PV UU 現在の閲覧者数: /にほんブログ村 小説ブログ ロマンス小説へ
2ntブログ

異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

  1. スポンサー広告
  2. [ edit ]

海辺の小さな旅館を営む夫婦の今と昔。其の四

◇男性恐怖症の女
輪姦02
気が付いた時、傍らで私を介抱してくれていたのは彼女でした。
そしてその口から驚くべき過去を聞かされました。
「あたし、今日みたいな体験、二度目なの」
自嘲ぎみにつぶやいた彼女がポッリポッリと話し始めました。

彼女が暴漢に襲われたのは三ヶ月ほど前のこと。夏祭りの夜、郷里の村で婚約者と
神社の境内を歩いているところを三人の暴漢に襲われたというのです。
婚約者は彼女を置き去りにして逃げ、一人取り残された彼女は三人の男たちに
代わる代わる辱められたのだと。

婚約者の両親から婚約破棄を伝えられたのは、それから一週間ほど経ってからでした。
「彼もご両親も、きっと汚れてしまった私に愛想をつかせちゃったのね。
 幸いだったのは妊娠しなかった事だけ」

自嘲するように笑う彼女でしたが、それだけでは終わらなかったと言うのです。
彼女を襲った三人のうちの一人は同じ村に住んでおり、後日、
「あの夜の事を村中にバラされたくなかったらもう一度抱かせろ」と迫られたというのです。
「それであたし、郷里に居るのがほとほと嫌になって東京に出たの。
 でも、お勤め先にまでその男から電話が掛かってきて、付け回されて・・・」

今で言うストーカーと言うやっでしょう。聖女のように見えた彼女でしたが、
その壮絶な過去を聞かされては、返す言葉がありませんでした。
「あたし、生きてるのに疲れた。だからいっそのこと死んでしまおうとここまで来たの」
唇を噛み締め涙ぐむ彼女が哀れでした。私の中に激しく込み上げてくるものがありました。

「逃げよう。俺があんたを守ってむやる!」
勢い込んで叫んだ私に、彼女がフッと苦笑しました。
「ありがと。それにさっきは本当にありがとう。嬉しかった。
 でも、あたしは貴方に守ってもらえるような価値のある女じゃないわ。
 すっかり汚れきっている女なのよ」
「だからどうだってんだよ。俺だって、もうこの町にはいられねぇ。
 さっきの連中は俺のワル仲間だ。けど、それも今日で終わりだ」
「でも・・・」
「行こう。あんたを死なせる訳にゃいかねぇ」

 
36-08.jpg
彼女の手を引いて立ち上がった私は、痛む体を引きずってバイクに跨り、
ためらう彼女を後部座席に乗せました。そしてそのまま猛スピードで故郷を後にし、
一年半に及ぶ逃避行が始まったのです。

彼女は三歳年上でしたが、夫婦という触れ込みでパチンコ店や食堂に住み込みで働き、
各地を転々としました。が、それはまだ21歳だった私にとって苦難の連続でした。

PTSDなる言葉は当時未だありませんでしたが、今思えば彼女はまさにそんな状態でした。
昼間は明るく振舞っていても、夜になると何かに怯えるようにうずくまっているのです。
一度ならず二度までも暴漢に襲われた事が心に深い傷を負わせたのでしょう。

私の方は欲情との戦いでした。
枕を並べて寝る時など何度ふしだらな欲望に駆られたか知れません。
でも、彼女の心中を思うと手出しは出来ず、悶々とする夜が続きました。

が、逃避行も一年半が経とうとしていたある夜のことでした。
住み込みで働いていたパチンコ店の二階の部屋で、
床に就いて一時間ほどたった頃のことでした。
「お願いがあります」
「ん?また、嫌な夢でも見たのか?」
私の問い掛けに彼女が首を横に振ります。

「あたしを・・・抱いてください・・・」
「はぁ?なんだよ、突然・・・」
思い詰めた顔で唐突に言い出した彼女に、唖然としました。

「あたし、貴方の恩に報いる方法が他にないんです。だから・・・」
「よせよ。あんたが俺に惚れたって言うんなら抱いてやる。
 けど、恩返しのために抱かせてもらうなんて俺はいやだね」
「でも・・・」
「ざけんな!俺にだってプライドはある。恩返しのために抱かせてもらうなんてまっぴらだ。
 俺はあんたに惚れてる。あんたを守ってやる。だから黙って着いて来ればいい!」

怒鳴ると、彼女は泣きそうな顔で私を見つめました。そして言ったのです。
「あたしも貴方が好き、貴方のような方にはもう二度とお会い出来ないと思ってる。
 ずっと一緒にいたい。だから・・・」
「本気なのか?」
彼女の言葉が信じられず、思わず聞き返しました。

「あたし、男の人が恐い。でも、貴方だけは別。だって、この一年半、ずーっと
 一緒にいたのに指一本触れてこなかったでしょ。だからお願い。あたしを抱いて!」
じっと見つめられました。
  1. 夫婦の今と昔
  2. / trackback:0
  3. / comment:0
  4. [ edit ]


comment


 管理者にだけ表示を許可する
 

trackback


プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
FC2ブログへようこそ!管理人の
アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

カレンダー

04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

フリーエリア

検索フォーム

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

« 2024 05  »
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


.