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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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若き日の少女の純愛。其の三

◇派手な生活
純愛3-1
私の人並み以上の放蕩無頼、女体遍歴の数多い経験は、
その時の彼女(アカネさん)との恥戯によって培われたのは間違いない。

週に一、二度。約二か月間。彼女の青山の洒落たアパートから、
会社に出勤した事も数多くあった。
だが福運は長くは続かず、破局が来た。

夜遊び好きな私は、遅刻欠勤の常習者だった。
それに加えてアカネさんとの情事がバレて、上司にこっぴどく叱られたのだ。
お客様である日劇の踊り子さんと、ふしだらな関係になるなんて、
Yの社員にあるまじき行為だ、と。

その年の四月の末、私は竜郎や朝子に何も話さず、銀座Yを辞めた。
アカネさんが、私の知らぬ若い男とアパートに深夜帰ってきたのを、
待っていた私が目撃してしまった故もある・・・。

十月。私は新宿東口のF(今は廃業している)に再就職した。
この店には、地方から集団就職した若い女店員が十数人も働いていて、
銀座Y出身者でちょと粋がった長身の私は、かなり愉悦を味わえたのだが、
今回は朝子との私の話、省略することにする。

ただ、私がこの新宿や渋谷で夜遊びできる金を、稼げた訳だけは記しておく。
Fは当時新宿に多かった、廉価販売の店むだった。同業店の販売合戦は激しく、
各店には歩合とも言うべき褒章制度があった。

Fも例外ではなかった。粗悪で安いメーカーの品物を売ると、一つ百円ほどの
バックマージンが貰えたのだ。さらに、返品の利かぬ傷物を売ると、
給料の日給計算並の五百円。何しろラーメン八十円、コーヒー七十円、
新宿牛屋の鉄板焼ききですら五百円で食べられた時代だから、
これは大きな余禄だった。

 
純愛3-2
銀座の上品な商売を経験した私は、初めはその制度に反発したが、
現実にその余禄を手にすると、眼の色が変わる。
マージン付きの商品を夢中で売り捲った。悪質店員になってしまったのである。

記憶では、勤めて二年目の昭和三十八年度の手取り月給が三万円平均。
四万円を越えた月が何回もあったと思う。大卒の初任給が二万円余りの頃だから、
私は一流企業の課長職並の高給を得ていた事になる。

私はその金で、新宿や渋谷の夜の街を飲み回り、女性達と遊び歩いた。
それが後にまで続く、私の放蕩無頼な青春の始まりだった事は言うまでも無い。

そして、Fに勤めて三年目。
昭和三十九年。十月一日には東海道新幹線が営業開始。
その十日には東洋で初めて東京オリンピックが開催される。

日本が記念すべき年の夏、確か七月中旬だった。
私と朝子と、渋谷で偶然に出会ってしまった。

夜の十時、F店の閉店後、私は通勤に使っている国電で渋谷に向かった。
その日は長梅雨の居残りで、昼間は薄日も漏れる曇り空だったが、
夜には霧雨が降ってきた。傘を持たずに出勤した私は、濡れずに行ける店を、
と考えて、井の頭線渋谷駅のガード下の深夜レストラン
[ムーン・ライト]なら大丈夫と思い付いた。

その店は、当時流行していた深夜レストランの草分けだった。
新し物好きで、そろそろ無頼の気配が生まれ始めていた私の、
馴染みの高級レストランだった。
純愛3-3
懐中には支給されたばかりのボーナスの残りがあった。
約二万円。どんな高い店で夜遊びしても、十分過ぎる金である。

渋谷駅の連絡通路の眼下にある、ハチ公前広場の傘は少なかった。
しかし井の頭線の改札口や道玄坂に降りる階段は、
帰宅する人々で混み合っていた。

その混雑する階段を降りようとした私は、名を呼ばれて振り向いた。
間近の背後に外川朝子が仏頂面で立っていた。
その横には同じ年ほどの娘が並んでいる。

意外な偶然に、私はちょっと驚いた。
「なんだ、アコか?よく俺が判ったな、どうしたんだ、こんな時間に・・・?」
それには答えず、朝子は小さな青い傘を差し出した。
「飲みに行くなら、傘を貸してあげる」

私は苦笑した。再会の挨拶もなしに、いきなりこれだ。
彼女のぶっきらぼうは、銀座時代と少しも変わっていない。
しかし、相変わらず無愛想な朝子の口を尖らせた顔も、白い水玉のワンピース姿も
結構あか抜けていて、ヒールの靴で伸びた背丈や肉付きも女らしなっていた。
それに、連れの友達がちょっと可愛い。

「それより、どうだ、せっかく会えたんだ、その友達も一緒に、
 俺と飯でも食いに行かないか?つもる話も有るし・・・」
本音も交じっていた。三年も会わぬ竜郎の近況が聞きたかったのだ。

彼女達は、私から離れて何やらひそひそ話し合っていたが、
「友達は帰るって・・・」
と、私の一つの思惑は外されたが、朝子はなぜか残った。
  1. 純愛ポルノ
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プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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