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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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友人の母美千代姉さん。其の七

~愛する人との別れ ~
魅惑の熟女17
親戚代表の献杯を受けた施主の平野雅人が、宙に揚げたそのビールグラスの泡を
揺らしてて、立ち上がりました。
「皆様、本日は母の七回忌法要にご列席を頂いて、誠にありがとうございました。
 特に遠路横浜からわざわざ駆けつけてくれた友、竹下和也君には心から感謝します。
 亡き母もさぞかし喜んで、呉れるだろうと・・・」
消えていくビールの泡を見つめた侭、私は顔も上げられません。

法要後の精進落としの席上です。通常の挨拶でしょうが彼の、喜んで、と言う発音に
何か力が入り、妙に意味ありげな、そう、私には皮肉に聞こえたんです。
(やはり、すぐ帰ればよかった・・・)
と、この料亭に来た事を後悔しましたが、雅人の挨拶は続きます。

30年逢わぬうちに、彼の腹だけは、会社社長らしく貫禄たっぷりに肥えましたが、
顔は昔のままに細面で童顔。それだけに目も合わせられません。

「・・・皆様ご承知のように、母はあの大戦で戦争未亡人と成ってから、
 女の細腕一つで私を大学まで行かせて呉れました・・・」
(細腕だって?そんなに細くはなかったぞ、ムッチリとしていて、アレの瞬間、俺の首に
 巻き付いて来た時にはもう、息が止まるかと思うほど力強くって・・・)

私は慌てて、雅人の背後に祭られた位牌とカラー写真の遺影に横目を送り、
(ごめんなさい。美千代さん、ご無礼でした・・・)
と誤り、目を伏せました。

昔から酒に弱かった雅人は絡み酒の傾向があるんです。
「なぁ、和也、和也君よ、お前なあ、昔お袋と何かあったんじゃねえか?」
上座から最下座の私の側に座り込み、妙に据わった眼で私の顔を舐め上げます。

「何かって、何だ、何もないよ・・・」
私は相変わらず彼の顔をまともには見られません。一人喋る彼の横で口数少なく、
グラスの日本酒をグイグイ呑み続けるだけです。

 
魅惑の熟女18
「そうかなあ、葬式の時に、お前に手紙でお袋の最後の言葉を知らせたろ?」
雅人はビールを一口飲んで、
「和也君に一目逢いたい。愛してたんだよ、と一言伝えたい、それから死にたいねぇ・・・
 そうだよな、お袋の一語一句間違いなく書き送ったよなあ?」
「ああ、そうだ、何しろ君のお袋は、俺の事を子供の頃から、本当の息子の様に
 可愛がって呉れたからな、あの手紙は嬉しくて涙が出たよ・・・」

「じゃあ、なぜ葬式に来なかった!三回忌も知らせたのによっ、なぜ来なかった!
 えっ、面妖しいじゃないかよ!」
うっ、と私は酒にむせました。そうなんです。
その言い訳に悩んで、私は葬式にも出られなかったのです。
何しろ遺言が、『愛していた』ですから・・・。

「でもよう、お前を愛している、だぞ!絶対に妖しい、うん、怪しいぞ!」
雅人はまだ絡んできます。酔いが回った私はもう面倒臭くなりました。
「分かったよ、白状するよ!俺とお前のお袋は、男と女の愛人関係だったんだよ!」

告白すると、雅人がキョトンとした顔をし、突然大口開いて笑い出し、
美千代さんの遺影を指さし、
「ガッハハハ、冗談もいい加減にしろ、あんな婆さんと若いお前が姦れる訳がねえだろ!」
完全に悪酔いです。

ホッとして一緒に笑いながら、
(バカはお前だ。お前は母親の魅力を知らないんだ、あの頃はそんじょそこらの女なんか
 足元にも及ばないぐらい凄えイイ女だったんだよ!)
私は薄くなった雅人の頭をコンコン、と少年時代のように叩きました。
雅人の笑いは止まりません。

私は遺影を眺めました。其のとき、上品に微笑む享年八十二歳の美千代さんが、
何か淫靡に笑ったような気がしたのです。
「そんな秘密をばらしたら、倅に恥ずかしいじゃない・・・」
とでも言っているようでした。
END


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  1. 未亡人との恋
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アヤメ草

Author:アヤメ草
FC2ブログへようこそ!管理人の
アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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