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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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珠美の生涯。其の八

珠美の生涯17
そして四十を前にして私の就職を目どにしていたにも関わらず
「税理士」を目指して勉強を始めた事で、
若くない自分には是以上待てない、と泣いて話すのだった。
珠美の気持ちは痛いほど判った、私も泣いて別れないで呉と頼んだが、
もう再婚相手も決っていると言うのだった。私は裏切られた気持ちに成り、
殺してやるとまで言って、細い華奢な首を絞めながら泣いたものだった。

珠美一人では満足せず複数の女友達と、セックスをして居る自分の事は棚に上げ、
「もう再婚相手とオマンコ遣ってるのか」と言って私は珠美をなじった。
そんな身勝手で若いだけの私を見限る時期が来ていたのだろうと思う。
珠美だって年齢相応の相手ができて、肉体の歓びを知ったからには、
世間並みの結婚生活を夢見た筈だった。

私は手の中の玩具を取り上げられたような寂しさと悲しさと悔しさに我を忘れた。
日頃珠美に甘やかされ、我が侭一方の少年でしかなかったのだ。
是が最後と言って東京に出て来た日の帰り、最後にもう一度だけ抱かせてくれと
頼んで、半ば無理矢理に珠美の胸を押し開いて圧し掛かった。

何時もなら私の行動に合わせて、尻を振り、ペニスにしゃぶりつくはずが、その日は
何の反応も見せず、じっと目を瞑ったままで私の為すが侭に身を任せていた。
私の放出した精液を拭き取る手つきも、まるで汚いものでも処理するように、
ティシユを何枚も重ねて拭き取ると無言のままに水洗トイレに流していた。
私は「もう終ったな」と腹を決めるより他無かった。

気まずい寂しい別れだったが、私は珠美を忘れる為に他の女に目を向けた。
珠美との甘い生活に慣れてしまって居た私の身の回りに女性の居ない暮らしなど
考えられなかった。「税理士」と言う職業は女を見つけるのには不自由はしなかった。

二ヶ月程ほど珠美の事は忘れて暮らしていたが。突然、彼女が私の勤め先に
電話を掛けてきた。妊娠三ヶ月との事ことで、私は頭から血が引く様なショックを受けた。
珠美を忘れて、年相応の若者の生活に切り替えたばかりの時だったから、
今更何をと言う気持ちだった。

取りすがる私を振り払う様にして、再婚相手の元に行ったのではなかったか。
「妊娠の事で再婚の話しは破談に成った、あなたと結婚したい」
と言うのが電話の趣旨だった。

後悔は先に立たず、私はにべなく彼女の期待を打ち砕いた。
おまえから去って居たのではないか、俺は違う女と結婚の約束をしてしまった。

俺を散々弄んだんだから、今更そんな事を言われても責任は取れない。
おなかの子供は再婚相手の子だろう、とまで言ってしまったのである。

珠美は泣きながら電話を切った。
妊娠三ヶ月と言えば再婚の話の出る前の受胎で珠美のお腹の子は
私の子に間違いないだろう。私も泣きたい位だったが、
意地を張って彼女を責める事で気持ちを誤魔化した。
 
画像 196
私は三年後に国家資格も取って独立した、そして私の事務所に勤める
五歳年下の美代子と結婚したのだった。

心の中には又もや闇に葬ったであろう胎児と珠美の事が焼きついて離れない。
自分が幸せであれば有るほど珠美の事が引っ掛かり罪の意識に苛まれていた。

その後 、珠美の話を聞くことも無く十数年が過ぎた、三人の子供も成長して
我が家は至極平和であったが、生来の好色は幸せな生活がありながら、
不倫をしたりオフイスラブを積み重ねたりして、珠美のことを思い出すことも無かった。
本当の事を言えば折に触れて思い出していたのだが、
罪の意識で無理に心の底に押し込めて来たのだった。

珠美と別れて二十年が経った時、母と父が相次いで亡くなって、
故郷に否応なしに行かねば成らない事態に成った。
珠美は結局再婚する事も無く、未だ学校の教員をして居る事は、
少し前に知人から聞かされて知っていた。

彼女のお屋敷や工場は取り壊されて、
広い敷地の端っこに平屋の和風の家が建っていた。

その側をクルマで通過する時、妙に心が波立つのを覚えた。
既に別れてから二十年が経ったから、時効なのだと言い聞かせてみても、
矢張り罪の意識は消えなかった。

本来ならば珠美に再会するのは間違っていたかも知れない。
何度も何度も迷った挙句、ある秋の夜、彼女の家を訪問した。

「貴方の事はみんな聞いて知ってるわよ」

珠美は少しやつれた顔で言った。丸い黒目がちの目の光は昔と変わらず、
健康そうで若く見えたが、目尻の細かい皺はさすがに年齢は隠せなかった。
私が幸せそうであたしも嬉しい、と言ってくれたが、
額面通りには受け取れない弱みがあった。

私は若気の至りで珠美を不幸にして申し訳ないと謝罪したが、
「そんな事は昔の事よ、あたしはすっかり忘れたわ」と言って笑った。
身体の弱かった兄も亡くなって、
彼女一人の気侭な暮らしを楽しんでいると語った。
画像 259
「あたし、お酒飲める様になったんだから」
彼女は妙に浮き浮きして、
私の意向も聞かずに、冷蔵庫の下段から、
ワインを一本取り出して器用にコルクを抜いた。
「あの頃は梅酒の梅一粒でも酔ってたのに、
 今じゃ、かなりの酒豪になっちゃった」

幾分太って喉にたるみの出た顎を上げて、一気にグラスを空けた。
私も勧められる侭に早いピッチで飲み、忽ちビン一本は空に成った。

苦い酒だった、気まずく重苦しい空気に耐えられなくなった頃、
珠美は言った。
「もうこんな時間だから別に用事も無いんでしょう。
 お風呂にでも入ってよ、あたし自慢の風呂なんだ」

いつの時間でも沸いている風呂だった。
文字通りバブル時代の象徴の様なバブル風呂が流行り始めて、
私の自宅でも盛んに勧められていたものだった。

私は落ち着かない気分のまま浴槽に浸かり、珠美は私を許して、
今夜辺り肉体の関係を復活させようとしているのかもしれない、
等と不祥なことも考えて居た。

風呂から出るとこざっぱりした浴衣が脱衣籠に入れてあった。
かなり酔っては居たが、馴れ馴れしく珠美に口を利いたり、
身体に触れたり出来る心境ではなく、
出来ればこのまま辞去したかったのだが、
折角だから裸に浴衣を羽織っていた。

私が風呂に入って居る間に、床の間の有る客間に、
一組の布団が敷かれて有るのが、居間の襖の間から見えていた。

昔に還って気安い口を利き、ふざけあったりするには、
余りにも時間が無さ過ぎた。私達は共通の知り合いや、
友人の現在を話し合ったり、過去の出来事を話したりしていたが、
二人の辛い過去に付いては、意識的に避けていた。
  1. 年上の女
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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