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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の四

◇指の生命(Ⅰ)
画像 Z0001
母親に似て小柄な志津子も十八歳の春を迎えると身体全体が
女らしく膨らみ一寸したしぐさにも娘々した色気がにじみ出て、
女に成る日の遠くない事を忍ばせている。

白くふくよかな顔の端に、潤む眼差しに、風情を添えて、
時折り若い青年を見る目がキラリキラリと悩ましく媚態を囁いている様だ。
形良く整った可愛い受唇は匂い、男心を誘うように咲いている。

母親が性交に悶え、狂喜して、のた打ち回って痴態を晒した、
あの夜を境にして、女性の性の疼きを知った志津子は、
折お見て度々オナニーを楽しみ、もはや大人の世界に踏み入って
オルガスムの喜悦を、わきまえていた。

たまに都会から来た宿泊客の酔いに紛れた放言悪戯に、
また村の若い男達の口説きにも胸躍らせる年頃に成っていた。

八月の暑い昼下がり、鹿児島の辰雄兄さんが訪ねて来た。
彼は、母親の縁先に当たり、大学時代には野球部で捕手をしていた
今年二十三歳の逞しい好青年で、その男らしさは、
小娘の志津子の想いを募らせて密かに恋焦がれて居た。

それでも去年までは、兄さん兄さんと甘えて、縋り付けた志津子であるが
今の彼女には、眩しいような、恥ずかしさが先に立って、彼と向い合っても、
「お兄さんいらっしゃい」
小さく言って頬を染めた。
「志津ちゃんか、見違えるように綺麗に成ったな」

辰雄の視線は眩しそうに瞬いて志津子の胸の膨らみや腰の揺るやかな
スロープに食いついて離れない。
志津子は身体全体に視線を感じて、心の奥底からの温もりに
モヂモヂと恥じらいを見せて目を伏せた。

「全く驚いたなぁ。ニ、三年前までは、僕の背に負われたりして遊んだのに、
 こんなに可愛い美人に成るとは・・・」
「いやーん・・・そんなに、からかわないで・・・意地悪・・・イイーだ」
打つ仕草と言葉遣いは昔の様な無邪気さを見せたが、
真っ赤に頬を染めて、堪らぬように逃げ出した。

恋知り初める頃の娘らしい志津子の仕草は辰雄の心の琴線に触れ、
彼は温かい愛情を感じて、かねてから志津子を憎からず思う自分の中に
恋心の住んで居る事に気付いて、温かい微笑を送るのだった。

 
指先の詩04
ギラギラと輝く真夏の太陽が山影に没して谷間に夕闇が迫ると、
ひんやりと心地良い涼風がそよいで灼熱地獄とは程遠い
環境に恵まれた土地の人達が浴衣にくつろいで盆踊りに
楽しむのもこの季節である。

志津子の家から一キロ余り上手の村の八幡様の境内から
ドンドンドンピイシャラピイシャラドンドンドンと祭囃子が聞こえていた。
盆踊りに心をときめかす男女の姿が三々五々と続いて行く。

清々しい浴衣姿に白粉を塗った娘達は年に一度の
公然と認められたデートに夢見ながら足取りも軽い。
この宵に、何人の生娘が女にされることか。

女中のお先さんも、年に一度の喜びを期待してか、
休みをとって、実家に帰った。
お先の家は程近いS部落であって見れば、其の期待も一入だろう。

幸い今日は宿泊客は一人も居ない。
久方ぶりに親子三人、辰雄も交えての夕食は楽しかった。
自家で醸したイモ焼酎に、かんをして辰雄と差しつ差されつ、
父親も上機嫌である。

「佐和子姉さんが居なくて、寂しいわ、年に一度のお祭りぐらい
 帰ってきてもよさそうにネー」
志津子は話題を探すように母親へ目を向けた。
「お勤めの都合でそうも出来ないのでしょう、
 だけど佐和子も、もう二十一だからね・・・
 ぼつぼつ呼び戻して・・・お婿さんを捜さないと遅くなるネ・・・」

母は志津子から夫へ目を移して相談を持ちかけるように言った。
「家の事は皆、お前が仕切ってるんだ・・・
 お前の思うようにしたら良いだろう」

常日頃から尻に敷かれている夫がこの時とばかり、
はかない抵抗で反発した。
「何です他所事みたいに・・・自分の娘でしょう・・・」
お春の眉がぴくっと動いた、だが辰雄に気兼ねして、
それ以上は、争わなかった。

その重苦しい空気を払うように、
「志津子、辰雄さんと盆踊りに行ったら如何だ・・
 ワシらも後でお参りに出かけるからよ」
父親は残った焼酎を一気に飲み干して次の間へ去って行った。
その後姿に老いの陰が宿っている。
ゆびさきの詩1-3
晴れて二人で出掛けられる嬉しさに志津子の心はときめいた。
八幡様の境内には見世物小屋や屋台の露天が立ち並び、
神社傍の広場の中央には櫓が組まれ、
その四方にはぐるりと提灯が鈴なりに瞬いて居る。

櫓の上で鳴る、太鼓や笛に合わせてのど自慢の男女が
音頭を取る。それを中心として三、四十人の男女が
輪を作って踊り、時の立つのも忘れて踊り狂えば、
子供達はハシャイで其の周りを駆け回って遊ぶ。

若衆達は、歌と踊りの合間を縫って娘立ちの手を
握ったり、お尻を撫でたりして、
「キャーッ・・・イャダァ・・・」
等と言わせながら其の夜の相手を物色するのだ。

十二時近くに成ると、何時とは無く、又何と無く
くっ付いた若者と女の組が幾組となく手と手を
握り合い、肩を抱き合って闇の中に消えて行く。
あちらこちらの暗がりの中から恋の囁きが漏れ、
妖しい肉体の蠢きが奏でられて、夏の夜を彩るのだ。

辰雄はナイト気取りで志津子にまとわり付く若衆
達を追い払って居たが、五月のハエの様に
いくら追ってもきりがないので。
「志津ちゃん、そろそろ帰ろうか・・・」と促した。
「えぇ、かえりましょう・・・」
「今夜は久方振りで、楽しい夜を味わったよ」
「私も楽しかったわ・・・」
志津子の肩を抱いて歩く間道は、木の根や石ころが
突き出ていて歩き難い。

志津子が幾度か足を取られて転びそうに成ると、
逞しい辰雄の腕ががっちり支えて抱いてくれる。
其の都度浴衣を通して若い二人の肌が強く触れ
合って胸を時めかせる二人であった。
美しい星空の下で汗ばんだ若い二人の体臭が
互いの鼻腔をくすぐる。

何時とは無く、触れ合った手と手を握り締めて
山を降りると思いがけぬ竹やぶから、男女の甘い
囁きが切なく聞こえて妖しく胸をかきむしられ、
二人の握り合った手に力が入る。
志津子は甘える様に辰雄へ寄り掛かり、
首を傾け柔らかい頬を肩へ押し当てる。
  1. 小説・指先の詩(うた)
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Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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