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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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今は亡き妻の日記帳。其の三

~不貞の証し~
妻の日記3-1
《昭和三十六年七月一日》
昭夫さんとは殆ど会話がない。すべては私が悪いのだ。
でも、両親の手前離婚など出来る筈もない。
私はこのまま貞淑な妻を演じていようと思う。
世間的にみれば、その方が昭夫さんの為にもなるだろう。
そしてあの人のためにも・・・

結婚後、初恵は専業主婦となり、もっぱら家に居るように成りました。
相変わらず夜の夫婦生活は有りませんでしたが、
それ以外は私によく尽くしてくれ特に問題はありません。

しかし、私の生活は徐々にすさんでいきました。あれほど夢見た結婚生活が、
初恵のお蔭で無味乾燥な物にしか思えなかったからです。飲めない酒をあおり、
商売女を買ったりもしました。次第に帰宅する時間も遅くなっていったのです。

そんなある日のこと。
私は税務署の同僚の渡辺と、昼休みに喫茶店でだべっていました。
「あのな、言おうかどうか迷ったんだが、
 一応おまえの耳にも入れておいた方がいいと思ってな」
「なんだい、もったいぶって、言いたい事が有るならはっきり言ってくれよ」
「うん、実は・・・」

その時、渡辺から聞かされた話はかなり衝撃的なものでした。
二日前、渡辺が税務調査の帰りに新宿の連れ込み宿の前を通ったところ、
若い男と初恵がそこから出て来るのを見たというのです。

渡辺は結婚式以来、何度か初恵と面識がありますから、
彼が見たと言う話は間違いないでしょう。
私の心にふつふつと怒りが湧いてきました。もうこれ以上我慢出来ない。
決定的な証拠を掴んで離縁してやる・・・。

「こんな余計なこと言わない方がよかったかな?」
「いや、聞かせてもらって感謝してるよ。
 ようやくこれで、俺の気持ちにも踏ん切りがつきそうだ」
私はくゆらせていたタバコの煙を肺の奥まで吸い込むと、
ゆっくりと吐き出しました。

 
妻の日記3-2
《昭和三十六年八月三日》
猛暑が続いている。
最近、昭夫さんの様子がおかしい。妙に優しく成ってきたのだ。
夜は別の部屋で寝ても良いよと言ってくるし、
何かと私の身体を気遣ってくれるようになった。
どうやら私と誠のことに気付いている様子はない。
出来る事なら此の侭一生気付かれずに住めばいいと思ってしまう。
いや、この関係は決して気付かれてはいけないのだ。誠のためにも・・・。

結婚当初から、私は初恵に給料袋はそっくり渡していました。
遣り繰りには自信があると言ってましたので、一応家計は任せてみようと思ったのです。
しかし私は税務署員です。自分が幾ら給料をもらっているか、一ヶ月の生活費に
どれくらいの金が掛かるか、そしてどのくらいの貯金が可能なのか・・・。
それらはすべて把握していました。
また、初恵に家計簿を必ず付ける様に命じていたのです。

ある日曜日、初恵が買い物に行っている間に、私は密かに家計簿を見てみました。
すると、どう考えても食費が多く掛かりすぎているのです。
素人には分からないかも知れませんが、私の目は誤魔化されませんでした。
何回計算しても毎月ニ、三千円(今の価値に直すとニ、三万円)の金が
毎月どこかに消えているのでした。

ちょうど其の頃、私の手元に興信所の調査結果が届きました。
食い入るように読んでみると、思ったとおり初恵は他の男と浮気を重ねていたのです。
相手の男は、戸倉誠・二十九歳。自称小説家。初恵が短大時代から所属していた
小説同人誌のメンバーらしく、三年以上の付き合いがあるらしいのです。
特にこれといった仕事をしている様子はなく、
たまに書く小説の稿料と博打で生活しているようです。

調査資料に添えられている写真には、
戸倉と初恵が連れ込み宿から一緒に出て来るところや、
喫茶店で初恵が戸倉に現金を渡している様子などが写しだされていました。

戸倉はよれよれの着物を着て、髪の毛はぼさぼさ。しかし顔つきが作家の太宰治を
彷彿させるような、いかにも作家然としたいい男だったのです。
もうこれで証拠は揃いました。あとはこれから初恵に突きつけて離婚するだけです。
  1. 妻(夫)を語る
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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