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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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泥沼の中で掴んだ幸せ。其のニ

デキちゃった03
主人になだめられればなだめられるほど、私はいたたまれない気持ちに成って参ります。

日に追うごとに外泊の数が増えていく義弟に家族の態度も次第によそよそしく成って
行くようで、そうなると、
「ああ、私がここに嫁いで来たばっかりに・・・」と、自分で自分を責める気持ちが
どんどん大きく成っていって、まんじりともせずに朝を迎える事も少なくなく、
私の気持は次第に追い詰められていきました。

(私が自分で次雄さんに聞かなければ)ついに私は決心したのです。
あれは、今日の様に明け方からむっとした熱風が吹いている蒸し暑い日でした。
いつもの様に朝帰りをした次雄さんの前に私は跪いて、こう申したのです。

「お願いですから、もう少しまっとうにお暮らし下さいまし。
 私のどこが気に入らないのか、仰って頂ければいくらでも直します。
 ですから、どうぞ、どうぞ・・・・」

言い終わらないうちに、私の傍らで何かが砕ける音がしたかと思うと、
じんと額の辺りが熱く焼けました。驚いて振り返ると、土間に一抱えも花器が、
いけてあった花と一緒に粉々に散らばっています。
あまりの熱さに額に当てた手がぬるりとしたぬめりで滑り、
私は初めてそこが割れている事に気付きました。

「俺に意見なぞしようとするからそういうことになるんだ!」
吠える様に一言言い放つと、滴る血を押さえながら呆然としている私を置き去りにして、
次雄さんは走り去ってしまっていました。

その後は、もう、上へ下への大騒ぎでございました。
主人は烈火の如く怒り、舅は勘当だと言い出す始末。
その時の傷は、今でもうっすらと額に残って居ります。

この一件がありましてから後は、次雄さんに暴力を振るわれた覚えはございません。
さすがに次雄さんも悪いと思ったか、私に対する嫌がらせも控えるようになりました。
時折りは優しい言葉も掛けて呉れる様にもなり、子供達とも一緒に遊んでくれたりも
するようになりましたし、外泊の回数もほんの少しですが減っていったように思えます。

ところが、次女を身ごもるほんの少し前あたりから、また、困った事が起こり始めました。

 
泥沼の中で02
本当に何気ない拍子のことでした。
夫婦の部屋で、主人の愛撫を受けていた時の事です。
何時もの様に優しい主人の指を陰部に感じながら、恍惚混じりにうっすらと
開いた眼の隅に、何か暗い影が映り、はっとしてその方向を見たのです。

襖がほんの少し、そう、数ミリ程度、開いて降りました。そして、その蔭の中から何か
きらりと光る物を、私は見てしまったのです。

人間の目に違いありませんでした。誰かが、私達の営みを見ていたのです。
次雄さんだと、私は直感いたしました。あの夜が初めてだったのか、
もっと前からだったのか・・・とにもかくにも、夫婦二人だけの秘め事を他人に覗かれた、
それもあの次雄さんに見られていたとおもうと、全身が鳥肌たっような寒気に襲われて、
主人に抱かれている間中、私は震えて降りました。

もちろん、そんな事は主人は知りません。私が恍惚のあまりに震えているのだろうと
思っていたようでございます。

それからと言うもの、私は主人が求めてくるたびに、襖の方を盗み見るようになりました。
私が気付いているのを次雄さんも知っていた筈です。
それなのに、次雄さんは何度も何度もやってきました。
私が主人に抱かれているところをじっと静かに襖の向こうで見つめて居りました。

次雄さんの破廉恥な振る舞いは、それだけで終りませんでした。
私が主人に言えないのをいい事に(そんな恥ずかしい事、どうして主人に申せましょう)
だんだんあからさまになっていくようでした。

洗濯物の中から私のズロースが消えている事に気付いたのは、
覗かれているのに気付いてからひと月ばかり後のこと、ズロースだけではありません。
其のうちにブラジャーまでもが消えるように成っていきました。

干した布団を叩いている最中に、針が顔をだした事もありました。
私の寝間着に針が忍び込ませてあった事も有りました。

全ては次雄さんの仕業。
私は確信しておりましたが、なんの証しもないこと。
悪戯に騒ぎたてて家を壊す訳にはまいりません。
私も、なるべく次雄さんの仕業ではないと思いこむようにして、
なんとか平静心を保って居たのですが・・・
泥沼の中で03
家人の目がないところで、次雄さんの気配を背後に感じる事が次第に増えて参りました。
すうっと、お尻の辺りにかすかな手の気配を感じて、振り返ると誰もいないというような
事もございました。

この世から次雄さんさえ居なくなれば、あの人さえ居なくなれば、どんなに、どんなに・・・。
何時の間にか私は次雄さんの死さえ願うように成っていました。
多分、そんな私に、神様が罰をお与えになったのでしょう。

私は、その後、その次雄さんと再婚する事になってしまったのですから。
運命とは皮肉なものです。

長継さんと結婚して五年目。たった半年寝付いただけで、夫は逝ってしまいました。
春間近のどか雪の日、吹き溜まりに足を取られて骨折したのが元で寝付いたまま、
肺炎をこじらせてあっけなく息を引き取ってしまったのです。

この屋を潰すわけにはまいりません。といって、私の息子はまだまだ頑是無い子供。
せめて長継の息子が成長するまででも家業を切り盛りする家長を立てなければならんと
舅に説得されて、私は渋々次雄さんとの再婚を承諾したのですが。
それはもう、塗炭の苦しみでございました。

あの破廉恥な、野卑な義弟に体を欲しいままにされるのかと思うと、舌を噛んで
しまいたいほどの無念さに襲われるのでございます。

尤も、祝言を挙げる頃には、家長としての重責を自覚したのか、
次雄さんの不行跡はすっかり納まっておりました。姑も舅もそれで安堵したのか、
私にも、
「これからは長継の事は忘れて、次雄を初めての夫と思って尽くすように」と諭します。
でも、次雄さんの様々な所業を呑み込んでいた私にとって、束の間の改心で
義弟の心根を信じることなどとうてい出来ない相談です。

案の定でございました。祝言の夜の屈辱の光景を、私は今でも夢に見る事がございます。
  1. 夫婦の今と昔
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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