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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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年上女の包容力。其の五

◇“ヒモ”のごとき生活◇
レンタルワイフ05
ある日、須賀子が言いました。
「わたしね、若い頃は、自分を安売りしたくないって、
 いつも突っ張ってたの。それで男に逃げられてばかりいて、
 こんどはだんだん男性恐怖症みたいになって行ったのよ。
 男のひとの前で素直になれたのは、あなたが初めてかも知れないわ」
「まさか・・・」
「女って、つきあう男で変わるのよね」
「ふうん・・・」

女というのは、女は男とは違う、と言う事を語りたがる生き物だと、
私は思って居ます。だから須賀子の口からも何度かこの様な話を
聞いたと思うのですが、ほとんど覚えていません。
若い私には良く判らない事だったし、余り興味が無かったのですね。
私は、須賀子の気持ちを思い図る事よりも、ただ須賀子との
セックスばかりに興味が向いていたようです。

だからまあ、あんな残酷な事が出来たのかもしれません。
それは、今思い出すたびに背中に冷たい水が走るのですが、
やはり書いて置かなければならないでしょう。
ただ楽しかった、と言うだけの話ではないのです。

須賀子に横恋慕している男が、私の会社に居たのです。
私の直属の上司で、上原(仮名)といいます。
上原は、四十歳の独身で、痩せて狐のような目をした男でした。
人付き合いが悪く、金を貯める事が趣味らしく、それでいまだに
結婚もしないのだ、と言われていました。

私は、須賀子と一緒に暮らして居る事は誰にも言いませんでした。
しかし、上原だけは知っていたのです。
須賀子はべっに同じ職場の女ではないし、
後ろ指を差される事も無いのですが、歳の差の事とかを考えると
あまり知られたくはなかったのです。なんだか私が、年上の女を
誑し込んで、弄んで食いものにしているみたいに思われそうで。

ある日私は仕事のミスをして、上原は狐の様な目を光らせながら、
「夜の仕事が過ぎるんじゃないの?年上の女は激しいようだね」
ねっちりとした口調で、そう言われました。

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三浦恵理子-002d
その時私は聞かぬ振りして聞き流したのですが、それ以後、何かにつけて、
ほんの小さなミスも見逃さずにネチネチと私をいびって来る様になったのです。
いやな仕事ばかり押し付けられたり、私の会社での立場は、
とても居心地の悪いものに成ってゆきました。

ある日須賀子に聞いてみると、上原に誘われて一度だけ食事をし、
プロポーズをされたとのことでした。

「あいつと寝たんじゃないのか?」
当然私は、そんな疑惑を抱いてしまいます。
「まさか、どうしてあんな男と。会社のお得意様の人だから、
 断りきれなかっただけよ」
まあ、須賀子の言う通りだったのでしょう。
それからも何度も誘われたけど断り通したと言います。

私の会社に来る事を止めにすれば良かったのだけれど、
私と逢いたいが為に用事を見つけては来続けたと言います。
上原は、それが尚の事、気に入らなかったのでしょう。

そして私たちの事を知って居ると言う事は、
須賀子にたいするストーカーの様な事もしていたのかも知れません。

結局私は、上原を殴って会社を辞める羽目になってしまいました。
いや、辞める事に決めて殴った、と言った方が正確です。
その夜、須賀子は、
「私のせいで、ごめんなさい」と言って泣きました。
そして、布団の中では何時にも増して激しく乱れました。

私は、すぐに再就職をせず、しばらくブラブラする事に成りました。
失業保険がおりるからさして困らなかったし、
須賀子もそうする様に勧めてくれました。
「私のせいでこうなったんだから、
 もう一生あなたの面倒をみてあげてもいいわ」
と、言うふうにも言ってきました。それは、嬉しいような、
ちょっと困ったような・・・。
三浦恵理子-035a
しかし「小人閑居して不善を為す」とは、
孔子もうまい事を言ったものです。
いったん怠け癖がついた私は、どんどんダメになってゆきました。
須賀子が会社に行っている昼間、雀荘通いを始めました。

不埒な生活をするようになったせいでしょうが、
麻雀の腕も上がったけど、サラリーマン時代には考えられないような
乱暴な打ち方をするようにもなりました。
それで大勝ちすることもあったけど、実力者に挑戦して惨敗し、
むきになってまた挑戦するという事もいとわなくなりました。

で、かなりの額の借金をこさえてしまったのです。
それはもう私の失業保険と須賀子の給料を合わせても返せない額で、
おまけに借りた相手がやくざとも関係のある人達で、
進退極まってしまいました。

根が臆病な私は、一時は死のうかとさえ思いました。
しかし女と言うのは、しかも、いくぶんやけっぱちの気性を持った
須賀子は、わたしなんかよりずっと腹が据わっていました。

「いいわよ、私がキャバレーで働いて稼いであげるから」
平然と言い切って、すぐに働き口を決めて来ました。
昼間の会社は、翌月のボーナスを貰って退社して、
三ッ月もたてばもう売れっ子のホステスになっていました。

それから三年、借金を返した後も須賀子にキャバレー勤めをさせて、
私は遊び続けました。

「あなたが傍にいてくれたら、それだけで幸せよ」
須賀子がそう言って呉れるのに甘えているうちに、私はついに、
借金よりももっとしては成らない事をしてしまいました。
ほかの女と出来てしまったのです。

これもよくある話ですが、泣いて縋る須賀子を蹴飛ばして、
その女のもとに走ってしまいました。

ここから先はもう、バカバカしくて書く気にもなりません。
しかしこの頃頻りに須賀子のことが思い出されるのは、
やはり七十を過ぎて私も人生に疲れてきたからでしょうか。
END
  1. 年上の女
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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