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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十七

◇性の極地(Ⅱ)
芸者秘話11-4
神式による葬儀は、
荘厳でじめじめした雰囲気は無く、家族の者達に何時までも
悲しみを残させなかった。葬儀が終る頃には、諦めと共に明日に生きて行く為の
活動が再開された。旅館業は何時までも悲しみに耽っては居られないのだ、
来客には何時も笑顔で接しなければ成らないからだ。

改めて生家を見渡せば昔の面影は何処にも無かった。
伊集院の資力で建て替えられた建屋は「旧館」として
残って居たが、「新館」は辰雄と佐和子夫婦の努力の
結晶であった。志津子にも劣らない美貌の佐和子は
霧島の“美人女将”としてマスコミにも取り上げられ、
雑誌にも時々其の美しさが宣伝されていたのだ。

此の温泉町に通じる国道も改良整備され、
大型観光バスが余裕を持ってすれ違う事が出来、
近隣にはゴルフ場もオープンし年間を通じて
団体客も増えた。

姉の遺言は辰雄と志津子の仲を公認させる事に成り、
周囲の人達も彼らを暖かく理解して呉れた。
葬儀に参列した人々も帰り、父母が室に引き上げた
後には辰雄と志津子だけが残った。
葬儀以来親族、知人の群れに取り囲まれて、
親しく語り合う時間も無かった事を思い、向かいあった。
「お兄さん、お疲れになったでしょう・・・」
「ウウン、志津ちゃんこそ大変だったね」
「私は大丈夫よ、何だか私の中に姉が居るようで
 凄く心強く感じるのよ」
「是からは姉の分まで可愛がってね・・・」
「ウフフ・・・」
「僕だって同じ思いさ、佐和子は子供の出来なかった事を
 最後まで気にして居たんだね・・・」
「僕と志津ちゃんとの間で子供出来るのを願って居たなんて
 思えば佐和子は可哀想な女だったよ」
「佐和子の分まで幸せに成ろうね・・・」

 
芸者秘話11-7
佐和子の死を悲しみ嘆く二人の心情に、一点の偽りも
無かったが、悲しんでばかり居ては佐和子もうかばれない。
ほっとして心にゆとりが出来て二人きりに成ると、
未だ若い二人の血潮が妖しく乱れて来る。

「お兄さん、寂しいでしょう・・・」
ちょつとすねて、皮肉った。亡き姉には申し訳無いが
女の嫉妬心が湧いてきた。
「馬鹿だね・・今更そんな事・・」
志津子の心の中を覗く様に辰雄は鼻をこすった。

折角二人きりに成れたので志津子は身体を愛して
貰いたい欲望に駆られたが、それ以上の事を言葉に
出せないのが辛かったし、また、辰雄が其れを言って
呉れないのが恨めしかった。

辰雄とて同じ思いだったが、四十九日の法要が済むまでは
佐和子の魂はこの家に居ると言う。せめて其の日までは
遠慮するのが仏に対する義理だろうと、辛い思いで、
煩悩を抑えて居るのだった。

日が経つにつれて二人の目が悩ましさと、そして妖しさを訴えるようになった。
志津子の目は特に泣き出しそうな、苛立たしさを表して来た。

志津子は生活の根拠をもつ山川に帰った。
父母住む生家に故郷を見出し得なかったのは、
彼女の生活の根がこの山川に深く下ろされていたからである。

佐和子の遺言に従って辰雄の許に帰る時には、恐らく
生家に帰ると言う感じより新しく嫁ぐ様な気持ちで有るだろう、
其の日を夢見て、身の周りの整理に多忙な日を過ごしていた。
和服美人006
或る日、突然、伊集院隆男氏の来訪を受けた。
「まあ、お珍しい、ようこそ、いらっしゃいませ」
亡夫に対する礼儀と義理で志津子は愛想よく迎えた。

「その後どうお過ごしかと思いましてね」
「あら、有難う、私の事心配して来てくださったの?」
「これはひどい、貴女の事は、昔から、何時でも考えていましたよ」

隆男は自分より年若い義母を、亡夫の生前から密かに想いを寄せていた。
ライバルとも言うべき父は、もう此の世には居ない。
今こそ、長男の義理から解かれて普通の男としての立場から
熱っぽい目で探るように見つめた。

「志津子さんを見る度に僕は、親父が憎かった」
「あら、どうして」
「貴女の様に美しい人を年寄りの親父が占有しているんだもの、
 相手が親父じゃなかったら、とうに志津子さんを奪ってやったんだが・・・」
「お世辞でも、嬉しいわ」

からかい半分に媚びて見せたが、隙と言われると好かれて見たくなる
女心が理性の隅から、忍びやかに覗くと、
志津子の心が妙に弾んだ。顔の火照りを覚えた。

「ネエ、志津子さん、一度でも良いんだ、僕の願いを叶えて貰えまいか。
 正直に言う、僕と寝て欲しいだ」
チラリと見せた志津子の媚びに理性の羽目を外して、そっと手を延ばした。
柔らかい志津子の手が握り返しもせぬが、それかといって拒もうともしなかった。

その手を手繰って男の征服感をかりたてる。
「ホホホ、おかしいわよ、仮にも親子なのよ」
骨細の、きゃしゃな身体をよじって身を起こそうとする
志津子の裾が乱れて、白い肢が覗くと隆男の欲情をそそつて、
握った手に力がこもって女の身体を組敷いた。

見かけより良い肉付きが隆男の腕の下でクリクリとうごめいて、
逃れようと努力する志津子は、自分のあせりが次第に欲情を
駆り立てて行くのをどうすることも出来なかった。
  1. 小説・指先の詩(うた)
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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