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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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淪落主婦。其の七

◇前夫の深い愛を知る◇
淪落主婦7-1
五年前に岸が肝硬変を患い二年間の闘病生活の末、三年前に亡くなりました。
私は彼の入院費用を稼ぐために、スナックに勤めながら、
月に二、三人の男に抱かれ、お金を稼ぎました。
入院を機に新しい愛人に岸を任せて別れる事も考えましたが、
二十年近く私達は離れたりくっついたりしながらも、ずっと内縁関係にありました。
他の女達は白状なもので岸が身体を壊すと誰も相手にしなくなりました。
私は彼を見捨てる事が出来ず、せっせと売春をして彼の治療費をかせいだのです。

岸が逝って、ひとりになってみて改めて思うことは、今更ながらに後悔ばかりでした。
好きな男に添い遂げたという充実感が微塵もかんじられない所が、
私の人生における最大の悲劇なのかもしれません。

本当に、あのとき東京に行っていなければ、岸という男と知り合わなければ、
私の人生はまったくちがったものになっていたはずです。
こうして年老いてから、淋しい思いをしなくても済んだことでしょう。
しかし、それもこれもみんな己の不徳の致すところなのです。

近頃腰の痛みが激しくて朝起きるのも辛い毎日です。こんな時優しい夫が
側に居てくれたら、痛む腰を優しく擦って呉れるだろうに、とつい一人涙が
零れる毎日でした。

そして心細くなった私は遂に104番に電話して、夫の自宅の電話番号を聞きました。
それは25年前と変わらぬ電話番号でした。
(今もあの人はあの家に居る。でもすでに後添えを貰って幸せに暮らして居るのだろう)

もし電話口に女性の声が聞こえたら黙って電話を切ろう。あの人が電話に出てくれたら、
と願いながら私はプッシュホーンのボタンを0□□-□□ー□□□□と震える手で押していました。
「ハイ、加藤ですが」
「あの・・・わたし・・・」
「淑子か!どうした・・・」
「お久し振りです、お元気そうね」
「私は元気だが、お前は元気ではないのか」
「わかる。今体調を壊していて、心細くなって電話してみたの。
ご迷惑だったかしら?・・・貴方にはもう奥さんが居るんでしょ」

「奥さんて、誰のことだい。そんな女はこの家には居やせんよ、
 女房なら25年前にフラリと出て行ったきり、帰ってこないんだよ。
 今でも待っているんだけどね」
「だって離婚届を郵送したでしょう・・・」
「そんな物は何処かにしまい込んだ侭に成ってるよ。まだ淑子は私の妻のままだよ。
 戸籍謄本を取り寄せた事無いのか?という事はお前は誰の籍にも入っていないんだな。
 独りの侭なんだろう。帰ってこい。
 子供達は皆独立して孫も8人居るが、この家には私一人なんだよ。」
「ウワー!孫が8人も居るんですか。可愛いでしょうね。こんな私でも帰っていいですか?
 帰ったら私も8人の孫のお婆ちゃんなのね。何だか急に年齢を感じちゃんわ」
後は電話口で泣き崩れて其の後の言葉がでませんでした。

 
淪落主婦7-2

♪柿田川慕情
作詞 万屋 太郎
作曲 阿波 昭夫
編曲 Andy A.
歌唱 たかば キヨシ

歌が聴けます。

-1-
私の我侭 咎(とが)めもせずに
元気で暮らせと 優しく言った
別れた人の   面影を
訪ねて来ました 柿田川
緑茂れる    公園に
今も涌き出る  清水(きよみず)は
あの日の侭に  澄んでいた
-2-
言い訳出来ない 私の罪を
苦労を掛けたと 頭を下げる
別れた人の   暮らしぶり
今頃気になる  柿田川
捨てて逃げたと 言われても
返す言葉の   無い私
今更何を    追い求む
-3-
優しさだけでは 駄目なんだよね
幸せ遣れぬと  自分を責める
別れた人の   眼差しが
今でも向かわす 柿田川
過ぎた月日は  戻らぬが
富士の山裾   見渡せば
あの日の侭の  雲が行く
淪落主婦7-3
“帰って来いよ”の夫の言葉に甘えるように私は残暑を感じさせる初秋のある日、
両親の葬儀の時にも帰らず、二度と帰る事は無いであろうと思っていた故郷に
25年振りに足を踏み入れました。

夫は柿田川の源泉が湧き出す公園を愛犬を連れて散歩していました。
結婚していた当時は二人して良く歩いた思い出の遊歩道です。

「三島の駅から家に電話したら、隆志が電話に出てね。
 (親父は何時も休みの時には柿田川の周辺を犬を連れて散歩して居るよ、
 母さんも行って見たら)と教えてくれたのよ。
 私ははにかみながら、夫の隣に腰を降ろしました。

「お前も思ったより元気そうで何よりだ、」
「あの男は死んだのか、25年も人の女房を独占しやがって罰が当たったんだ。
 ザマァミロと言いたいね」
「酷い事言うのね、確かに私が浅はかでした」
「でも貴方も悪いのよ、仕事一途で私の事をちっともかまってくれなかったじゃない。
 私の身体は淋しかったのよ。女はお金の苦労は耐えられても、
 身体の淋しさは耐えられないの、そんな時に、あの男が、優しく声を掛けて呉れたのよ。
 貴方には本当に申し訳ないと思っているわ御免なさい」

「そんなに素直に謝られると、返す言葉もないよ。
 あんな男の話しは聞きたく無いが、俺も悪かったと思っているよ。
 俺はあれから二十五年、他の女は抱く気には成れ無かったよ。
 一生一度の恋だと思い、生涯に妻と呼ぶのはお前だけと、決めてたからな。
 だからお前に裏切られた時は、本当にショックだったよ」

「嬉しいわ、貴女にはもう別な奥さんが居ると思ってたわ
 本当に御免なさいね、今更こんな事言える義理ではないけど、
 もう一度貴方に抱かれたい、今日はその積りで来たのよ」

「俺だって何時の日にかお前と逢えたら、この手で抱きしめてやろう、
 と思っていたよ」
「本当の気持ち、俺は今でもお前を愛して居るんだよ。
 未だ明るいけど、昔時々利用したホテルに行ってみるか」
夫の優しい言葉に私は只泣くのみでした。
  1. 熟年夫婦の色々
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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