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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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初夜で判った新妻の性的魅力。其の三

◇初夜の緊張感
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娼家にいる女の中で、小雪だけは違った。
生きている生身の熱い女だった。娼婦に惚れることなど馬鹿げているが、
私は夢中で通い続けていた。

「また小雪の所か?そろそろ身を固めた方が良いんじゃねえか」
小雪に熱を上げている私に、船頭の本間は心配して真顔で忠告した。
「身を固める?オレはそんな心算はサラサラないですよ」
「小雪だけが女じゃあるまい。所詮、所帯を持つ女じゃない」
「百も承知。遊びですよ」
「なら、オレの出る幕じゃないが、お前を好いている女も居るらしいぞ」
「・・・オレを?」

聞く耳を持てない私は、本間の言葉を一笑にふした。
ところが、その数日後になって漁から戻って家に帰ると、
何時の間にか威儀を正してきたのか、紋付袴姿の本間に伴われて、
一人の女性が我が家に来て待って居た。

私の両親とは、すでに話がまとまって居たらしい。
互いが顔も知らず、両親が決めた相手と結婚するような乱暴な時代だ。
本人が知らぬ間に、見合い話が進んでいても不思議はない。
今の若者が聞いたら、あまりの馬鹿馬鹿しさに卒倒するだろう。
そうした時代でも、私は内心は卒倒する思いだった。

女性は後に私の妻となる仁子(としこ)だった。仁子は本間の姪に当たり、
東京の女子大を卒業して地元に戻り、小学校の教員をしていた。
本間の家に遊びに行った時に、消し炭のような色の黒い女がいて、
酌をしてくれた事を思い出した。健康的とは言え、全く色気を感じさせない。
その女が着物を着て、本間の大柄な背中に隠れ、畏まって居たのだ。
卒倒しないのが不思議だった。

「典雄もそろそろ年貢の納め時だな」
普段酒をほとんど嗜むことのない父が、奥から酒瓶を持ってきた。
酒を飲めと言うのだ。私は言葉を失ったまま、それを受けることにした。
 
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父は村役場に勤めており、清廉で厳格な男だった。
その男が一目で仁子を気にいってしまったらしい。
父母の存在は海よりも深く、山よりも高い。
そうした教育の中で育っていた私は、自分の結婚でも、
父の意見に重きを置かなければならなかったのである。

仁子に対する特別な感情はなかつた。好きでもなければ、嫌いでもない。
結婚生活の中から愛を育んでいけば良いというのが、正直な気持ちだった。

一方的な見合いから、結婚まで話はトントン拍子に進んだ。
その間、デートらしいデートをすることもなく、三か月後には
結婚式を挙げるという慌ただしさだった。

式には村の主だった人が集まり、三日間、自宅で盛大な披露宴を展開した。
村では特別な事ではない。一日目は村の人を中心に集め、二日目は親類、
三日目は新郎新婦の友人たちと夜を徹して飲み明かす。
その間、新郎新婦にとっては、相手変われども主変わらずと言った処で、
初夜の儀式どころではない。私たちがソレを迎えたのは、式を挙げてから、
一段落した五日目の夜だった事を、今でも鮮明に思い出すことが出来る。

当時、新婚旅行に行くという習慣は村にはなく、私達が初夜を迎えたのは、
自宅の離れだった。風呂から上がって部屋に行くと、花嫁道具に仁子が
持ってきた真新しい布団が二組ピッタリと並べて敷かれていた。

「私、お風呂頂いてきます」
私と入れ替わりに、仁子は恥じらいを浮かべて風呂場に行った。
枕元にはスタンドタイプの常夜灯があり、其の側に桜紙が置いてある。
恐らく、花嫁の心得の一つとして、母親に教えられたのだろう。
それを見ただけで、私の欲望はチリチリと燃えた。
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私は寝巻き姿のまま布団に入って、仁子が戻ってくるのを、
胸をときめかせて待って居た。スーッと襖が開いたのは、
それから一時間ほども後のことだ。浴衣を着て仁子は部屋に入って来ると、
鏡台に向って寝化粧をはじめた。後ろ姿が、妙に艶めいていた。

仁子は背中まで伸びた髪を梳かし続けた。
布団に入りたくても、恥ずかしくて切っ掛けが掴めないでいるらしい。
それが仕種に現われていた。

「さあ、こっちにおいで!」
私の声はかすれていた。娼婦を抱く時とは全く違う興奮で、
声をかすれさせたのだ。

仁子は返事の代わりに、鏡台の前から立ち上がった。
そして天井の電気を消すと、布団の脇に来て畏まって正座した。
枕元の常夜灯の柔らかな明かりが、仁子の顔を映し出す。
消し炭どころか、女神の様な愁いを含んだ表情に変化している。

「旦那様、ふつつかな嫁ですが、宜しくお願い致します」
その声は震えていた。慌てて私も布団の上に座り直して、それに応えた。
愛しさが肝の芯からこみ上げてきた。そして、にじり寄って体を抱きしめた。
着痩せするタイプなのか、見た目より肉感的な体だった。

「キミを大切にする」私は唇を重ねた。仁子は固く閉じたままでいる。
体は緊張で石の様に硬まっていた。
口づけをしたまま、仁子を優しく布団の上に横にした。
浴衣の襟元から、石鹸の匂いがする。
そこに処女性を確かに感じ取った。

私は舌先で仁子の唇を舐めながら、その固さを研ぎほぐそうとした。
しかし、どうすればいいのか判らないでいた。
唇は相変わらず固く結んだまま、吸い返すこともない。
それほど初々しい花嫁だった。
  1. 妻を語る
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プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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