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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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亭主奪還計画。其の一

~理想の男性~
熟女専科38
昨年、夫を亡くし、一人暮らしを囲っている現在です。
とはいえ、まだまだ体は丈夫です。近くには二人の娘たち夫婦や大勢の孫が
居てくれるので、心細さは有りません。

娘や婿、孫たちが何くれとなく気遣って呉れるお陰で、私は満ち足りた生活を
送っています。気ままで悠々自適な暮らしに、これといった不満はありません。

土日に、二人の娘たちの家に順番に泊まりに行くのが、
目下の所私の一番の楽しみです。二人とも、一家をあげて私を歓迎してくれ、
本当にありがたい限りです。

二人の娘たちは、どちらも夫婦仲がよく、それぞれ三人の子供にも恵まれ、
それはそれはしあわせそうです。言うまでもなく、子供の幸福は親の幸福でもあり、
娘たちが幸せに暮らしていてくれるのは、私にとっても嬉しい事この上ありません。

しかし、その一方で娘たちが婿たちと仲睦まじくしている所を見ると、一抹の寂しさを
感じてしまうのもまた事実でした。亡き夫との思い出が思い返されてしまうからです。

正直、私は伴侶が近くにいてくれる娘たちが羨ましいのかもしれません。
いまの生活に不平を言ってはいけないのでしょうが、四十年余り連れ添った
亡夫のことを、そんなに簡単に忘れることなどできる筈も有りませんでした。

六十を過ぎた女が、年甲斐もなく言う事ではないでしょう。
しかし、私は亡夫の藤田薫(仮名)を心から愛していました。
其の愛は、真剣そのものでした。

夫を愛する余り、私は過去に色々な経験をしてきました。夫を自分一人の
男にしたいという私の執念には、常軌を逸した処さえ有ったかも知れません。

夫を看取ってから、私は昔の出来事を度々思い出すようになりました。
年齢のせいも有るでしょうが、娘夫婦の仲のよさに触れるにつけ、懐かしく、
そして激しく過去の思い出に浸る事が多くなった今日この頃なのです。

 
亭主奪還計画02
私と亡夫の出会いは、当時では平凡なものでした。
知人の紹介で見合いをしたのが、結婚のキッカケでした。
貿易会社に勤めていた三歳年上の夫を、私は一目で気に入ってしまいました。
夫も私に好意を持ってくれ、縁談はとんとん拍子にまとまりました。
(何て、ステキな人なんだろう。
 一回目のお見合いで、こんな男性に巡り会えるなんて!) 

女学校を卒業し花嫁修業にいそしんでいたおぼこ娘の私にとって、藤田は理想の
男性に映りました。背は高くて、五月人形のようにりりしい顔立ち、学歴も職業も
文句の付けようが有りませんでした。周囲も、両手を上げて縁談に賛成しました。

そのとき私は二十歳でしたが、男性と手を握った事はおろか、初恋すら経験が
ありませんでした。二十一世紀の今では考えられない事でしょうが、
当時はそんな時代。結婚するまでは、処女でいることが当たり前の時代だったのです。

藤田が、私にとっては初恋の人でした。初恋の相手にして結婚相手・・・。
いまの若い娘さんには信じられないことかも知れませんが、
そんなことも珍しくありませんでした。それでも私など、まだマシな方だったくらいでした。
親の言われるままに、好きでもない男性と結婚する娘も少なくなかったからです。
私は、嬉々として藤田と結婚しました。
望んで結婚した藤田との初夜のことを、私は今でも鮮明に覚えています。

新婚旅行先は、熱海でした。熱海などと言うと、今の若いカップルにはダサいと
言われそうですが、当時は流行の最先端だったのです。
二人で片寄せ合いながら、お宮の松の前で記念写真を撮り、
海岸を散歩したことは、私にとって最高の思い出となりました。
亭主奪還計画03
式を挙げ、新婚旅行に旅立って、本当に藤田の妻になったのだ、
と実感がふつふつと湧いてきました。
旅行も楽しく、胸ときめくものでした。しかし・・・
(夕飯が終われば、いよいよ床入りだわ、どうしょう)

宿に戻って温泉に浸かると、私の胸には不安が拡がりました。
言うまでもなく、私には男性経験がありませんでした。
初夜の作法等は母親からある程度聞かされていましたが、
それでも破瓜に対する期待の入り混じった不安は消しようも無かったのです。

(私、薫さんに気に入ってもらえるかしら、ひどく痛いのかしら・・・)
頭の中は、脈絡もなく千々に乱れるばかりでした。
豪華な夕食が済むと、仲居さんが布団を敷きに現れました。
心臓が、今にも口から飛び出してしまいそうでした。

(ああ、も、もうじきね、もうじき私、薫さんに抱かれるんだ!)
私は、落ち着きなく浴衣の前を掻き合わせたり、
飲みもしないのにお茶を入れたりしましたが、
そんな事をしても胸の動悸が納まるはずもありません。

そして、「花江、そろそろ休もうか」と、藤田に誘われるに至るや、
私はもう飛び上がらんばかりでした。電気を消し、
「何をいつまでもモジモジしてるんだい?早くおいでよ」

先に床に入った藤田が、クスクス笑いながら布団の中から手招きしました。
「僕らは、もう夫婦なんだぜ、君。恥ずかしがる事はないよ。さあ!」
確かに、いつまでも畳に"の”の字を書いているわけにもいきません。
私は覚悟を決めると、嬉し恥ずかし初夜の床に就いたのです。
本当に、あの頃の私はウブそのものでした。
  1. 夫婦愛
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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