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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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姉妹との契り。其の三

◇衝撃的な事件
姉妹との契り3-1
八月の初めだった。私は級友の一人から全く意外な事を耳打ちされた。
私が牧子と隠れて交際しているのを感づいたらしい彼は、
牧子に担任教師との噂があると言うのだ。

教師の上田は三十四歳で、下宿住まいしていた。私はその級友の言葉を一笑に付した。
何を言っているのだと思った。牧子はそんなふしだらな女子高生ではない。
万事控え目で、キスはともかく女陰を私に触らせるにもあれほどのためらいを見せたのだ。
ましてやセックスなどその場のムードに負けて直ぐには応じようとしなかったではないか。

それでも級友の言葉が気にかかって夜もろくに眠れなくなった私は、
噂の真偽を直接牧子に確かめにかかった。
と言うのは、その級友がいい加減な事を口にする奴でなかったせいもある。
牧子は私の問い詰めに見る見る青ざめた。私は驚き、じっと見据えた。

「牧ちゃん・・・君はそんな女だったのか?」
私は失望と怒りで声が震えた。
「誤解よ・・・それは」
牧子は喘ぎながらやっと言った。上田は表面は真面目そうな感じだが、
常に何か秘密を隠しているような雰囲気を漂わせている教師だった。
独身なのでそれなりの女はいるのかも知れないが、日頃地味で目立たない存在なので
私達生徒だけでなく、大人達にもその変の事が掴みきれずにいる。と言ったところだった。

「誤解って、僕がどう誤解してるんだ?」
私は追及をゆるめなかった。牧子は両手で顔を覆って泣き出した。
その様子を私は冷たい眼差しを当てて見据えた。言い訳が出来ずに肩を波打たせて泣く
牧子の姿がすでに級友の噂を裏付けるものだと思うと唖然とした。
牧子はそのままの格好であとずさりしながら立ち去って行った。

それが私の牧子を見た最後だった。五日後に自殺してしまったからだ。
その二日後に教師の上田も同じ様に自殺した。

町じゅうが大騒動になった。 噂が噂を呼び、思いもかけず担任教師と不倫をしていた
女子高生の牧子は、自分の過ちを悔いて死を選んだのだとされ、それに衝撃を受けた
相手の上田は後追い心中をしたと言うのだった。
それはともかく、牧子が自ら命を絶った事を聞かされた時、私は目くらみがして脂汗が流れ、
その場にうずくまってしまったものだった。
 
姉妹との契り3-2
その後、私は高校を中退し、東京でペンキ職を営む伯父を頼って上京した。
商社マンになる夢は百八十度転換した。学業も故郷もすべてその時の私には
煩わしさ以外のなにものでもなかった。

ペンキ職人の見習いは、伯父が身内(甥)でも容赦ない修業をさせたので
予想した以上に辛かった。何度かまた高校へ復学して学問に打ち込みたいと
思ったかしれない。だが故郷の高校でなくとも、もう一度高校生活をすることが
亡き牧子との想い出につながる気がして辛うじて耐えたのだ。

ペンキ職の習い始めは野丁場仕事からだ。
長い板塀、トタン屋根などの塗装を言い、塗料や腕を慣らせていく。
大して神経を使わない代りに夏は汗まみれになるきつい労働だった。
そして年月を経るに従い家屋、ビルの細かい仕事に出向く。

五年たっとどうやら一人前に近い職人になっていた。或る山の手のお屋敷に仕事に行った時、
そこのお手伝いさんを見て驚いた。牧子によく似た娘だったからだ。
一瞬、牧子は自殺などしたのではなく、雲隠れしたままでそこに居るのかと錯覚したほどだった。

相手はそんな私を不審そうに眺めていたが、やっと気づいたらしかった。
彼女は牧子の妹の美子であった。いつか駅前の繁華街で母親と一緒に歩いていて
私とすれ違った高校の下級生でもある。同じ部活のテニス練習では共にラケットを
振ったこともあった。だがお互いに五年前とは全く違う環境に身を置いているのだから
驚き合うのが当然だった。

私達は懐かしさのあまりその晩おそく、再び落ち会って色々話した。レストランで食事をしながら、
私は牧子の自殺をきっかけに自分の生き方を変えたのだと話した。

美子はやはり姉の死にショックを受け、どうにか高校だけは卒業すると家を飛び出して上京し、
先輩のコネで今のお屋敷に住み込みでお手伝いをしているのだと語った。
だが、なぜ故郷の実家を出たのかについては口をつぐんだ。私にはそれが少々気になった。

姉の牧子が居なくなってしまったのだから、父親が単身赴任で不在の家庭は一層淋しく
なった筈だし、美子があの美しい上品な母親を慰めながら寄り添うように暮らして行くのが至極
当然に思えたからだった。それが事件から二年後に母親を一人ぼっちにして鳥が飛び立つ様に
家を捨てたと言うのは腑に落ちなかった。だが、その辺の事情について美子は口を閉ざした。

私はまあ良い、と思った。私自身の変化ぶりだって、所詮他人には理解できなかろう。
美子は別に牧子に関わりのある理由からではなく、
ほかの動機で出奔したのかも知れないとも考えたからである。
  1. あの日あの頃
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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