昭和のメルヘン・ゆびさきの詩(うた)。其の十八
◇性の極地(Ⅲ)
見た目に派手で艶やかなグラマー、情痴の世界では意外に淡白で、
繊細な情緒に乏しく、秘術を尽くした男の攻めに対する悶えにも又、
皮膚の密着にも大味で、なんだ、こんなものかと男共を落胆させる事が多いが、
志津子の様な小股の切れ上がった小柄な女体こそ、この織りなす夜の構図は、
繊細な感情とスタミナを絡めて身体全体で男を求めて喘ぐのだ。
攻めれば攻める程飽く事を知らず歓喜し、うめき、もだえて全身で答えて来る
女体こそ男性は己の逸物の素晴らしさと、卓越した秘術によって起こる陶酔・・・
と自惚れて、女体に引きつられ、溺れてしまうのである。
そこに男女両性の燃え上がりがあり、性交の神秘が生まれてくるのである。
志津子の男肌に吸い着く身体は、己が狂喜して全身が性感の泉となって
男に完全な満足を与える身体である。
隆男が義母という義理を乗り越え、
心引かれて理性を失くするのも無理からぬ事である。
「イヤ・・・イヤイヤ・・・」
退がる志津子の弱々しい身体は、益々彼を昂ぶらせて、いどみ掛かってくる。
「志津子さん、ネェーいいでしょう・・・ネェ」
小柄な志津子に逃げる隙も与えず、抱きすくめた隆男の唇が迫ってきた。
思いがけぬ、煽情的な隆男の行動に、志津子は慌てて、
「嫌や、嫌や、まって・・・」
と顔を振って唇を避けた。
辰雄との情交が復活していなかったら、おそらく男の情欲に煽られて、
脆くも崩れて肢を開くのであろうが・・・。
男の力は抵抗する志津子を圧迫し荒々しい情欲が嵐のように、
彼女の力を弱め、官能を揺さぶられた女体が、疼きを誘い出そうとする。
「ウウーン・・・イヤヨ・・・イヤヨ・・・」
抵抗する声も甘い、弱々しい呟きに偽って・・・・。
幸か不幸か、その時、コツコツとドアがノックされてお兼が入って来た。
折角の機会を邪魔された隆男の顔はひどく不機嫌な顔に変わった。
それでも素早く志津子の身体から離れて、お兼を見やった。
部屋の空気の異様さに六感を刺激されてハッとしたが、
素知らぬ顔でお兼は、
「あの・・・本宅からお電話で御座います」
そう言って頭を下げた。
「ああそう」
ぶっきらぼうに答えて、電話室へ去る隆男の後姿を見送りながら、
志津子はほっと胸を撫で擦って、
「アーおかげで助かったわ」
お兼は意味が判らぬ振りしてとぼけて見せた。
「なんでも無いわよ、後で話すわ」
お兼だけには、どんな事でも話して来た志津子だが、
今はそれさえ、億劫だった。
そんな彼女を知ってか、知らずにか、お兼は黙って部屋を出て行った。
「会社で急用が出来たので今日は帰ります。
先程の話、僕は真剣ですからね、考えておいてくださいよ」
電話室から戻った隆男は、あわてふためいて、残念そうに帰って行った。
隆男を送り出した彼女は、スーッと大きな吐息をついて、
上気した頬を押さえた。
全く危ないところであった。
お兼の来るのが数分遅れたら・・・
ゾーツと背筋に寒気を感ずるようである。
然しあの瞬間に、疼いた肉体のあの部分が忌まわしく、
反省とも後悔とも付かぬ感情が静かに彼女の胸を苛んだ。
その後ニ、三度隆男の来訪を受けたが志津子は会わなかった。
会えば思いがけない事態を引き起こしそうな予感が、そうさせた。
それは彼女自身の為でも有ったが、彼の家庭に波風を立てるのも
不本意であったからだ。
電話も再三かかって来たが、其の都度お兼に意を含めて出なかった。
しかし、この様な事が続いて、噂の種になり辰雄との首尾にもしもの事が
有ってはならない。はっきりと話を着けてしまえば、隆男だってこれ以上
しつこく迫ることもあるまい。
台風の季節が過ぎさった或る日、志津子は鹿児島に隆男夫婦を訪ねた。
見た目に派手で艶やかなグラマー、情痴の世界では意外に淡白で、
繊細な情緒に乏しく、秘術を尽くした男の攻めに対する悶えにも又、
皮膚の密着にも大味で、なんだ、こんなものかと男共を落胆させる事が多いが、
志津子の様な小股の切れ上がった小柄な女体こそ、この織りなす夜の構図は、
繊細な感情とスタミナを絡めて身体全体で男を求めて喘ぐのだ。
攻めれば攻める程飽く事を知らず歓喜し、うめき、もだえて全身で答えて来る
女体こそ男性は己の逸物の素晴らしさと、卓越した秘術によって起こる陶酔・・・
と自惚れて、女体に引きつられ、溺れてしまうのである。
そこに男女両性の燃え上がりがあり、性交の神秘が生まれてくるのである。
志津子の男肌に吸い着く身体は、己が狂喜して全身が性感の泉となって
男に完全な満足を与える身体である。
隆男が義母という義理を乗り越え、
心引かれて理性を失くするのも無理からぬ事である。
「イヤ・・・イヤイヤ・・・」
退がる志津子の弱々しい身体は、益々彼を昂ぶらせて、いどみ掛かってくる。
「志津子さん、ネェーいいでしょう・・・ネェ」
小柄な志津子に逃げる隙も与えず、抱きすくめた隆男の唇が迫ってきた。
思いがけぬ、煽情的な隆男の行動に、志津子は慌てて、
「嫌や、嫌や、まって・・・」
と顔を振って唇を避けた。
辰雄との情交が復活していなかったら、おそらく男の情欲に煽られて、
脆くも崩れて肢を開くのであろうが・・・。
男の力は抵抗する志津子を圧迫し荒々しい情欲が嵐のように、
彼女の力を弱め、官能を揺さぶられた女体が、疼きを誘い出そうとする。
「ウウーン・・・イヤヨ・・・イヤヨ・・・」
抵抗する声も甘い、弱々しい呟きに偽って・・・・。
幸か不幸か、その時、コツコツとドアがノックされてお兼が入って来た。
折角の機会を邪魔された隆男の顔はひどく不機嫌な顔に変わった。
それでも素早く志津子の身体から離れて、お兼を見やった。
部屋の空気の異様さに六感を刺激されてハッとしたが、
素知らぬ顔でお兼は、
「あの・・・本宅からお電話で御座います」
そう言って頭を下げた。
「ああそう」
ぶっきらぼうに答えて、電話室へ去る隆男の後姿を見送りながら、
志津子はほっと胸を撫で擦って、
「アーおかげで助かったわ」
お兼は意味が判らぬ振りしてとぼけて見せた。
「なんでも無いわよ、後で話すわ」
お兼だけには、どんな事でも話して来た志津子だが、
今はそれさえ、億劫だった。
そんな彼女を知ってか、知らずにか、お兼は黙って部屋を出て行った。
「会社で急用が出来たので今日は帰ります。
先程の話、僕は真剣ですからね、考えておいてくださいよ」
電話室から戻った隆男は、あわてふためいて、残念そうに帰って行った。
隆男を送り出した彼女は、スーッと大きな吐息をついて、
上気した頬を押さえた。
全く危ないところであった。
お兼の来るのが数分遅れたら・・・
ゾーツと背筋に寒気を感ずるようである。
然しあの瞬間に、疼いた肉体のあの部分が忌まわしく、
反省とも後悔とも付かぬ感情が静かに彼女の胸を苛んだ。
その後ニ、三度隆男の来訪を受けたが志津子は会わなかった。
会えば思いがけない事態を引き起こしそうな予感が、そうさせた。
それは彼女自身の為でも有ったが、彼の家庭に波風を立てるのも
不本意であったからだ。
電話も再三かかって来たが、其の都度お兼に意を含めて出なかった。
しかし、この様な事が続いて、噂の種になり辰雄との首尾にもしもの事が
有ってはならない。はっきりと話を着けてしまえば、隆男だってこれ以上
しつこく迫ることもあるまい。
台風の季節が過ぎさった或る日、志津子は鹿児島に隆男夫婦を訪ねた。
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私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。
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