色ごのみ。其の五
◇いまわしい売春婦
それからの私は、まさしく魂の脱け殻でした。小山に捨てられたばかりか、
友人に品物のように譲り渡された怒りと哀しみで、何もする気が起こりませんでした。
大場とは、あの犯された日以来、会ってはいませんでした。
あんな卑劣な男とは、金輪際つきあう積もりもありません。
心に、いえ、肉体にもポッカリと穴があいて、埋める術を持たなかった私です。
主人や子供たちに気遣ってもらっても、こればかりはどうしょうもありません。
別に何するわけでもなく、ただ街をブラブラする日が続きました。
昼間、夫や子供の居ない間を見計らって、小山を忘れるべく街をあてどなく歩いていたのです。
ある日のことでした。何時ものように街を歩き回り、疲れた私は街外れの喫茶店に入りました。
「もしもし、奥さん・・・」
と、私に声を掛けてくる男があったのです。
「よかったら、相席させてもらえませんか」
其の男は、四十代前半と言うところでしょうか、そう言いながら私の隣りに腰を下ろしたのです。
男は、感じもよく紳士然としていました。話術も巧みで、何やかやと私に話しかけてきます。
知らず知らずのうちに、私は男と打ち解けて話をしていました。
こんなに沢山お喋りをするのは久し振りでした。
「いやぁ、奥さんみたいな女性は珍しいですねぇ。
お美しいし、教養もおありになるようで、ご主人が羨ましい」
小一時間も話したあと、男はそっと私の耳にこう囁きかけたのです。
「どうなさいますか。もしも時間が有れば、
もっとゆっくり話の出来る所にご案内したいのですが・・・」
男に誘われるまま、私は連れ込み旅館へ入って行ったのです。
そのいかがわしい場所へ連れて行かれても、私はさして驚きはしませんでした。
**
一度、堕落の味を覚えると歯止めがきかなくなるのでしょう。
私は男にていこうするどころか、むしろ進んで連れ込み旅館の門をくぐっていたのです。
もしかしたら、この男が小山の事を忘れさせて呉れるかも知れない。
私をメチャメチャにして、何もかも忘れさせて・・・
そんな祈りにも似た思いを胸に、私は見ず知らずの男のなすが侭になったのでした。
旅館の部屋は二間続きで、奥の部屋に緋色の布団がふたつ並べて敷かれていました。
男は私の手を掴むようにして奥の座敷の襖を開け、
先ほどとは打って変わった乱暴な物言いでこう命じたのです。
「さあ、ボヤッとしてないでサッサと脱ぐんだ。オレは、あんまり時間がないんだよ」
男の余りの変わりように、私はギョッとするばかりでした。
「何度、同じ事を言わせれば気が済むんだ?今まで一時間も手間取らせたくせに、
あんただって、とっとと仕事を終わらせたいだろ?」
「し、仕事・・・?」
私には男の言っている意味がさっぱり判りません。
と、男はいかにもバカにしたように吐き捨てました。
「そうだよ、これはあんたの仕事だろう?パンパンのくせして、カマトトぶるんじゃないよ」
「パンパン・・・ですって!?」
何ということでしょう、男は私を娼婦と思っていたのです。
それほど私は、物欲しそうな顔をしていたのでしょうか。
「わ、私はそんな女じゃありません!」
「ああ、ああ、判ったよ。前金で欲しいんだろう?幾らだ?」
「お、お金なんて失礼な!」
「もうゴチャゴチャ言わずに、早くオマンコさせろっ・・・」
焦れ切った男が、私に飛び掛ってきました。
一度、堕落の味を覚えると歯止めがきかなくなるのでしょう。
私は男にていこうするどころか、むしろ進んで連れ込み旅館の門をくぐっていたのです。
もしかしたら、この男が小山の事を忘れさせて呉れるかも知れない。
私をメチャメチャにして、何もかも忘れさせて・・・
そんな祈りにも似た思いを胸に、私は見ず知らずの男のなすが侭になったのでした。
旅館の部屋は二間続きで、奥の部屋に緋色の布団がふたつ並べて敷かれていました。
男は私の手を掴むようにして奥の座敷の襖を開け、
先ほどとは打って変わった乱暴な物言いでこう命じたのです。
「さあ、ボヤッとしてないでサッサと脱ぐんだ。オレは、あんまり時間がないんだよ」
男の余りの変わりように、私はギョッとするばかりでした。
「何度、同じ事を言わせれば気が済むんだ?今まで一時間も手間取らせたくせに、
あんただって、とっとと仕事を終わらせたいだろ?」
「し、仕事・・・?」
私には男の言っている意味がさっぱり判りません。
と、男はいかにもバカにしたように吐き捨てました。
「そうだよ、これはあんたの仕事だろう?パンパンのくせして、カマトトぶるんじゃないよ」
「パンパン・・・ですって!?」
何ということでしょう、男は私を娼婦と思っていたのです。
それほど私は、物欲しそうな顔をしていたのでしょうか。
「わ、私はそんな女じゃありません!」
「ああ、ああ、判ったよ。前金で欲しいんだろう?幾らだ?」
「お、お金なんて失礼な!」
「もうゴチャゴチャ言わずに、早くオマンコさせろっ・・・」
焦れ切った男が、私に飛び掛ってきました。
それからの私は、まさしく魂の脱け殻でした。小山に捨てられたばかりか、
友人に品物のように譲り渡された怒りと哀しみで、何もする気が起こりませんでした。
大場とは、あの犯された日以来、会ってはいませんでした。
あんな卑劣な男とは、金輪際つきあう積もりもありません。
心に、いえ、肉体にもポッカリと穴があいて、埋める術を持たなかった私です。
主人や子供たちに気遣ってもらっても、こればかりはどうしょうもありません。
別に何するわけでもなく、ただ街をブラブラする日が続きました。
昼間、夫や子供の居ない間を見計らって、小山を忘れるべく街をあてどなく歩いていたのです。
ある日のことでした。何時ものように街を歩き回り、疲れた私は街外れの喫茶店に入りました。
「もしもし、奥さん・・・」
と、私に声を掛けてくる男があったのです。
「よかったら、相席させてもらえませんか」
其の男は、四十代前半と言うところでしょうか、そう言いながら私の隣りに腰を下ろしたのです。
男は、感じもよく紳士然としていました。話術も巧みで、何やかやと私に話しかけてきます。
知らず知らずのうちに、私は男と打ち解けて話をしていました。
こんなに沢山お喋りをするのは久し振りでした。
「いやぁ、奥さんみたいな女性は珍しいですねぇ。
お美しいし、教養もおありになるようで、ご主人が羨ましい」
小一時間も話したあと、男はそっと私の耳にこう囁きかけたのです。
「どうなさいますか。もしも時間が有れば、
もっとゆっくり話の出来る所にご案内したいのですが・・・」
男に誘われるまま、私は連れ込み旅館へ入って行ったのです。
そのいかがわしい場所へ連れて行かれても、私はさして驚きはしませんでした。
**
一度、堕落の味を覚えると歯止めがきかなくなるのでしょう。
私は男にていこうするどころか、むしろ進んで連れ込み旅館の門をくぐっていたのです。
もしかしたら、この男が小山の事を忘れさせて呉れるかも知れない。
私をメチャメチャにして、何もかも忘れさせて・・・
そんな祈りにも似た思いを胸に、私は見ず知らずの男のなすが侭になったのでした。
旅館の部屋は二間続きで、奥の部屋に緋色の布団がふたつ並べて敷かれていました。
男は私の手を掴むようにして奥の座敷の襖を開け、
先ほどとは打って変わった乱暴な物言いでこう命じたのです。
「さあ、ボヤッとしてないでサッサと脱ぐんだ。オレは、あんまり時間がないんだよ」
男の余りの変わりように、私はギョッとするばかりでした。
「何度、同じ事を言わせれば気が済むんだ?今まで一時間も手間取らせたくせに、
あんただって、とっとと仕事を終わらせたいだろ?」
「し、仕事・・・?」
私には男の言っている意味がさっぱり判りません。
と、男はいかにもバカにしたように吐き捨てました。
「そうだよ、これはあんたの仕事だろう?パンパンのくせして、カマトトぶるんじゃないよ」
「パンパン・・・ですって!?」
何ということでしょう、男は私を娼婦と思っていたのです。
それほど私は、物欲しそうな顔をしていたのでしょうか。
「わ、私はそんな女じゃありません!」
「ああ、ああ、判ったよ。前金で欲しいんだろう?幾らだ?」
「お、お金なんて失礼な!」
「もうゴチャゴチャ言わずに、早くオマンコさせろっ・・・」
焦れ切った男が、私に飛び掛ってきました。
一度、堕落の味を覚えると歯止めがきかなくなるのでしょう。
私は男にていこうするどころか、むしろ進んで連れ込み旅館の門をくぐっていたのです。
もしかしたら、この男が小山の事を忘れさせて呉れるかも知れない。
私をメチャメチャにして、何もかも忘れさせて・・・
そんな祈りにも似た思いを胸に、私は見ず知らずの男のなすが侭になったのでした。
旅館の部屋は二間続きで、奥の部屋に緋色の布団がふたつ並べて敷かれていました。
男は私の手を掴むようにして奥の座敷の襖を開け、
先ほどとは打って変わった乱暴な物言いでこう命じたのです。
「さあ、ボヤッとしてないでサッサと脱ぐんだ。オレは、あんまり時間がないんだよ」
男の余りの変わりように、私はギョッとするばかりでした。
「何度、同じ事を言わせれば気が済むんだ?今まで一時間も手間取らせたくせに、
あんただって、とっとと仕事を終わらせたいだろ?」
「し、仕事・・・?」
私には男の言っている意味がさっぱり判りません。
と、男はいかにもバカにしたように吐き捨てました。
「そうだよ、これはあんたの仕事だろう?パンパンのくせして、カマトトぶるんじゃないよ」
「パンパン・・・ですって!?」
何ということでしょう、男は私を娼婦と思っていたのです。
それほど私は、物欲しそうな顔をしていたのでしょうか。
「わ、私はそんな女じゃありません!」
「ああ、ああ、判ったよ。前金で欲しいんだろう?幾らだ?」
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プロフィール
Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。
私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。
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