思い出される昭和のあの日あの頃

バイクを降りたタツヤが女に向かってダッと駆け出します。
残された二人が私の顔色を伺うように振り向きました。

「ど、どうします？リョウさん・・・」
二人は泣きそうな顔でした。
「やりたきゃやれ。俺はなんにも言わねぇ」
「は、はい！」

二人がタッヤの後を追って駆け出します。
２０ｍほど先で三人が女に襲い掛かるのが見えました。
女の悲鳴が聞こえてきました。岩場に押し倒され、ワンピースが胸のところから
引き裂かれます。私は彼らに背を向けて拳を握り締めたままでした。

葛藤が心の中で渦巻いていました。
あれはお前が生まれて初めて一目惚れした女だぞ。
その女があんな安っぽい連中に手篭めにされるのを黙って見てるつもりか？
お前はその程度の男だったのか？と・・・。

私の中で何かが弾けました。
「やめろ！その女に手を出すな！」
彼の間に割って入り、女をかばいました。仲間の二人はひるみましたが、
タッヤはむしろ逆上したようでした。

「るせぇ！リョウ、てめぇは引っ込んでろ！」
タツヤが私に向かって怒鳴ります。そんなことは初めてでした。

女の上に覆い被さった私をタツヤが払い除け、再び女に襲いかかります。
タツヤにつられて他の二人の目の色も変わっていました。

「やめろ！やめてくれ！この女はウチの旅館に泊まっている女なんだ！」
三人を女から引き離して怒鳴ります。
「なんだよ、リョウ。てめぇ、親に義理立てするつもりかよ。お前らしくもねぇ」
「そうじゃないんだ。この女、俺が惚れた女なんだよ。頼むから手を出さないでくれ！」
「そう言うことかい。上等じゃねぇか。だったら尚更やる気が出てきたぜ」

タツヤが女の手をグイッと引き寄せます。割って入った私にタツヤが怒鳴りました。
「てめぇもボコボコにされてぇか！」
三人はもう女には目もくれず、私に襲いかかりました。拳で顎を砕かれます。
脇腹を蹴り上げられます。ミゾオチを蹴られてうずくまると、
今度は顔に蹴りが飛んできました。

「やめてぇ！やめてぇ！」
女が青ざめて叫びます。が、ボコボコにのされても、
私は彼女には指一本触れさせまいと、そればかり考えていました。

しかし、顔を腫らして血ヘドを吐いている私にタツヤたちもさすがに気後れしたのか、
いつの間にか攻撃の手を止めていました。
「くそ！面白くもねぇ。おい、行くぞ！」
タツヤが二人を引き連れて立ち去る気配。
私はそのまま気を失ってしまったのです。