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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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色あせたハンカチ。其の二

~スケベな道祖神~
色あせたハンカチ04
私が高校を卒業した後、家業の旅館を継ぐために手伝いをしていた。
もっとも旅館の一人息子で放蕩で育てられていたから、本気で継ぐ心積もりもない、
町に出て就職するよりは、両親の元に居て旅館を手伝う真似事でもして、
若旦那さんと呼ばれていた方が、居心地がいいと単純に考えただけの結果だった。

奈津は毎年、夏休みや冬休みに成ると、決まってアルバイトで旅館の手伝いを
していた。旅館は天然の温泉が出て、風光明媚な自然環境に恵まれているため、
曽祖父の代から続き、多くの客で賑わう。
美人で年若い奈津は、いつも客の人気を一人占めにしていた。

村外れにある鎮守様の夏祭りの日のことだった。その日の旅館は、
泊り客ばかりではなく、温泉に浸りに来る近在の人達でごったがえしていた。
夏のうちで最も忙しい書き入れ時だが、朝から響いて来る太鼓や笛の音を
聞いていると、それだけで若い血が騒いでくる。
自然に居ても立っても居られなくなり、私は強引に奈津を誘ってしまった。

「仕事はもう良いから、さっさと鎮守様に繰り出そうぜ」
「何言ってるのよ。そんな事をしたら、また、女将さんに叱られるわよ」
「叱られるなんて、屁とも思っちゃ居ないさ。こっちは叱られる事には、
 慣らされちゃつてるんだ。いいから、そんなもん放っぽらかして行こうぜ」
「でも・・・他の人にも悪いわ。雅さん一人で行けばいいのに」
「祭りに男が一人でかよ?そんなら行かない方がましだよ。
 奈津ちゃんと一緒に行くから楽しいんだぜ。
 それとも、他の女の子を誘って行っても構わないかい?」
「駄々っ子みたいな事言わないで。いいわ、女将さんに叱って貰うからね」

奈津は膨れ面をして私を睨むと、踵を返して母に言いつけに行った。
すると間もなく、母が私の部屋に入って来た。その背中に奈津は隠れながら顔だけ出すと、
茶目っ気たっぷりに舌をだしてアカンベーをしてみせる。
 
色あせたハンカチ05
「雅光、そこに座りなさい」
母の口調はキツい。こう言う時のお説教はダラダラ長くなるのだが、私は観念して、
よく調教された犬のように畳の上に正座した。

「あなたに付ける薬はもう無いわね。そんなに祭りに行きたいのなら、行ってらっしゃい。
 どうせここに居ても役に立たないんだから・・・ 
 そうね、奈津ちゃんの用心棒ぐらいにはなれるかしら。
 奈津ちゃん、今日のお仕事はもういいから、あなたも一緒に行ってらっしゃいな」
母の言葉は拍子抜けするほど意外だった。
皮肉交じりにでも、二人で行く祭り見物を許してくれたのだ。

おそらく祭囃子の賑やかな音色が、母の気分を和らげて寛大な気持にさせていたのだろう。
私は心の中で喝采を叫びながら、母の気まぐれな気持が変わる前に、
奈津の手を引いて逃げるように旅館を出た。

表は強烈な太陽の陽射しで、全ての物が白と黒のコントラストを描いている。
鎮守様に続く砂利の一本道を、私が先に成って歩き、
其の後を奈津はつかず離れずに付いて来た。
「奈津ちゃん、見てごらん」

私は道端に有る道祖神の前に屈み込んで、奈津を呼んだ。
道祖神は、道路の悪魔を防ぎ、旅人の安全を守るために祭られている。
「何が有るの?」
奈津は私の傍にしゃがみ込むと、其れを見てパッと顔を赤らめた。
「雅さんったら、いやらしい」
と言って背中を向ける。

目の前の道祖神は三十センチもない小さなもので、石造りの男神が胡坐をかいていて、
女神がそれに向かい合って抱き合い、腰の部分がしっかりと合体している。
つまり男女の交合を石像で表現した物だが、男神も女神もニカッと笑っているため、
奈津の言うように「いやらしさ」は全く感じられないのだ。むしろ滑稽ですらあった。

「いやらしいなんて思う方が可笑しいよ。とっても楽しそうな顔をしている」
「だって・・・何だかスケベそうなんだもの。第一雅さん、
 どうしてわざわざ私にこんなもの見せるの?変な事考えてるんでしょ」
色あせたハンカチ06
奈津は恥ずかしそうに立ち上がると、
私を急きたてるように其の場所から離され、
サッサと鎮守の森に向かって歩いていった。
私はその後ろ姿を、ゆっくりと追う。

道祖神の交合する姿を見て、いやらしいと思う奈津は、
当然、セックスの事は少なくとも知識として知っている。
そう思って見ると、いつも見慣れている奈津の後ろ姿は、
女子高生には見えないほど大人びて見えた。

鎮守様の境内は、多くの人々でごったがえしていた。
金魚すくいの店や、見世物小屋がズラリと並んで祭りの
雰囲気を盛り上げている。そして神楽殿では神楽が奉納され、
十重二十重の人垣が取り囲んでいた。

「オレから離れて迷子になるなよ」
私は自然に奈津の手を取った。すると奈津は反射的に
その手を引っ込めて、背中に回し後ろ手に隠した。

「どうしたの?」
「こんな人混みじゃ、恥ずかしいもの」
「なに言ってるんだ、いつも手を繋ぐ事なんて何でもない事だったじゃないか」
「それは二人だけの時だけだわ。誰が見てるか判らないもの。
 変な噂をたてられたら雅さんだってこまるでしょ、嫌よそんなの」

確かに小さな村だから、男女の噂が広がるのは早い。
初心な奈津は、その事を一番恐れているのだった。

「人は勝手なことを言うもんさ、そうでもしないと、暇人ばかりだから飽きてしまう。
 奈津ちゃんと噂になるんなら、オレは名誉な事だと思うけど・・・
 少しも困らない。ホラ、早く手を出せよ」
私は強引に奈津の手を取って人混みの中に紛れ込んだ。
  1. 色あせたハンカチ
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Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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