両手に花の果報者。其の一
◇今夜はキスだけよ◇
私が22歳の時同じ時期に付き合っていた亜矢子と奈緒美に共通していたのは、
共に私より二歳年上の24歳で有ったことと、身長が163センチ、体重は訊かなかったが、
肥満でも痩身でもない中肉の体型で、昭和40年頃の地方都市では、
男並の大柄な女で有ったと言う事だ。
昭和40年の秋口だ。銀杏坂の上のパチンコ店の二階に、
大衆洋風酒場(トリスバー)が出来て、屋台で焼酎の梅割りを飲んでいた私にとっては、
最下級の国産洋酒でも、ハイボールとジンフィーズが物珍しく、若者たちの評判になった。
「連れてって」と亜矢子が言い、乾き物のおつまみで彼女はジンフィーズ、
私はハイボールを数杯飲んだ。そして歩いて、元医院を簡易改造した大町の
女子高近くの彼女のアパートに行った。正門を入ったところで酔いがきて、
足がもつれて抱き合い、裏口に廻った柿の木の下で唇を合わせてしまった。
彼女が好意をもって居て呉れた事は確かだが、好きだの愛してるだのと、
甘い台詞を言った覚えはまったくなく、いきなり彼女を柿の木に押し付けてのキスになった。
部屋に入って良いか、泊まって良いかとか、そういう会話も一切交わさず、
カラダを縺れさせながら、裏口から亜矢子の部屋に入り、ベッドに雪崩れ込んだ。
独身女の個室でのベッチョベチョの濡れたキスは初めてだった。
「持ってるのかい?」
「・・・なにを?」
「コンドーム、サック」
「そんなの・・・持ってる訳ないでしょう。あたし、独身の娘なのよ」
「じゃあ・・・最後の一線は絶対守るよ」
亜矢子は県北の農村から高校卒業後一人で出てきているOLで劇団の仲間だった。
未婚ながら年上の亜矢子は情熱的に貼り付く様なキスをした。
「大人のキスって、男が女の唾を全部吸い込んで、
それから、女がお返しに男の唾を全部吸い込むんだって」
「ふーん。亜矢子さんはどうしてそんな事を知ってんだ」
「職場はみんな中年男だもん。娘がいると、いつだってもう露骨な猥談を聞かせて喜んでんのよ。
女も24にも成ると、いい加減耳年増になっちゃうのよ」
亜矢子は貪る様に舌を吸っては口腔内を掻き回し、鼻を鳴らす。
彼女の口が今まではなかった臭いを発した。そんなに厭な臭いではなかった。
私が22歳の時同じ時期に付き合っていた亜矢子と奈緒美に共通していたのは、
共に私より二歳年上の24歳で有ったことと、身長が163センチ、体重は訊かなかったが、
肥満でも痩身でもない中肉の体型で、昭和40年頃の地方都市では、
男並の大柄な女で有ったと言う事だ。
昭和40年の秋口だ。銀杏坂の上のパチンコ店の二階に、
大衆洋風酒場(トリスバー)が出来て、屋台で焼酎の梅割りを飲んでいた私にとっては、
最下級の国産洋酒でも、ハイボールとジンフィーズが物珍しく、若者たちの評判になった。
「連れてって」と亜矢子が言い、乾き物のおつまみで彼女はジンフィーズ、
私はハイボールを数杯飲んだ。そして歩いて、元医院を簡易改造した大町の
女子高近くの彼女のアパートに行った。正門を入ったところで酔いがきて、
足がもつれて抱き合い、裏口に廻った柿の木の下で唇を合わせてしまった。
彼女が好意をもって居て呉れた事は確かだが、好きだの愛してるだのと、
甘い台詞を言った覚えはまったくなく、いきなり彼女を柿の木に押し付けてのキスになった。
部屋に入って良いか、泊まって良いかとか、そういう会話も一切交わさず、
カラダを縺れさせながら、裏口から亜矢子の部屋に入り、ベッドに雪崩れ込んだ。
独身女の個室でのベッチョベチョの濡れたキスは初めてだった。
「持ってるのかい?」
「・・・なにを?」
「コンドーム、サック」
「そんなの・・・持ってる訳ないでしょう。あたし、独身の娘なのよ」
「じゃあ・・・最後の一線は絶対守るよ」
亜矢子は県北の農村から高校卒業後一人で出てきているOLで劇団の仲間だった。
未婚ながら年上の亜矢子は情熱的に貼り付く様なキスをした。
「大人のキスって、男が女の唾を全部吸い込んで、
それから、女がお返しに男の唾を全部吸い込むんだって」
「ふーん。亜矢子さんはどうしてそんな事を知ってんだ」
「職場はみんな中年男だもん。娘がいると、いつだってもう露骨な猥談を聞かせて喜んでんのよ。
女も24にも成ると、いい加減耳年増になっちゃうのよ」
亜矢子は貪る様に舌を吸っては口腔内を掻き回し、鼻を鳴らす。
彼女の口が今まではなかった臭いを発した。そんなに厭な臭いではなかった。
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
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有難う御座います。
私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
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此処にはその中から選んだ
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