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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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柿田川慕情 。其の三

柿田川慕情06
恵美子が雄二の元を去ってから、20年の歳月が流れた。
雄二には5人の孫も出来、現在は末っ子と二人暮しである。
その末っ子は「隆司」と言うのだが、其の隆司の言うには。
「最近姉貴の処に、お母さんから、頻繁に電話が有るらしいよ。
 孫の顔を見たいとか、お父さん元気で居るか、とか言ってるらしい。
 お母さんは今、独り暮らしらしいよ。
 何でも、相手の男は他に女を作って家を出てったらしい。
 もう5年も前の事だってよ。姉貴はお母さんの事嫌ってるからね。
 真面目な姉貴は浮気して、子供を捨てる親は許せない。
 母親として子供命の、姉貴には、お母さんが許せないみたいだよ」

「うぅそんな事が有ったのか、人様の女房に手を出す奴は、元々女に
 だらしない、無責任な奴よ。恵美子も其れに気付いた訳だ。
 其れで恵美子は元気で居るのか」

「あれ、親父は未だお母さんの事気に成るのかい。
 そう言えば、再婚の話しは結構有ったらしいが、皆親父が断った、と言うじゃん。
 今でもお母さんの事が好きならば、親父の方から”帰って来い”と言ってあげたら」

「そう簡単に行くものか。俺だってプライドって言うものもあるさ」

「何言ってるんだい、20年もお母さんを忘れられずに、再婚せずに来たんだろう。
 素直に帰ってきて呉れ、て言えば良いじゃん。
 姉貴は反対するかも知れないけれどね」

「お姉ちゃんだって本当は心の中では”母恋しい”と思ってるよ。
 今子育てに夢中だから、その気持ちを萎えさない為にも、
 子供を捨てた母親を憎む気持ちで、心を支えて居るのさ。
 本当に今一番母親が欲しいのは娘の筈だよ。
 育児のこと、家事の事、何でも相談できるのは母親だからな」
 
柿田川慕情07
残暑を感じさせる初秋のある日、
雄二は柿田川の源泉が湧き出す公園を散歩していた。
結婚していた当時は恵美子と良く歩いた思い出の場所である。
「お久し振り、お元気そうね」と言う声に振り向けば、其処に恵美子が立っていた。
「隆司から電話が有って」
「親父は何時も休みの時には柿田川を散歩して居るよ、母さんも行って見たら」
と教えてくれたのよ。とはにかみながら、雄二の隣に腰を降ろした。

「お前も元気そうで何よりだ」
「あの男とは別れたんだって」
「と言うか捨てられたんだろう、当たり前だザマァミロと言いたいね」

「酷い事言うのね、確かに私が浅はかでした」
「でも貴方も悪いのよ、当時は大変な事は判ってたけど」
「私の身体は淋しかったのよ」
「仕事一途で私の事チットも愛して呉れなかったじゃない」
「女はお金の苦労は耐えられても、身体の淋しさは耐えられないの」
「そんな時に、あの男が、優しく声を掛けて呉れたのよ」
「貴方には本当に申し訳ないと思っているわ御免なさい」

「そんなに素直に謝られると、返す言葉もないよ」
「あんな男の話しは聞きたく無いが、俺も悪かったと思っているよ」
「俺はあれから二十年、他の女は抱く気には成れ無かったよ」
「一生一度の恋だと思い、生涯に妻と呼ぶのはお前だけと、決めてたからな」
「だからお前に裏切られた時は、本当にショックだったよ」
「あの時は殴って御免な」

「嬉しいわ、貴女にはもう別な奥さんが居ると思ってたわ」
「子供達から、親父は未だ一人で居るよ、と聞かされてはいたけど、
本当に御免なさいね、今更こんな事言える義理ではないけど、
もう一度貴方に抱かれたい、今日はその積りで来たのよ」

「俺だって何時の日にかお前と逢えたら、この手で抱きしめてやろう、
と思っていたよ」
「本当の気持ち、俺は今でもお前を愛して居るよ」
「未だ明るいけど、昔時々利用したホテルに行ってみるか」

雄二の提案に頷く恵美子であった。新婚当時は両親と同居していたので、
良く恵美子とラブホテルを利用していた、其れくらいに仲の良い夫婦だったのだ。
三島市外から箱根に向う街道筋に、そのホテルは有った。

「懐かしいわ、此処から眺める景色は昔と変わらないわね」

「お前も変わらないよ、昔のままに綺麗だよ」

「うそ、もうおばあちやんよ、貴方に見られるのが恥ずかしいわ」
「電気を暗くしてしてくれる」

「何言ってるんだ、歳を取ったのはお互い様だよ」
「俺はお前の身体を良く見たいんだよ」

二人はホテルの浴衣に着替えてベッドに横たわった。
柿田川慕情17

♪柿田川慕情

作詞 万屋 太郎
作曲 阿波 昭夫
編曲 Andy A.
歌唱 たかば キヨシ

歌が聴けます。

-1-
私の我侭 咎(とが)めもせずに
元気で暮らせと 優しく言った
別れた人の   面影を
訪ねて来ました 柿田川
緑茂れる    公園に
今も涌き出る  清水(きよみず)は
あの日の侭に  澄んでいた
-2-
言い訳出来ない 私の罪を
苦労を掛けたと 頭を下げる
別れた人の   暮らしぶり
今頃気になる  柿田川
捨てて逃げたと 言われても
返す言葉の   無い私
今更何を    追い求む
-3-
優しさだけでは 駄目なんだよね
幸せ遣れぬと  自分を責める
別れた人の   眼差しが
今でも向かわす 柿田川
過ぎた月日は  戻らぬが
富士の山裾   見渡せば
あの日の侭の  雲が行く
  1. 別れても夫婦
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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