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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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生まれ変わっても結婚したい。其の三

~千鶴がお嫁に成って呉れたら~
林檎姫3-1
給金が出た直後は、床を連れ込み宿に移して、泊り込む事もあった。
そんな朝は、本当に太陽が黄色く見えて、腰は鉛でも詰めたように重くなる。
そして一日中ボッーと腑抜けてしまうから、家人たちにもトルコ通いのご乱行が、
簡単にバレてしまう。

「兄ちゃん、いやらしいわよ」
妹の加代が軽蔑しきった目をして言う。
「何がいやらしいもんか。健全な肉体には、健全な欲望が起こる。
 なァ、そうだよな小島さん」
朝の挨拶に来た小島に助け船を求める。
「何のことです?ボン」
「兄ちゃんたら、またイヤらしい所に行って朝帰りなのよ。小島さん何とか言って上げて!」
「ああ、そのことですか。若いんですから、加代ちゃん、大目に見てあげたらいい。
 あんな所、いずれ行かなく成りますよ」
「そうだよね、男には通過点なんだよね、どうせなら思い切り遊ばなけりゃ、損だ」
「もう、小島さんに言うんじゃなかった。千鶴さんが可哀相・・・」
加代は思いっきり膨れ面をして、家の奥に引っ込んでしまった。

「加代のやつ・・・何を言ってるんだろうね」
「そのうち判りますよ。ボンは気付いてないでしょうが・・・
 トルコ通いは卒業した方が良いと思いますよ」
「どうしてさ」
「どうして?鈍いんですね。千鶴はボンに首ったけで、
 周りで見ているこっちの方が辛くなりますよ」
「千鶴が・・・?」
「気がつきませんか?この前も、女将さんと千鶴とボンが一緒に成ってくれたら、
 どんなにいいかと話してたばかりなんですよ。
 まぁ、こればかりは・・・本人たちの問題ですからね。
 じゃ、あっしは店に入りますんで」
小島は言い終えて、踝を返した。

千鶴が私に想いを寄せている。是まで考えた事もなかった。その頃の千鶴はすっかり
家族の中に溶け込んでいて、私にしても妹が一人増えたという感じでしかなかったのだ。


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林檎姫3-2
小島の言葉は、私の心臓を抉った。
動悸が胸を締め付け、首筋まで真っ赤に染まるのが自分でもわかった。
それは、是まで一度も味わった事の無い不思議な感情を起こさせた。

もしかしたら、自分でも気づかぬうちに、千鶴を愛し、見ていたのかも知れない。
なにを馬鹿なことを、と否定してみるのだが、一度湧き上がった思いは、
そうそう消せなかった。

それからの私は自分がどうにもならぬほど、千鶴を意識するようになった。
千鶴と顔を合わせるだけで、心臓がキュンキュンと痛んだ。
それまでは冗談を言い合っていたのに、それさえもぎごちない。
素人の女に初めて惚れてしまったせいかも知れなかった。

互いに想いを寄せながら、告白できないまま時間だけが過ぎていった。
私のトルコ通いは、千鶴を愛していると気づいた頃から、ピッタリと収まった。

秋田にいる千鶴の父親が倒れたと電報で知らせてきたのは、
うだるような夏の日の事だった。母は直ぐに千鶴に帰省の為の服と、金を用意した。
千鶴が上京して四年目、その間、初めての帰省だった。
そして母は私をコッソリと呼び寄せた。
「どうなるか判らないから、お前も一緒に行っておあげ。
 千鶴のお父さんにしっかり顔を見せてくるのよ」
その言葉の裏には、将来、千鶴の亭主になるかも知れないから、
生きて居る内に覚悟のほどを示して来い、という暗黙の優しい親心があった。

「いいんだね」
「あたしの気が変わらないうちに、早くお行きよ」
母に肩を押されるようにして、店を出た私だった。

秋田までの道程は気が遠くなるほど遠かった。
汽車の中で、千鶴は父親の容態を心配してか、思いつめたように口を重く閉ざしていた。
汽車が秋田にやっと到着したのは、翌日の昼近くに成ってからだった。
そこからバスに乗って、更に二時間ほど山間の道を行く。これが新婚旅行であったら、
どれ程素晴らしいかと思うほど、美しい自然が辺り一面に広がっていた。
  1. 妻を語る
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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