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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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夢枕に立ったおさげ髪。其の一

~故郷への想い~
夢枕に・・・01
うなされていたらしい。ハッとして目が覚めた。
隣りの布団では老妻の時恵が寝息を立てていたが、
私の脳裏には夢の中に現れた女の声と姿がはっきりと残っていた。

「お元気そうで安心しました。ずっとずっとお幸せに」
そう告げて女は寂しそうに微笑み、霧の中に淡く消えていった。
セーラー服におさげ髪の似合う美少女だった。
高校時代に一級下だった康子である。

「馬鹿言え!俺はお前を捨てた訳じゃない。なぜ逃げる?」
夢の中でそんなふうに何度も叫んだような気がする。
叫んでいる私も十八歳の少年だった。

目が覚め、薄明かりの中で天上を見上げる。
なぜ今頃に成って彼女の夢を?
若き日への懐かしさと嫌な予感が入り交じって込み上げてきた。

隣を見る。老妻が鼾をかいている。結婚してかれこれ四十年。
かっては美人と呼ばれた時期もあったが、今では隣りに私が寝ていても平気で
寝屁をこくような女である。

故郷を離れて五十年か。みんな、如何してるだろう・・・
望郷の念がフッフッと込み上げてきた。私の故郷は北海道だ。
大学受験を失敗した後、予備校に通う事を口実に上京して五十年。
紆余曲折を経て、今は北関東の某市に住んでいるが、
未だ道産子の気概は失ってはいない積りで居る。

帰りたい。それが無理なら一週間だけで良いから里帰りしてみたい。
そんな思いに駆り立てられた。
日々、仕事に忙殺されて故郷を思う事など皆無だが、
そんな私を駆り立てたのが夢枕に現われた康子の存在だった。
 
夢枕に・・・02
康子・・・私の初恋の女性である。過去を美化したがるのは人の常だが、
それにしても夢枕に現われた康子は美しかった。彼女は未だ北海道に居る筈である。
だが、どんな男を生涯の伴侶にしたのか、子はもうけたのか、どんな暮らしをしているのか、
そうした情報は一切耳に届いていない。なにしろこの五十年、彼女との交信は勿論、
旧友達との関係も一切断ち切って生きてきたのだ。

北海道には姉夫婦が苫小牧と言う所に住んでいる。両親はすでに他界しているが、
その葬儀にさえも香典を郵便為替で送っただけで済ませてしまったほど、
不義理を働いて来た私なのである。

父は私が二十七歳の時、母は私が三十一歳の時に亡くなった。暫くしてから、
「長男のお前が親の葬儀に欠席するなんて夫や親戚縁者の前で散々恥をかかされた」
と電話で姉から叱られた。切なかった。が、私は返す言葉がなかった。葬儀に出たくても、
当時、まだ定職に付いていなかった私には香典を送るのが精一杯だったのである。

五十年・・・か。老妻の寝顔から顔を背けて溜め息をついた。
記憶の中にある康子の面影を追う。
一年間交際したが体を交えたわけではない。しいて言えば、たった一度
キスを交わしただけである。それも別れの前日に。

高校時代、私が生徒会の書記長を努めたのは二年生の時だった。
三年生に成り、大学受験のために生徒会活動からは手を引いたが、
次期生徒会役員の選挙で私に応援演説を依頼してきたのが
副会長に立候補した康子だった。

昼休みに下級生の女の子から廊下に呼び出された。廊下に出て目を見張った。
親衛隊を気取っている二人の女子生徒に守られるようにして彼女が立っていたのである。
下級生とは言え、私も彼女の存在だけは知っていた。
彼女は全校で知らぬものが居ないほどの美少女だったからである。

肩に掛かるサラリと伸びた黒髪、理知的な瞳、小振りで愛くるしいピンクの唇と、
綺麗に並んだ白い歯、均整の取れた中肉中背の体つき。利発で優秀で、
しいて欠点を挙げれば強情なところだったが、それすらも彼女の魅力を引き立てる
刺身の妻のようなものだった。

  1. 忘れ得ぬ人
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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