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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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忘れ得ぬ二人の女。其の五

◇同時に去った二人の女
ひまわり
虚脱状態になった澄子。美しかった、愛しかった。
「澄ちゃん、本当に結婚しようよ・・・」
私は、寄った時より目の縁を赤く染めている澄子に囁いた。
はぁはぁ、と喘ぐだけで彼女は無言。汗が光る乳房、凹んだ白い腹の、
その汗を溜めた臍も、まだ苦しげに波うっている。閉じる力を失った太腿。
それは真実エクスタシーに達した女体の赤裸な姿だった。

「死にそうになったわ・・・」薄く眼を開いた澄子が、やっと声を漏らした。
そして、重そうに両手を伸ばして、私の抱擁を求めた。
「恐かった、何か、身体も心も何処かに堕ちて行くようで、
 気持ち良いんだけど、恐かった・・・ああ・・・」
澄子が私の胸に顔を埋めて呟く。その息はまだ乱れて、熱い。

「ね、俺と結婚しよう!澄ちゃんと、こんな風に、毎日一緒に暮らしたいんだ!」
汗に濡れた彼女の背を強く抱き寄せた。
「だめよ・・・私ねえ、父親に結婚相手を決められちゃったの・・・
 だから、善ちゃんと、こうなりたくなかったんだ・・・」
「決められちゃった・・・それ、もしかして、あの日だったの?」
澄子は答えなかった。
私の太腿を挟んだ脚に力を込めて、無言で身を擦り寄せてきた。
それが答えだった。

「わかった、俺は澄ちゃんのお父さんに会うよ、必死に頼んでみるよ!」
駄目、と澄子が顔を上げた。眼に強い光りを込めていたが、潤んでいる。
「私のお父さん、堅気の人じゃないの。
 入れ墨背負ってるの、だから、会っちゃ駄目・・・」
堅気じゃない?入れ墨。彼女の父親はヤクザ・・・。

嘘なのか本当なのか。意外な澄子の告白に私の頭は混乱した。
自然に彼女を抱く腕の力が緩んで、するりと私の腕の中を擦り抜けた澄子が、
静かに身をおこした。

「判ったでしょう、気持ちはとても嬉しいけど、結婚は出来ないのよ・・・」
紅が落ちた唇に寂しそうな笑み。明るくヒマワリのような澄子には似合わない。
だが、私は立てなかった。
 
田舎の学校
それから約半月後、増田澄子は装飾ボタン店を辞めた。
突然だった。私はその店に何も知らずに電話して、それを知ったのだ。
退職理由は、結婚準備と言う事だった。

入れ墨の父親はやはり怖い。臆病な私は、仕方が無い、と薄情にも
澄子を簡単に諦めてしまったのだ。その気持ちの奥で、
横山千穂子の存在が大きくクローズアップされていた事は確かだった。

ところが。その千穂子。
折角の歌舞伎座への招待を無下に断られて怒ったのだろうか、
誘いに来た日から、私の誕生日はもちろん、その後二度と店に現れなくなった。

初恋と恋愛。逢いに来てくれる女性と、逢いたい女性。奢っていたのか、
初恋の想いを大切にせず、安易に媚肉への欲望を選んだ私は、
同時に二人の女性を失った。

後悔と反省心はあった。
しかし半年も経たぬうちに、私は新たな女性(亡妻)に恋し、それ以降、
澄子と千穂子を忘却の彼方に置き去りにしてしまったのである。

恋は甘酸っぱいと言う。
今にして思えば、私はその味を二つに分けて味わっていた。
甘い恋は千穂子。酸っぱい恋は澄子・・・。

近いうちに青梅を再訪する積りだ。
二人の女性を思い出させてくれた、あの老婦人。
彼女は、私と知って声を掛けて来た千穂子だった、
と今の私は確信に近い思いを抱いている。

もし会えたら、私はさらに昔、あの頃は照れ臭かった小学校時代の話をしたい。
授業中に教科書の陰で、私が描いた手塚治虫の漫画の数々。
サボテン君や、ヒゲ親父、リボンちゃん。優等生だった千穂子は、
そんな悪餓鬼を教師に訴えもせず、逆に自分の教科書で隠して呉れたものだ。
その礼が言えたら、初恋成就。
END
  1. 銀座の恋の物語
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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