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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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若き日の少女の純愛。其の五

◇17年目の再会
熟女専科159
昭和五十六年六月二十六日。
今から三十年程の前、その日私は朝子と十七年振りに再会したのだ。
その頃の私は、Mの豪放な社長に重用されて、四十一歳で月給が四十万円を
越える、幹部社員になっていたのである。

Mは私の入社後の十二年間に、女性雑誌やテレビ等にも取り上げられ、
店舗数も売り上げも多い、横浜の超有名店に発展していた。

閉店間際の夕刻だった。私は店の前にある商品本部にいた。
「昔のお知り合いの方から、お電話が・・・」
インターホンの声で、私は何気なく受話器を取り上げた。

「もしもし、わたし相沢朝子です・・・」
記憶にない姓名を名乗られて、私は首をかしげた。
「相沢さん?えーと・・・」
「うふふ、覚えてないの?あ、そうか、旧姓は外川朝子、アコです・・・」
「あ!」私は受話器を握り直した。

「アコか?あのアコか?」私は声を小さくした。隣室は店の経理部だった。
「そうよ、覚えていてくれたのね?ああ、良かったあ!」
聞き覚えのない熟女の声だった。しかし、語尾が跳ね上がるアクセントは、
紛れもなく若い頃の朝子の特徴だった。だが、懐かしさの故か、
その電話の朝子は饒舌な熟女に変わっていた。

結婚して、二人の子供が居る事。私の居場所は、以前に銀座Yの古株に
私が渡した名刺で知った事。今日は女の友達と横浜に遊びに来て、
今は横浜駅の地下街から電話をしている、等を性急な声で喋り続ける。

「判った、判った!でも電話じゃ仕様がない、店が終ったら、
 その友達も一緒に夕飯でも食おう、何処かで待っててくれ」
忘れていた朝子の声を聞く私にも、強い懐かしさが込み上げてきた。
 
山下公園
「そうね、ちょつと待って・・・」
受話器の奥で何やら会話する声が聞こえた。私は長く感じる彼女の返事を待った。
「友達もOKだって、でも雨が降ってきたけど、何処で待つの?」
私は空を見た。曇り空だった外には、確かに霧雨が降っていた。
私は山下町のシティホテルの名と待ち合わせ時間を告げ、
桜木町駅でタクシーに乗るように付け加えた。

私の胸は弾んでいた。その処女を奪って逃げた後の、私の出世も見せられる。
そんな朝子への虚栄心も確かにあった。だが、その時の私には、
朝子との関係を復活する気はまったくなかった。

閉店後。私は傘を手に本部を出た。再会した朝子は、
レモン色の上品なスーツが似合う、魅力的な熟女人妻になっていた。
背丈は相変わらず小柄だが、瘠せていた四肢には程よい肉が付き、
白く艶やかな顔のリスの眼は、昔以上に輝いている。
幸せ絶頂の顔だ、と私は微笑ましかった。

私たち三人は、ホテルのレストランで、話題が尽きる事無く、
ワインとフランス料理を楽しんだ。
むろん朝子は、処女を奪われた事など、露ほども口に出さない。

十時を過ぎ、「もう帰らないと・・・」と、朝子の友人が腰を浮かせた。
二人は人妻。引き止める訳にはいかない。
ロビーに降りると、朝子たちは私と離れた場所でひそひそと話し合っている。
その光景には既視感があった。
友人の名前しか紹介されてないが、(もしかしたら、この友達は・・・)
私が首をひねった時、朝子は一人小走りに戻ってきた。

友人女性は、にこやかに私に頭を下げて、朝子に手を振りつつロビーを出て、
タクシー乗り場に向かう。
「私は、もう少し付き合う・・・」
朝子が私に腕を絡めてきた。柔らかな彼女の二の腕が、
妙に生々しい熱さで私の腋の下で弾んだ。

「ねぇ、少し歩かない?初めてきた山下公園だから・・・」
そのやや酔った口調の甘い声と、寄り添う彼女のうなじの白さに、
私は酒の酔いとは違う酔いを感じた。

ホテルを出た私は、勢い良く自分の傘を広げた。朝子が腕を絡めたまま、
その下に入った。その手には、買って来たと言う、青く小さな閉じられた傘があった。
  1. 処女娘の執念
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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