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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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消えた夫と支えてくれた男。其の一

◇放浪癖を持つ夫◇
消えた夫と・・・1-1
いまを遡ること、五十年近く前の話になります。
当時、私も花も恥らう、二十歳そこそこのおぼこ娘でした。
女学校を出て、実家の家事手伝いをしていましたが、
「美代子、おまえもそろそろ嫁に行け。柳沢の家からも、
  早く美代子を寄こせと矢の催促だ。来月、祝言を挙げる事にしたからな。
 そのつもりで、準備をしとけ」

父の命令で、気楽な独身生活に別れを告げなければ成らなくなったのです。
相手の男性は柳沢孝文(仮名)、私より三歳年上、
東北地方のリンゴ農家の長男でした。

孝文は、親同士が決めた許婚でした。何でも、私が生まれてまもなく、
父は孝文の父に私を柳沢家の長男の嫁にくれると約束したそうです。
考えてみれば、ひどい人権蹂躙の約束です。今の人には考えられない事でしょう。
しかし昔は、娘は親の決めた事には逆らえませんでした。

ですから、私はいずれ自分は見も知らない柳沢孝文という男の妻になるのだ、
と小さい頃からずっと覚悟していました。親同士が決めた相手と結婚することに、
何の疑問も抱いていなかったのです。そして、いよいよ嫁入りの日がやって来ました。

(顔は、まあまあってとこかな、いい男とはいかないけれど、仕方ないなァ)
祝言当日、私は角隠しの下から新郎を控えめに観察していました。
その日から私の夫となった柳沢孝文は村田英雄に、ほんの少しだけ似た、
眉毛の濃い男らしい風貌の人でした。

柳沢家は、私達若夫婦の他に舅と姑、孝文には妹が居ましたが、
既に他家へ嫁いでいたので、一家四人総出でリンゴ農園を
切り盛りしていかねば成りませんでした。
商家に育った私にとって、野良仕事はかなりしんどいものでした。

しかし農家の嫁として嫁いできたからには、一日も早く婚家の仕事、
しきたりに馴染まなければなりませんでした。自分で言うのもなんですが、
私はそれはそれは努力しました。

農家の仕事は大変でしたが、救いは舅と姑が優しかったことです。
私が舅の友人の娘だった事もあるのでしょうが、舅も姑もそれは私に良くして呉れました。
 
消えた夫と・・・1-2
夫との相性も、まずまずでした。私の事もぼっぼっ可愛がってくれ、
仕事の方も一生懸命やる人でしたが、一つだけ心配な事がありました。
(いったい、どこへ消えちゃうのかな。誰か、他に好きな人がいるんだろうか?)

それは、時たまフラリと夫が家族の誰にも行方も知らせず数日、
“フーテンの寅さん”を気取って姿を消してしまうことでした。
初めは、私はそんな夫を疑いましたが、
「まあ、余りきにしないでけろ。孝文のヤツには、昔からそう言う処があるんだァ」
舅も姑も、一向に意に介していない様子でした。

「二、三日ブラリと出掛けちゃ、何事も無かったように戻ってくる。
 別に、どこぞに女がいるって訳でもねえだ。ま、美代子もあんまり気にすんなァ。
 癖だと思って、目を瞑ってやってけろや」

夫にはどこか“フーテンの寅さん”の様なところがあったのです。
夫のそんな飄々とした処は魅力的と言えない事もありませんでしたが、
妻にとっては矢張り不安の種でした。

そんなある日、我が家をふたつの不幸が襲い掛かりました。
その年の夏と秋に大きな台風が東北地方を襲ったせいで、
リンゴの木にものすごい被害が出てしまったのです。

そして、もう一つは舅の急死でした。台風一過の翌日、
舅は脳溢血でポックリ逝ってしまったのです。
余りの事に、私たち一家は意気消沈、途方に暮れました。

「父ちゃんは突然おっちんじまうし、リンゴの木は全滅だし、
 これから先、どうしたらいいんだべ?
 オラたち、干上がっちまうべよ、孝文」
「大丈夫だよ、おっかあ。オラが、そんなことはさせねえ!」

毎日、愚痴ばかりこぼしている姑に、夫が言い放ちました。
舅が亡くなって一ヶ月、冬を目前にした頃でした。
夫は出稼ぎにゆく、と胸を叩きました。

  1. 消えた夫と支えてくれた男。
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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