渡世で出会った女三人。其の六
◇真から愛した女◇
二日目の晩、それほどブショウが好きじゃなかったオレが、
部屋で一人酒を飲んでいると春さんがやってきた。
春さんは、かなり酔っていた。一緒に飲もうと言う事に成って、二人で飲み始めた。
飲んでるうちにオレも春さんもおかしくなった。何となくモヤモヤとして来たのである。
男どもは、ブショウに熱中しているか、オニギリ(色里)に繰り出しているかで、
どの部屋も空っぽ。
「タカイチさん、いいモノをしてるんだってね」
と、春さんが色っぽい目でオレを見た。
「言われるほどのモノじゃないですよ」
「そう言われると、なおさら見たくなるのが人情じゃないかい」
お互いに息が熱く感じられるほど近付いていたのである。
こうなったら成るようにしか成らない。オレの手が春さんの肩に回るか回らないうちに、
春さんが唇を押し付けて来た。この時春さんは三十七、八のまさに熟れ盛り、
春さんにしてみれば、自分を放っておいて、ブショウに熱中しているSさんへの
あてつけもあっただろう。酔った勢いを借りての、精々戯れ言とおもっていたが
どうもそうではないらしい。
オレだって春さんには気があったから、頂けるものなら頂きたいと思ったが、
ことがバレたら簡単ではない。仲間内、それも兄貴分のバシタに手をだしたとなれば、
オレも無事ではすまない。
しかしオレも若かった。心の中ではいけねぇと思いながらも、春さんの手を、
股間に導いて、荒ぶっているイチモツを春さんに握らせた。
春さんの息遣いが、みるみるあやしくなった。
「あんた、いけない人だよ、もうアタシはダメよ、
あの人には悪いけど抱いておくれ、好きにしておくれよ」
オレは帯が解けたままの春さんを抱き抱えて、布団部屋に潜り込んだ。
ここなら人目につきにくい。梅雨時の布団部屋はカビの匂いが充満していて、
息も出来ないほどだが、それでもここなら安心してヤレる。
オレを押し倒した春さんは、いきなり腰を使い始めた。
もう待っておれないという感じだった。ヨガリ声が大きくて、
オレは必死で、春さんの口を手でおさえた。
「よかったよ、こんなの初めてだよ。イチさん~」
オレの上になったまま、キスをしながら、春さんは息も絶え絶えにオレの耳元で囁くのだ。
「イチさんは噂どおりの女殺しだよ。ワタシもイカレてしまったよ。イチさんはまだなのかい?」
オレのイチモツは、まだ春さんの中で荒々しく息づいたままだった。
「一晩に何回ぐらいやったことがあるのかい?」
「一晩に八回と言うのがあるけど、今は精々五、六回ですよ」
「いいわね、一晩でいいからイチさんのそばで夜を明かしたいよ。
ああ、ダメだよ、またヘンになっちゃったよ。続けてだけどいいかい?」
今度はオレが上になった。正常位から松葉崩し、向背位と体位を変えて責めまくった。
途中から春さんは虫の息になってしまった。春さんは失神してしまったのだ。
それ以来春さんとの関係は、Sさんが死ぬまで十数年続いた。
といっても密会するのは、年に五回か六回、高市が一緒で、
しかも二人きりになれる機会はそう多くはない。
実はSさんは、若い頃ケンカで股間を蹴られ、それ以来性欲が極端に落ち、
三十半ばでほぼご用済みになったというのだ。
「あの人には悪いけど、寝て思うのはイチさんのことばかりさ。
あの人の事は今でも好きだけど、体はイチさんのものさ。
ワタシは二人の亭主がいると思ってるのさ」
Sさんはひどい糖尿で死ぬ直前は、気の毒なほど弱っていた。
それでも好きなブショウは辞められなかった。人はSさんに乗られるのを、
「死神がつく」と言って嫌がった。そう言われてもSさんはブショウをやめなかった。
Sさんの通夜の時だった。春さんがしみじみいった。
「今までイチさんには言わなかったけど、あの人はワタシたちの事を知ってたんだよ。
イチはオレが目をかけた男だからといって笑ってたけど、内心では辛かったと思うよ。
今となっては手遅れだけど、ワタシは、これからでも操を立てるつもりさ。
わかっておくれよ。イチさん。それからコレだけはハッキリ言って置きたいんだけど、
ワタシはあの人とイチさんの他は男は誰も知らないんだよ」
ジンときたね。さすがのオレも、ホトケになったSさんを見てすまない気持ちで
胸が一杯になった。オレは思い切り泣いたね。
オレはさんざん悪い事をしたけどその割にはいい思いもしている。
いい女に出会えた事がそれだ。その中でもとびっきりがサクラさんと春さん、
そしてウチのカミさんだ。カミさんは良く出来た女だ。
オレの女遊びを知ってて一言も文句をいわなかった。
「ワタシは親に勘当されても、アンタと一緒になったんだから、
死ぬまで添い遂げさせてもらうよ」と言うのが口癖で、
「遊ぶのはいいさ、しかし絶対に子供だけは作らないでおくれよ。
子供作るのは罪だよ。子供にとっても相手の女にとっても」
約束どおり外では子供は絶対作らなかった。しかしウチには五人のガキがいる。
真から精液を放ったのはカミさんだけだったのだ。
END
二日目の晩、それほどブショウが好きじゃなかったオレが、
部屋で一人酒を飲んでいると春さんがやってきた。
春さんは、かなり酔っていた。一緒に飲もうと言う事に成って、二人で飲み始めた。
飲んでるうちにオレも春さんもおかしくなった。何となくモヤモヤとして来たのである。
男どもは、ブショウに熱中しているか、オニギリ(色里)に繰り出しているかで、
どの部屋も空っぽ。
「タカイチさん、いいモノをしてるんだってね」
と、春さんが色っぽい目でオレを見た。
「言われるほどのモノじゃないですよ」
「そう言われると、なおさら見たくなるのが人情じゃないかい」
お互いに息が熱く感じられるほど近付いていたのである。
こうなったら成るようにしか成らない。オレの手が春さんの肩に回るか回らないうちに、
春さんが唇を押し付けて来た。この時春さんは三十七、八のまさに熟れ盛り、
春さんにしてみれば、自分を放っておいて、ブショウに熱中しているSさんへの
あてつけもあっただろう。酔った勢いを借りての、精々戯れ言とおもっていたが
どうもそうではないらしい。
オレだって春さんには気があったから、頂けるものなら頂きたいと思ったが、
ことがバレたら簡単ではない。仲間内、それも兄貴分のバシタに手をだしたとなれば、
オレも無事ではすまない。
しかしオレも若かった。心の中ではいけねぇと思いながらも、春さんの手を、
股間に導いて、荒ぶっているイチモツを春さんに握らせた。
春さんの息遣いが、みるみるあやしくなった。
「あんた、いけない人だよ、もうアタシはダメよ、
あの人には悪いけど抱いておくれ、好きにしておくれよ」
オレは帯が解けたままの春さんを抱き抱えて、布団部屋に潜り込んだ。
ここなら人目につきにくい。梅雨時の布団部屋はカビの匂いが充満していて、
息も出来ないほどだが、それでもここなら安心してヤレる。
オレを押し倒した春さんは、いきなり腰を使い始めた。
もう待っておれないという感じだった。ヨガリ声が大きくて、
オレは必死で、春さんの口を手でおさえた。
「よかったよ、こんなの初めてだよ。イチさん~」
オレの上になったまま、キスをしながら、春さんは息も絶え絶えにオレの耳元で囁くのだ。
「イチさんは噂どおりの女殺しだよ。ワタシもイカレてしまったよ。イチさんはまだなのかい?」
オレのイチモツは、まだ春さんの中で荒々しく息づいたままだった。
「一晩に何回ぐらいやったことがあるのかい?」
「一晩に八回と言うのがあるけど、今は精々五、六回ですよ」
「いいわね、一晩でいいからイチさんのそばで夜を明かしたいよ。
ああ、ダメだよ、またヘンになっちゃったよ。続けてだけどいいかい?」
今度はオレが上になった。正常位から松葉崩し、向背位と体位を変えて責めまくった。
途中から春さんは虫の息になってしまった。春さんは失神してしまったのだ。
それ以来春さんとの関係は、Sさんが死ぬまで十数年続いた。
といっても密会するのは、年に五回か六回、高市が一緒で、
しかも二人きりになれる機会はそう多くはない。
実はSさんは、若い頃ケンカで股間を蹴られ、それ以来性欲が極端に落ち、
三十半ばでほぼご用済みになったというのだ。
「あの人には悪いけど、寝て思うのはイチさんのことばかりさ。
あの人の事は今でも好きだけど、体はイチさんのものさ。
ワタシは二人の亭主がいると思ってるのさ」
Sさんはひどい糖尿で死ぬ直前は、気の毒なほど弱っていた。
それでも好きなブショウは辞められなかった。人はSさんに乗られるのを、
「死神がつく」と言って嫌がった。そう言われてもSさんはブショウをやめなかった。
Sさんの通夜の時だった。春さんがしみじみいった。
「今までイチさんには言わなかったけど、あの人はワタシたちの事を知ってたんだよ。
イチはオレが目をかけた男だからといって笑ってたけど、内心では辛かったと思うよ。
今となっては手遅れだけど、ワタシは、これからでも操を立てるつもりさ。
わかっておくれよ。イチさん。それからコレだけはハッキリ言って置きたいんだけど、
ワタシはあの人とイチさんの他は男は誰も知らないんだよ」
ジンときたね。さすがのオレも、ホトケになったSさんを見てすまない気持ちで
胸が一杯になった。オレは思い切り泣いたね。
オレはさんざん悪い事をしたけどその割にはいい思いもしている。
いい女に出会えた事がそれだ。その中でもとびっきりがサクラさんと春さん、
そしてウチのカミさんだ。カミさんは良く出来た女だ。
オレの女遊びを知ってて一言も文句をいわなかった。
「ワタシは親に勘当されても、アンタと一緒になったんだから、
死ぬまで添い遂げさせてもらうよ」と言うのが口癖で、
「遊ぶのはいいさ、しかし絶対に子供だけは作らないでおくれよ。
子供作るのは罪だよ。子供にとっても相手の女にとっても」
約束どおり外では子供は絶対作らなかった。しかしウチには五人のガキがいる。
真から精液を放ったのはカミさんだけだったのだ。
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プロフィール
Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。
私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。
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