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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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消えた夫と支えてくれた男。其の五

◇三年ぶりの夫の帰宅◇
消えた夫と・・・5-1
一度男と女の関係になってしまってからはもう、歯止めが利かなくなりました。
毎日の様に催して来ると畑の窪地や、田圃の畦道でも互いのカラダを
弄りあい嵌め合っていました。
私たちの間には世間体以外、何も阻むものはありませんでした。
私と大田は、事実上の夫婦でした。狭い村の事ですので、
私たちの事は直ぐに噂になりました。当然、姑も私たちの関係に気づいていました。

「所詮、男と女だ。美代子も女盛りだし、恭さんも男ヤモメだしな。
 そっだらことになっちまってもしょうがあんめえな。すべては、孝文の不徳のせいだァ」
姑も、諦めていたようでした。大田のお陰で家業が何とか成り立っている現状では
大田に手を引かれたら家業が成り立ちません。第一、夫が蒸発しなければ、
私と大田が親密になる事もなかったのですから、
姑も私たちに文句の一つも言えなかったのでしょう。

昔は、姓に対するモラルが一般的には厳しかったものですが、農村に関しては
あながちそうとばかりは言い切れませんでした。
田舎は、特に私が住んでいた村は、男が都会へ出稼ぎに行くのが当たり前で、
半年や一年近くも夫が帰らない家は当たり前でした。嫁は農家の働き手として、
年老いた両親の面倒を見させる為にも嫁の性欲処理の為の少々の我侭には
目を瞑っているが普通でした。

ですから、私と大田の関係も人の口には上っていたようですが、
あからさまに非難されたり、村八分になったりする事はありませんでした。
それどころか、夫に蒸発された私は同情されていましたし、
私と姑を助けている大田も村人から好意的な目でみられていたのです。

悪口を言われていたのは、むしろ無責任な夫の方でした。
しかし、さすがに夫がいなくなって三年近くになると、
「はるさんとこの孝文ゃ、どっかでのたれ死んどるかもしんねえな」
「ああ、まったく親不孝な息子を持ったモンだ。親より先に死んじまうとはな」

村人はおろか、姑でさえ夫の事を半分、死んでしまった者として考える様に成りました。
もはや夫が帰って来る等、誰も信じていませんでした。
「しかし、オラ、美代子に申し訳なくってよォ。
 若い身空の美代子を、飼い殺しにしているような気がするだよ。
 だけんど、何でも人は行方不明になって七年経たねえと、
 死んだ事にはならねえんだと、美代子、おまえ、一日も早く自由になりてえだんべ?」
「いいのよ。義母ちゃん。とても義母ちゃんを一人にはして置けないもん」
 
消えた夫と・・・5-2


**
確かに、中途半端な状態で辛く無いと言ったら嘘になりますが、それでも年老いた
姑を残して行く事は出来ませんでした。それに、私には大田が居てくれたので、
あの様な生活も満更しんどいばかりと言う事もなかったのです。

夫が蒸発して、三年が経った頃でした。そのときにはもはや私と大田は夫婦然と振る舞い、
村人たちも半ばそんな私たちを認めるようになっていました。そんな折りも折り、
「たっ、大変だよ、美代子!孝文のバカタレが帰って来ただよっ」

リンゴの木の剪定をしていた私と大田に、姑がビックリするようなニュースを
持って来たのです。腰が抜けるほど驚き、家に戻ってみて、
「あっ、あんたァ、一体今まで、何処でどうしてたんだァ?!」
二度ビックリでした。何と、土間に乞食同然の夫がへたり込んで居たではありませんか。

「何て、落ちぶれた格好なんだァ。まるで、物乞いみたいじゃないかのォ」
私、悲鳴に近い声に成っていました。
しかし、この期に及んで夫が帰って来るとは、嬉しいと言う気持ちより、
どうしても困惑の方が先に立ってしまいました。
「許してけろ、美代子、おっかあ!オラ、オラ、こんなつもりじゃあ・・・」

薄汚い顔を涙でくしゃくしゃにした夫を見ると、不思議と怒りが湧いて来ませんでした。
少し前までは、もし帰ってきたら、ああも言ってやろう、こうも罵ってやろうと考えていましたが、
夫は夫なりに苦労してきた様子でした。

「いやァ、東京サ都会はまったくおっかねえところだァ。
 オ、オラ、何とか金儲けがしたくってェ、飯場で稼いだ金でパチンコやっただよ。
 そしたら、初めのうちは儲かったんだけんど、そのうち大負けしちまってェ。
 その負けを取り戻そうと、いろんな博打に・・・」

要するに、博打に嵌った夫は借金を作り、借金取りから逃れる為に全国を転々として
いたと言うのです。まったく、呆れ返ってモノもいえませんでした。
「申し訳なかっただよ、おっかあ、美代子。これからは、オラ、心を入れ替えて働くだ!」
「いいだよ、いいだよ。こうして無事に帰って来てくれたんだ、なっ美代子」
「えっ、ええ、そ、そりゃそうだな、義母ちゃん」

以前はみそクソに言っていた姑ですが、いざ息子が元気に帰ってくると、
さすがに嬉しそうでした。けれど、私は姑のように単純に喜ぶ訳にはいきませんでした。
大田のことを想うと、どうしても複雑な心境にならざるを得なかったのです。
消えた夫と・・・5-3
夫が戻ってきたからといって、急に前と同じ生活が営めるはずはありませんでした。
空白の三年は、私と夫の間に深い溝を作っていました。
「孝文のヤツが帰ってきたからってェ、オラ、美代ちゃんと別れたくねえ!」
何より、私には大田がいました。大田にはずいぶん世話になっており、
急には関係を絶つことなどできません。私だって、大田には愛情を感じていました。

ちょうど、その当時菅原洋一の『知りたくないの』が流行っていたのを、
今でも忘れることが出来ません。皮肉なくらいに、夫の心境を現していた流行歌でした。
村中の噂に成っていた私と大田の事が、夫の耳に入らない訳は有りませんでした。
そんな噂のことは、夫にしてみればまさに、「知りたくない」事だったに違いありません。
しかし、夫は大田と別れろとは言いませんでした。

いいえ、言わなかったのではなく、言えなかったのでしょう。
りんご園が人手に渡らず、私や母親がまがりなりにも生きてこれたのも大田のお陰、
家長としての役目を放棄して三年も放蕩生活をしていた、脛に傷持つ身、
どこかに遠慮があって、強く出る事が出来なかったのだと思います。

私は、夫がはっきり言わなかったのを良い事に、こっそりと大田との関係を続けていました。
その事にも、夫は薄々気付いていたと思います。内心、夫は嫉妬の塊だったことでしょう。
夫は人が変わったように家業に打ち込むようになりましたが、彼だって聖人君子ではありません。
折に触れ、私に嫌味を言ったり当たったりする事を抑える事が出来ませんでした。

それは、とくに閨房で顕著でした。夫は、もっぱらセックスで私と大田に対する嫉妬を
晴らしていたのです。ときとして、夫の行為は加虐的なまでに昂じることがありました。
「今夜は許して、あんた。風邪をひいて熱があるみてえで、何だかだるいのよ」
男の第六感とでも言うのか、夫はよりによって、私が昼間大田と交わってきた
夜に限って、必ずカラダを求めてきたものでした。

当然、私は適当に口実をもうけては断ろうとしましたが、
夫はそれを許しませんでした。許すどころか、むしろ、
「嘘こくでねぇ、夕飯、ちゃんと喰ってたでねえかっ」

私が拒否すればするほど、興奮を募らせるようでした。イヤがる私を追いかけ回し、
夫は強引に肉体を求めてきたのです。けれども、私も必死でした。
「イヤったら、イヤだよ。明日、明日ならいいだよ。だから、今晩は勘弁して!」
「うるせえっ。そんなにオラのことが嫌いだかっ。あの噂は、本当だかっ」
「よしてよ、あんた、義母ちゃんに聞こえるでねえのっ」

夫は私を後ろから羽交い締めにし、恐ろしい目でがなりたてました。
私は、無言で首を横に振るしか術を持ちませんでした。
罪悪感で押し潰されてしまいそうでした。
  1. 消えた夫と支えてくれた男。
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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