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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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愛情一杯の茶封筒。其の一

◇大好きなお兄さん
a1-1
「おや、これはなんだろうな」
もう年齢的にも、そろそろ身の回りの始末をつけるべき時期が
来て居る事も有り、年末に古い写真や郵便物を整理していたら、
二つ折りにした汚れた茶封筒が出て来た。

表書きはない。もしかすると死んだお袋が残したヘソクリでも
入って居ないかと思って、いそいそと開いてみると、黄色く変色した
便箋が二枚出て来た。私は、はっと胸をつかれる思いがした。

「民子が私に呉れた手紙だ」
長い間忘れていて、無くなった物と思って居た、
民子からの懐かしい手紙だった。

「そういえば、あの時俺は確かにこの封筒に入れて仕舞い込んだのだった」
手紙を読み返す前から、当時の事が私の脳裏にまざまざと甦って来た。
「民子、覚えているかい?この手紙を呉れてから、
 おまえは俺を頼って上京してきたんだよ。覚えているかい」

独り言を言っているうちに、目頭が熱くなってきて、
私は一人暮らしの老いの寂しさに泣いた。
涙に濡れた目に、ぼんやりと民子の手紙の文字が滲んで見えた。

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a1-2
--- 拝啓、先日はお手紙を有難うございました。
それに色々とご心配をしてもらって、本当に本当に有難うございます。
私もあと二ケ月足らずで卒業です。でも家庭の事情が事情ですし、
大学にはとても進めそうもありません。

望月のお兄さんが、学費を出してくれると言うお話は有り難いのですが、
私は高校を卒業したら働く事に決めました。一生懸命に働いて、
今まで苦労のしづめだった母さんに、少しでもらくをして貰いたいのです。

それで、私の決心をちょっと母に話したら、母さんは、
「私の事は良いから、民子が好きなようにしたらいい」と言うんです。
「こんな田舎にいても農家に嫁ぐぐらいしかないから、
 もっと大きな都会に出たらどうか」と、そう言って呉れたんです。

だから私は今日の今日の夕方、ご飯の時に、望月のお兄さんの申し出の事を
しゃべってしまいました。
時期が来るまで母さんには言わない方が良いと言う事だったのに、ごめんなさい。
でも、私はどうせ駄目だろうと思っていたのです。ところが母さんは、
(びっくりしないでくださいね)私の東京行に賛成して呉れたんです。
(バンザイ!望月のお兄さんも、もちろん喜んで呉れますよね)。

そう言う訳で今、私は嬉しくてまだちょっと頭が混乱しています。
もっと長い手紙を書こうと思ったのですが、
今日は取りあえずそれだけ早くお知らせしておこうと思って手紙を書きました。
私が東京に行っても本当に迷惑じゃありませんよね。

大好きな望月のお兄さんへ     民子ーーー

この手紙をもらったのは、今から四十年も前であるが、
私にはこれを手にした時の思いが、今現実に起こって居る事の様に
はっきりと思い起こされた。当時民子は十八歳。私は三十二歳。
新しい年が明けてからまだ一ヶ月ほどしか経っていなかった。
  1. 妻を語る
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プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
FC2ブログへようこそ!管理人の
アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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