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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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愛情一杯の茶封筒。其の二

◇純真無垢な笑顔
a2-1
私が民子と知り合ったのは、私が新潟県庁職員で東京駐在のツアーコンダクター
等をしていた時の事だった
当時、私は県主催の物産店の企画や県立高校の修学旅行生の世話などをしていた。
民子はその修学旅行の高校生の中に居たのである。

新潟の海辺の町から修学旅行で上京してきた民子は、生徒の中でとりたてて
目立つ方ではなかった。と言うより地味な存在だった。
それなのに私が彼女に興味を持ったのは、
態度がきわめて慎ましやかだったからである。

修学旅行とあって、バスに乗って浮かれはしゃいでいる生徒達を尻目に、
彼女はいつもはじっこ席で、静かに私の解説を聞いていた。
すこぶる真剣に聞き入って呉れていたのである。まず、其の事が私の注意を引いた。
いつしか私は、重要なところでは、彼女の目を見て生徒達に解説するようになっていた。

次に私の目を引いたのは、ある建物を案内した時の事だった。
ズック靴を脱いで、スリッパに履き替える時に私は見てしまったのである。

なんと彼女の靴下は、目立たないように繕ってはあったが、
ツギハギだらけだったのである。私はショックを受け
「この子だけが、どうしてなんだ?」と思った。
その理不尽さに怒りさえこみあげてきた。

その理由(わけ)は間もなく判った。三時の休憩時間に成って、
その建物の周囲の庭で皆が一斉にオナツを食べ出した時だった。
ふと気に成って彼女を探したら、彼女は一人だけ群れから離れるようにして、
芝生の上に長い両足を揃えて投げ出していた。
(彼女は当時としてはわりと背の高い方だった)
私は背後からそっと彼女に近づいた。そして、また見てしまったのである。

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愛の書簡01
両足を揃えて投げ出した彼女は、膝の上でオヤッが入った弁当箱を広げていたのだが、
それが、柿だの干し芋だの安価な干物だので、どう見ても自分の家の周りで
捕れたものばかりで、唖然となるほどお粗末なものだったのである。

他の生徒が持って来ているような、お菓子類や果物などは一切入っていなかった。
要するにお金の掛るものはなかったのである。
私はそれを見て一瞬のうちにすべてを理解した。理解すると同時にすぐ
「悪いことをしてしまった」と思った。

見るべきではなかったと思った。
彼女はそれを他人の目から必死に隠そうとしていたのである。
それが痛いほどわかった私は、彼女に気づかれないようにその場を
離れようと思った。だが、私は声をかけてしまった。

「やあ、おいしそうだね」
思った通り、民子は慌てて自分の弁当箱を体で隠した。
「その干し芋、これと交換してくれないかな。僕ね、それ大好物なんだ」

私の手のひらには黒い包みの板チョコが乗っていた。
板チョコは仕事をしていて疲れた時などに、当時、私がよく口にしていたもので、
たいてい私のポケットの中に入っていた。

「少し食べちゃってて、悪いんだけど」
有無を言わさず私は、それを彼女の手に握らせ。
両手を犬みたいな恰好にして、「ワン」と言った。
「干し芋、干し芋」子供みたいな声で言うと、
彼女は片手で口元を押さえて「クスッ」と笑った。
その笑顔が私を釘付けにした。

ずっと真剣な顔ばかりを見ていたので、私は彼女の笑顔が想像出来なかったのだ。
その笑顔は私にとってまさに天使の微笑みのようにさえ思えた。
(こんなに貧しい生活を強いられて、肩身の狭い思いをして生きて居るというのに、
 どうしてこれほど純真無垢な美しい笑顔が出来るんだろう)
と、私は思った。私はそんな彼女に魅せられてしまった。

そして、修学旅行が終わってから、彼女にすぐ手紙を書いた。
その内容は今読み返せば赤面するような他愛ないものだった。
  1. 妻を語る
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プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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