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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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湖底に消えた初恋の思い出。其の三

~乙女の願い事~
湖底に3-1
誠子と私は一年前から、密かに交際していた。
私が中学二年生で、誠子は町の高校を卒業して村に戻り、雑貨屋を手伝い始めて
すぐに知り合った。そして、私が子供の頃から誠子を知っていた事も有り、
急速に親密さを増すようになった。

中学の分校から、私が自転車に乗って家に帰ろうとした時の事だった。
「キミ、春夫君でしょ?」
突然、女性に声を掛けられた。振り返ると其処に誠子がいた。私はコクリと頷いた。

久し振りに見る誠子は、もともと美しい顔立ちをしていたが、気軽に声を掛けては
いけない様な、成熟した女の美しさに輝いていた。

町で三年間高校生活をしていた為に、町の洗練された匂いも、
花柄のワンピースから感じられた。村ではワンピースを普段着にしている者など、
誠子以外には居なかったのだ。

「ちょうどよかった。家まで乗せて行ってくれない、いいでしょ」
誠子はニコリと笑った。真っ白で綺麗に並んだ歯が、口元にこぼれた。
それだけで、全身の血が逆流し、一気に頭まで駆け昇っていくのを感じた。
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湖底に3-2
おそらく私の顔は、真っ赤に上気していたに違いない。
私は返事も出来ず、そのかわりに自転車から降りると、荷台を目で示した。

「いいのね、わあ、嬉しい。自転車の後ろに乗るなんて、何年ぶりかしら。
 ねえ、春夫君、転ばないでね。私って重いから」
誠子は私が支えている自転車の荷台へ、横向きに成って座った。

その後で、私もサドルへ跨がり、思いきり反動をつけて地面を蹴る。
そしてペダルを漕ぎ出すと、私達を乗せた自転車はガタゴトと砂利道を走り始めた。

誠子は振り落とされないように、私の腰を両手で掴んでしがみついていた。
それを見ていた中学生たちが、大声で囃し立てる。その間を縫いながら、
勢い良くペダルを漕ぐのは、何故か気持ちよく誇らしい気分だった。

その理由は、誠子が年上で美人だったからに他ならない。
もし、それが誠子ではなく、同級生の女の子だったら、
自転車には決して乗せなかったし、乗せたとしても恥かしさを感じて、
誇らしい気持ちには成り得なかっただろう。

暫らく走り続けると、広い川の土手上の道に出た。
其処まで走ると、まったく人通りはなく、風が川面を吹き抜けてきて、
片側の高い崖の岩肌をザワザワと這い上がっていった。

晩春で寒さは感じられない。むしろ、汗ばんだ体には、心地良く感じる事が出来た。
「春夫君は何かスポーツでもしているの?」誠子が大声で聞いてきた。
耳元に川風とは違った。優しげな息吹を感じて、ドキリとした。

「スポーツですか?前は剣道していたけど、もう、やめました」
「へえー剣道してたの。でも、やめたなんて・・・残念だわ。他にわ?」
「何もしていません。生徒の数が少なくて、団体スポーツは出来ないし・・・
 卓球部はあるんですけど、アレは嫌いですから」
「じや、勉強の方に力を入れてるんだ」
「いえ、勉強はもっと嫌いですから、家に帰ったら遊んでばかりです」
湖底に3-3
「フフッ、春夫君は正直なのね。今はどんな事をして遊んでいるの?」
「山女を釣ったり、岩魚を捕って・・・」
「いいわね、釣りかッ。私もしてみたいな。春夫君、今度教えてくれる?」
「誠子さんは一度もしたことがないんですか?」
「一度もないわ、私にもできるかしら?」
「渓流に入ることが出来れば・・・たい丈夫ですよ。
 今度・・・次の日曜日にでも釣りにいきませんか?」
「本当に・・・だったら嬉しい、約束ね」
誠子はギュツと私の腰を強く抱き締めて、嬉しさを表現した。誠子の顔や胸が、
学生服を通して私の背中にピッタリとくっ付いているのが分かった。

異性の体を、これ程近くに感じたのはその時初めてのことだ。
そして、その感動はペニスへと伝わり、股間とサドルの間で即座に勃起し始めていた。
そのためにペダルは急激に踏み難くなり、それまで快調に飛ばしていた
自転車のスピードは、極端に落ち始めた。

「フフッ、春夫君つかれたでしょう?私ってこう見えても、デブだから重いでしょ」
「いえ、そんな事は絶対にないです」
「無理しないでもいいのよ」
「オレ、女の人を乗せるの、初めてだから」
「へぇーっ、じゃ、恋人を乗せた事一度もないの?」
「恋人?そんなのいないです」
「嘘、ウソキミみたいにハンサムさんなら、幾らだっているはずよ。
 キミの周りの女の子達って何をみているのかしら・・・
 あそこに見える堰まで行ったら、少し休んでいきましょ」
誠子は春夫君という呼び方から、姉さんぶってキミという呼び方に変えていた。

堰は本流から支流に水のながれを変える為のもので、傍らには台風などで大水が
出た時に備え、川守人のための番小屋があった。平常時には、無人の小屋になる。
私はその前で誠子に言われたように自転車を止めた。
  1. 純愛ポルノ
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プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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