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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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亭主奪還計画。其の四

~男女の修羅場~
亭主奪還計画09
長女の美保を出産するまで、私はこの幸福を信じて疑ってはいませんでした。
それどころか、夫婦のかすがいである子供を産むことによって、
いまの幸せが永遠に続くだろうとさえ思い込んでいたのです。
私は何とお気楽な、能天気な女だったことでしょう。

けれど、その思い込みが幻想に過ぎないことを直ぐに思い知らされる事と成りました。
いかに私が天下泰平な女であるといっても、初めての子育ては流石に過酷でした。

出産を経て、私は女であり妻である事に加え、母であるという立場になりました。
赤ん坊は可愛かったものの、理屈の通用しない彼女を育てることはそれは大変でした。

赤ん坊は昼も夜もなく、それもこれといった理由もなしに泣きました。
私は睡眠不足に陥り、あんなに好きだったセックスどころか
家事も満足にこなせなくなりました。

「花江は、この頃イライラしすぎだよ。だから、よけいに美保が泣くんじゃないか」
「ひどいわ、あなた、私の苦労も知らないで。あなたはいいわよね。
 昼間は仕事をして、夜はのんびり寝ていられるんですもの。
 私は二十四時間、美保の世話に追われて、
 ゆっくり寝る時間も食事する時間も取れないのよっ。イライラしない訳ないじゃないの!」

それまでは一度もした事のなかった夫婦喧嘩も、毎日の日課と成りました。
夫は、不慣れな育児にてんてこ舞いする私の気持ちを全く理解して呉れませんでした。

そして、私もまたキリキリ尖りきった妻を持て余している夫の心情など、
髪の先ほども判ってはいなかったのです。私たちの気持ちは完全にすれ違っていました。
私達夫婦の仲は、かなりギクシャクしていました。あれほど仲が良かったのが嘘の様に、
セックスは言うに及ばず会話さえもなくなりました。

それだけではありません。判で押したように午後の六時に帰宅していた夫の帰りも、
だんだんと遅くなっていったのです。其の事に関して、私は初め余り深刻に考えては
いませんでした。残業だと言う夫の言葉を、信じていたからです。

やがて、夫は深夜に酒や香水の匂いをプンプンさせて帰って来る事が多く成りました。
おまけに帰ってくるなり、慌てて風呂に飛び込む始末でした。
(女が出来たのかしら、いくら何でもおかしいわ!)

 
亭主奪還計画10
こういう態度を取られては、私としても夫を疑わざるを得なくなりました。
私は夫を問い詰めましたが、こんどは接待だと、しらを切ったのです。
納得出来ないまま、数ヶ月が経った時でした。一本の匿名電話がありました。

「お宅のダンナ、浮気してるよ。相手は、駅前にあるMってバーのママだ。
 嘘だと思うなら、Mに行って見張ってな。
 ダンナ、毎晩そこに来て、ママに入れ上げてるぜ」

誰からの電話かは判りませんでしたが、根も葉もない通告とは思えませんでした。
私はその電話を無視できず、その夜Mと言うバーに行って見る事にしました。

美保は近くに住んでいる実家の母に預け、Mと言うバーの前で夫を張る事にしたのです。
電話の主の言ったとおり、夫は七時くらいにMに現れました。一人でした。

私は、根気強く夫が出てくるのを外で待ちました。深夜を回った頃、
やっと夫は店から出てきました。三十前後の派手な目鼻立ちの女と一緒でした。

暗闇の中でも、女がかなり美しい事は見て取れました。あだ花のような
下品な美しさでしたが、夜の女らしく何とも男好きする色香を発散していました。

次に起こった出来事を目撃して、私は頭をハンマーで殴られたように成りました。
何と、私がそこにいるとはつゆ知らない夫と女は、店のまえで熱い口づけを
交わしはじめたのです。舌と舌とを濃密に絡ませ合う、ディーブキスでした。

「あ、あなたっ、ひどい、ひどいわっ。やっぱり浮気してたのね!」
これほどまでに堂々と不倫現場を見せ付けられては、
黙っていられませんでした。カッとした私は、夫と女の間に突撃して行きました。

「は、花江、ど、どうして、ここに?」
当然、夫と女は腰を抜かすほど驚きました。私は、夫に食ってかかりました。
「言い訳は聞きたくないわ。現行犯ですものっ」
「ああ、言い訳はしないよ。お前の言うとおり、見たとおりだ」
夫は、悲しそうに首を振りました。

「残酷なようだが、僕は最近の花江に女を感じなかった。
 育児に大変なのは判っているつもりだ。でも、家の中は僕にとってまるで修羅場だ。
 だから、この店にママに逃げた。ママに会うと、ホッとするんだ」
亭主奪還計画11
夫の告白を聞いて、私は愕然としました。夫は、尚もこう続けたのです。
「悪いが、花江、僕はママとは別れられない。ママは、僕の憩いそのものなんだ」

ショツクなどと言う、生やさしいものではありませんでした。私は、もう金切り声さえ
上げられませんでした。そのまま、私はフラフラと家に帰り付きました。

その夜、私は一晩中、鏡を見ていました。
ずっと育児に追われ、つくづく自分の顔を見る暇も有りませんでした。
鏡の中の私は、目を覆いたくなるような有り様でした。

(何て、悲惨な顔なの!目の下は隈だらけだし、肌もがさがさ)
これが私の顔か、と泣きたくなりました。以前の私はそれほど美人では有りませんが、
そこそこ可愛い顔立ちをして居る筈でした。それが、どうでしょう。

鏡の中でしお垂れている私は、実年齢より十は老けて見えました。
髪もざんばら、肌の青白い私は、如何見ても、生活に疲れ果てた中年女でした。

(私がこんなだから、薫さんはあのママに走ったんだわ。今の私とあの艶っぽい女とじゃ、
 とても比べモノに成らないもの。それにしても、何てことなの!)
まさに、ダブルショツクでした。
夫には浮気され、気が付けば自分はボロボロになっている・・・
女を、いう、人間を辞めたくなるようなショツクでした。

そんな私に追い打ちをかけるように、夫は家に帰ってこなくなりました。
しばらく、あのママの家にいる、冷却期間を置こう、と夫から電話がありました。
「別居するってこと?私たち、もうダメなの?」
「このままじゃ、僕は花江と一緒には暮らせない。許してくれ」

もう、どん底でした。浮気をした夫は許せませんでしたが、かといって離婚する気など
私にはさらさらありませんでした。私は、まだ夫が好きで好きで堪らなかったのです。
(いやよ、そんなの絶対いや!何とか、薫さんを取り戻してみせるっ)

別居を告げられてから、私は目が覚めました。
一念発起して、女を磨く決意をしたのです。心を入れ替えよう。
性格を穏やかに、そして容姿を美しく変えれば、きっと夫は戻って来る。
そう思い、次の日から日から涙ぐましい努力をはじめました。
  1. 夫婦愛
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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