、
かつお漁の根拠地として栄えている港だが、
沖縄密輸の盛んな頃には此処から帰って来る密輸船が可也見受けられた。

ホロと呼ばれる一本釣りのいさり船は標高920mの開聞岳を目標にして帰って来る。
*開聞岳の標高は正式には924mである*

南の突端に柳樹や蘇鉄に囲まれたブロックの近代建築が
開聞岳を背景にしてショウシャな姿を見せている。

宵闇せまる頃にはハマユウの花咲く海辺から磯の香りが漂ってくる
異国情緒に富んだ平和な夢の園こそ志津子の別荘である。
その辺り一帯に大小の温泉郡を持ちながら、俗悪な環境のない地を選んで
三年前に亡き伊集院翁が若き妻の歓心を求めて建てて呉れた。

数奇を極め、贅を極めた調度品が各部屋に満ち、
浴室には特に意を凝らして、温泉ホテルにも匹敵する
豪華な作りに成っている。
こんこんと湧き出る豊かな湯が絶えず浴槽に溢れ出て居る。
大きな一枚ガラスの向こに潮騒を聞き、
湾口を隔てた対岸の大隅半島が横たわって見える。

夜になると、その先端に位置する佐田岬の灯台が、
漁り火の中に一際よくピカピカと光を放っている。
無数の漁り火がプラネタリウムの様に、煌く様が、
浴室の中から手に取るようにうかがわれる。

十八歳の秋、四十余り年上の亡き「林業王」伊集院友隆に
惹かれ、泣く泣くその愛を受入れて鹿児島に出て来たのだ。
亡夫友隆の舐めるような愛情の中で成長してきた志津子である。

落葉の音にさえ涙するような乙女の感傷を擁く年頃に、
初恋の人と裂かれた傷跡を大きく残して来ただけに、
愛されれば愛されるほど総てが、疎ましく金に飽かして
旅行を楽しんだ。

旅先で、行きずりの男と情を交わすのが、せめてもの
レジスタンスで有った。

この数々の乱行を、気付いて居ながら、
決して怒った事のない友隆は、
大きな愛情で志津子を包み込んで居た。

男としての機能が役立たなく成ると、起死回生を頼って、
志津子の身体のあらゆる部分を舐め廻し、吸い尽くし、
指先は絶えず乳房をもてあそんで、最後に臨む陰部の臭いが鼻をついた
瞬間だけ精気を取り戻した様な気に成るのが嬉しかった。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十四

◇女のなやみ(Ⅱ)
指先の詩13
「ウン、佐智子がね、志津ちゃんが寂しがって
 居るから、行けって突然言い出したものだから、
 あれも来たがってたけど近頃又、例の病気が
 思わしくなくなってね、僕だけ来た様な訳なんだ」
「そう・・お姉さま悪いの・・」
「悪いって程でもないんだがね・・・
 それにしても志津ちゃん、相変わらず綺麗だね
 昔とちっとも変わってないよ・・・」

辰雄は憂鬱な家の事で心配させまいとして話題を変えた。
「あーら、それお世辞?お兄さんこそ、あの頃と
 ちっとも変わってないわ・・・少し太ったのかしら
 貫禄が着いて来たわよ・・」
志津子は未だ褒め足り無い気がして辰雄を見上げたが
適当な言葉が見つからなかった。
「いゃー志津ちゃんに褒められると、お世辞でも
 嬉しく成るよ、チョツト腹が気に成って居たからね」

「お兄さん、きっき例の病気がつて、おっしゃってたけど
 姉さん、何処が悪いの」
志津子の顔にチョツト暗い影がさした。
「二年程前から、パセドウ氏病に掛かってね、
 大したことは無いんだが心臓が衰弱する
 病気だから心配だよ」
「そぅ、ちっとも知らなかったわ、母さんも大変ね」
「うーむ、それ程でもないよ、ただちょっと油断してると、
 すぐに起きて来て働きたがるのでね、其れが心配さ」

部屋の空気が暗くよどんだ時、お兼さんが
気お聞かせて、辰雄の為に着替えを揃えて来た。

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十五

◇女のなやみ(Ⅲ)
村松栄子
彼と彼女の情火が炎となって、その熱気が部屋にこもって息苦しく、
「志津ちゃん」
「辰雄さん」
互いの名を呼びかうのももどかしく抱擁したまま身をくねらせて、
また激しく唇を吸いあった。
火のような男女の激突をよそに、
戸外では秋の虫がチチ・・・チチ・・・と鳴いている。

「辰雄・・・にい・・・さん・・・隣・・・の・・・へ・・・や・・・に・・・抱・・・いて・・・いつて・・・」
甘えるように訴える志津子を抱いた彼はふらつく足を踏みしめながら、
隣室の夜具の上に志津子を降ろすとそのまま彼女に覆い被さって倒れた。

男盛りの四十歳は性の悶えを知る熟れ盛りである。
二人はうめき狂う性交の悶えを充分に知り尽くした年頃である。
志津子の胸元をかき分けて忍び寄る逞しい彼の指が軟らかい乳房を巧みに揉み、
小さな乳首が硬直すると、そーつと口を寄せて軽く噛む、
むせる様な女の体臭が男の官能をくすぐって彼をしびれる様な桃源郷に誘う。

あの頃より厚みを加えて線の固定した腰から尻、
そして太腿を彼の指が堪能するまでに撫でて恥毛をもてあそび、
掻き分けて淫核に臨んだ。

手と共に敏感を加える志津子の女の急所がピクピクと呼吸して固く脈打つ。
性感帯の疼きが切羽詰った様なため息を漏らして、
「フツーン・・・アア・・・ッ・・・・フツウーン・・・む
しなやかな腕が生き物のような男の首に絡みついてのた打っている。

身体の総ての部分で男に噛み付く嵐の様な血潮が騒いで、
二人の性感の波をいやが上にもそそりたてて大きなうねりに育ててゆく。
怒涛のようなうねりが過ぎ去ると、次の盛り上がりの僅かな静けさの中で
シューツシューツと博多帯びの触れ合う音が妖しく男女の昂ぶりに
一入風情を添えて狂いたたせた。
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十六

◇性の極地(Ⅰ)
画像 157
夜明けと言うには暗すぎる街道を一台の車が走っていた。
遠く国分の灯台を右に見て山沿いの波に乗って整備されている筈だか、
舗装されてない道路はデコボコが激しく、70年型のダッヂが大きくバウンドして急いでいる
佐智子の急変に取り急ぎ本宅から呼び寄せた伊集院家の自家用車である。

シートに深く身体を埋めて、肩を寄せ合った辰雄と志津子の胸に去来するのは、
死を悟ったので有ろうこの時に、志津子の元に行けと促した佐智子の愛に
背くように愛欲に溺れた背信行為が罪悪感と成って心を苛むので有った。

辰雄の場合、十数年ぶりに最愛の志津子との、たたれるような甘い
肉感の夜がもたらした悦びと共に、止む無く夫婦に成ったとは言え、
佐智子との絆は、十余年の歳月をかけた生活の中に
生まれ、育まれた夫婦の愛情は、志津子に対する
愛とは異なって、辰雄の肉体の、そして生活の一部
となって培われてきたのである。

寄り添って姉の身を案じる志津子の肩を、
そっと抱いて、“佐智子頑張るんだよ”と心に念じて
ヘッドライトの光に照らし出された、
白い道筋を見詰めていた。

志津子の脳裏に去来する思いでは悲しかった。
家の為と言う美名の下に初恋の人を奪われて、
無理矢理に老人の許に押し付けられて十余年、
姉婿となった最愛の人に接する苦痛に絶えかねて、
また母への抵抗もあって、一度も実家には帰らなかった。
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十七

◇性の極地(Ⅱ)
芸者秘話11-4
神式による葬儀は、
荘厳でじめじめした雰囲気は無く、家族の者達に何時までも
悲しみを残させなかった。葬儀が終る頃には、諦めと共に明日に生きて行く為の
活動が再開された。旅館業は何時までも悲しみに耽っては居られないのだ、
来客には何時も笑顔で接しなければ成らないからだ。

改めて生家を見渡せば昔の面影は何処にも無かった。
伊集院の資力で建て替えられた建屋は「旧館」として
残って居たが、「新館」は辰雄と佐和子夫婦の努力の
結晶であった。志津子にも劣らない美貌の佐和子は
霧島の“美人女将”としてマスコミにも取り上げられ、
雑誌にも時々其の美しさが宣伝されていたのだ。

此の温泉町に通じる国道も改良整備され、
大型観光バスが余裕を持ってすれ違う事が出来、
近隣にはゴルフ場もオープンし年間を通じて
団体客も増えた。

姉の遺言は辰雄と志津子の仲を公認させる事に成り、
周囲の人達も彼らを暖かく理解して呉れた。
葬儀に参列した人々も帰り、父母が室に引き上げた
後には辰雄と志津子だけが残った。
葬儀以来親族、知人の群れに取り囲まれて、
親しく語り合う時間も無かった事を思い、向かいあった。
「お兄さん、お疲れになったでしょう・・・」
「ウウン、志津ちゃんこそ大変だったね」
「私は大丈夫よ、何だか私の中に姉が居るようで
 凄く心強く感じるのよ」
「是からは姉の分まで可愛がってね・・・」
「ウフフ・・・」
「僕だって同じ思いさ、佐和子は子供の出来なかった事を
 最後まで気にして居たんだね・・・」
「僕と志津ちゃんとの間で子供出来るのを願って居たなんて
 思えば佐和子は可哀想な女だったよ」
「佐和子の分まで幸せに成ろうね・・・」

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十八

◇性の極地(Ⅲ)
松原千恵子
見た目に派手で艶やかなグラマー、情痴の世界では意外に淡白で、
繊細な情緒に乏しく、秘術を尽くした男の攻めに対する悶えにも又、
皮膚の密着にも大味で、なんだ、こんなものかと男共を落胆させる事が多いが、
志津子の様な小股の切れ上がった小柄な女体こそ、この織りなす夜の構図は、
繊細な感情とスタミナを絡めて身体全体で男を求めて喘ぐのだ。

攻めれば攻める程飽く事を知らず歓喜し、うめき、もだえて全身で答えて来る
女体こそ男性は己の逸物の素晴らしさと、卓越した秘術によって起こる陶酔・・・
と自惚れて、女体に引きつられ、溺れてしまうのである。

そこに男女両性の燃え上がりがあり、性交の神秘が生まれてくるのである。
志津子の男肌に吸い着く身体は、己が狂喜して全身が性感の泉となって
男に完全な満足を与える身体である。

隆男が義母という義理を乗り越え、
心引かれて理性を失くするのも無理からぬ事である。

「イヤ・・・イヤイヤ・・・」
退がる志津子の弱々しい身体は、益々彼を昂ぶらせて、いどみ掛かってくる。
「志津子さん、ネェーいいでしょう・・・ネェ」
小柄な志津子に逃げる隙も与えず、抱きすくめた隆男の唇が迫ってきた。

思いがけぬ、煽情的な隆男の行動に、志津子は慌てて、
「嫌や、嫌や、まって・・・」
と顔を振って唇を避けた。
辰雄との情交が復活していなかったら、おそらく男の情欲に煽られて、
脆くも崩れて肢を開くのであろうが・・・。

男の力は抵抗する志津子を圧迫し荒々しい情欲が嵐のように、
彼女の力を弱め、官能を揺さぶられた女体が、疼きを誘い出そうとする。
「ウウーン・・・イヤヨ・・・イヤヨ・・・」
抵抗する声も甘い、弱々しい呟きに偽って・・・・。

幸か不幸か、その時、コツコツとドアがノックされてお兼が入って来た。
折角の機会を邪魔された隆男の顔はひどく不機嫌な顔に変わった。
それでも素早く志津子の身体から離れて、お兼を見やった。
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十九

◇性の極地 (Ⅳ)
夏目雅子
其の日は朝から晴れていて庭先の芭蕉が露に濡れて大きな葉を
揺るがしていた。
迎えた、隆男は、あの日、あの事があったので落ち着かない。
だが彼女は、あの事に付いては一言も触れず、
隆男の妻と挨拶を交わした。

「久方ぶりにお帰りになったんですもの、今日は、
 ごゆっくりなさってよ、泊まってらっしゃるんでしょう、
 いろいろお話も御座いますわ」
何も知らず、いそいそと迎える彼の妻を見て、彼女は、
ああ良かった、とあの日に過ちを犯さなかった自分にホッとした。

「今日はご相談したい事が有りましてお伺い致しましたの」
改まった志津子の態度に、あの日の事を言い出されるのでは無いかと、
そわそわしながら、
「改まって何のご相談でしょうか」
「実は里の姉も亡くなりましたし、両親も大分歳を取りましたので
 一応伊集院家から出て里の面倒を見たいと思いまましたので」
さすがに辰雄との事は口にだせなかったが、志津子は
青白く引き締まった顔に決意の程を見せていた。

「その事でしたら、何も籍を抜いたりなさらずとも、何時でも里帰り出来るし・・・
 またご両親をお呼びして・・・別荘でも此処でも貴女のお家ですから
 なんの気兼ねも要らないのですよ」

志津子の決意が、あの日の自分の行動によるものとしか思えず、
また自分の心の底に残る志津子への執着を振り切れなく、
極力翻意を促したが、彼女の硬い決意をしって、渋々承諾した。

「親父の遺言も有りまして、志津子さんにはそれ相応の
 財産分与も考えて居りますが・・・、
 他人に成ると言うのは何だか寂しいな」

傍で聞いていた彼の妻も、寂しそうに、
「そうね、義母(おかあさん)と言うより私は姉妹の様に
 思っていましたのに、寂しいわ」
しみじみとした口調でいった。
志津子は法的云々という事、財産に関する要求は一切しなかった。
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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の二十

◇性の極地(Ⅴ)
芸者秘話12-7
志津子は山川の別荘を自宅として住む為に、
少し手を入れて改装した。若い夫婦らしく、
寝室は洋風の内装としダブルベットを置いた。
そして辰雄からの提案で互いを呼び合う時は、
お兄さんは止めて“辰雄さん”か“あなた”と呼び、
志津ちゃんは、止めて“志津子”と呼び合う事にしたのだ。

「辰雄さん、先にお風呂に入ったら・・・」
「ウン、そうしょうか・・・お前も一緒に・・・・」
「え・・・・でも・・・・」
志津子は何時に成っても初々らしさを失はず、
身体の隅々まで知られて居ても、最愛の人には
如何しても恥ずかしさを捨て去り得ず彼女は躊躇った。
「ネェ・・・いいじゃないか・・・」
「エエ・・・では・・・貴方おときにどうぞ・・・後から行くわ」
重ねての求めに志津子は、そう答えて、頬を染めた。

豊かな湯に身体を浸すと心の中まで温まる様に
ジーンと四肢が温まってくる。
むっとする湯の香の中で辰雄は手足を伸ばした。
頭を支えるタオルがスベスベと心地良く、
静かに目を閉じて志津子を待った、仕切り戸が少し開いて
「辰雄さん、入ってもいい」
志津子の声が忍ぶようにかすれて聞こえた。
「ああ・・・早くおいで・・・」
シルエットの様に浮かぶ彼女の脱衣姿にポーッと、
眩む様な昂ぶりが辰雄の言葉を上ずらせた。

「おー寒い・・・」
前屈みに乳房を庇って入って来る志津子の肢体が
恥じらいを含んで辰雄の目を捉えた。

「いや・・・目をつぶてて・・・」
甘えて睨む目元が色気に濡れて、潤んで居る。
タイル張りの広い浴槽の中で志津子は、
反対側に人魚の様な裸身を沈めた。
辰雄以外の男達と共にした入浴でも感じなかった
恥じらいが志津子の身体中を走って血を躍らせた。

「こっちにおいで」
「ええ・・・」
俯いたまま目の隅でチラッと辰雄を盗み見て、
少しづつ近寄る姿に、花恥らう新妻の風情を
感じて辰雄の心が燃えてゆく。

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Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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