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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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略奪結婚。其の一

◇本土から来た男◇
略奪結婚03
気がつけば私も、人生八十年の山の八合目をとっくに過ぎていました。
それでなくとも、持病のリュウマチが悪くなる事はあっても良くなるみこみの無い私です。
あとどれくらい生きていられるものなのか判ったものではない。と気弱に成りがちな
今日この頃でございます。

そんな折り、私の脳裏に去来するのは如何しても昔の事ばかりに成ってしまいます。
年を取ると先の事を考えるより、過去の思い出が否応なく蘇ってしまうものなのです。

人生の終焉を間近に控えた身は、己の来し方を振り返ることが多くなります。
私も思い返すともなく、若かりし頃の思い出に浸る毎日を過ごしているのです。

わたしは現在、北九州のある町で夫と共に娘夫婦と同居していますが、
元々は九州の離れ小島の出身でした。
いまは、故郷の島もかなり開発が進み観光地化されて、近代的に変わったようですが、
私の娘時分にはかなり事情が違っていました。

大自然と素朴な人情に恵まれた良い島でした。
しかし、そんな長所とは対照的な因習が残っていました。
それは、略奪婚という女の人格を無視した風習がまかり通って居たことです。

今でこそ、マスコミの間で略奪愛なる言葉が面白半分に持て囃されているようですが、
私の島の略奪婚はそんな甘っちょろい者とは違います。男が気に入った女を力づくで
モノにする、という原始的で恐ろしい因習でした。

そのような風習が色濃く残る、風光明媚な気候風土の島で、私は人生の大半を
送ってきました。当時、島の主な産業は漁業しかしかなく、私の乳は網元として、
地元の漁師たちを取り仕切っていたのです。当然、乳は島の実力者した。

私は網元の家の一人娘として、まさに蝶よ花よと育てられました。家庭だけではなく、
島の者全員から可愛がられ、注目されて大きくなったと言っても過言ではありません。

長じて年頃の娘に成ってからは、その度合いは強まるばかりでした。特に男性たちからは、
憧れの眼差しがイヤと言うほど注がれたのです。

自分で言うのもおこがましいのですが、あの頃の私は島のマドンナの様な存在でした。
私は名士の娘であったばかりでなく、人目を惹かずにはおられない容姿にも恵まれて
いたのです。是も又手前味噌に成ってしまいますが、是でモテない筈が有りませんでした。

 
佳代子の告発03
思春期の頃から、降るように恋文が舞い込んできました。
送り主は、だいたいが漁師の息子たちでした。誤字脱字だらけの拙い恋文に、
私の恋心が動かされる事はありませんでした。私が求めていたのは、理知的な異性でした。

しかし、理想の異性など唯の一人として見つける事が出来ませんでした。
その状況は、私が十八なるまで続きました。私が女学校を卒業するまでは、
磯の香りをプンプン匂わせた海の荒くれ男しか身の回りに居なかったのです。

処が、島の役場に竹中純一(仮名)が勤めるように成ってからは、状況が一変しました。
竹中は、本土の大学を卒業してやって来た若者でした。
(まあ、ステキ!やっぱり、本土から来た男性はちがうわっ)

私は、洗練された雰囲気の竹中にひと目で惹かれてしまいました。竹中は、何もかもが
島の漁師たちとは異なっていたのです。色白で、多少神経質そうな感じがする端正な
眼差し、スラリとしたカラダつき、何より深い知性・・・。

漁師たちのような逞しさや男らしさには欠けていましたが、それが何だと言うのでしょう。
私が求めていたのは、竹中のような理知的で繊細な風貌を持った男性だったのです。
(やっと理想の人に巡り合えたんだわ。竹中さんこそ、私の待っていた人だわ)

私は、竹中に首っ丈でした。竹中の方でも、私に好意を持ってくれました。
私達は、忽ち相思相愛の間柄になりました。私は、幸せの絶頂に居ました。

けれど、そんな私達に快く思っていない人間がたくさんいました。松浦剛次郎
(仮名・当時二十三歳)など、その最たる者でした。剛次郎は、もっとも熱烈に私に求愛
していた男だったのです。けれども、私は剛次郎などまったく眼中には有りませんでした。

私は、もう竹中しか見えませんでした。女学校を卒業したあと、花嫁修行中の家事
手伝いの身の上だった私は当然、竹中との結婚を夢見ていました。

竹中にも、其のつもりは充分にあったようでした。私と竹中は、直ぐに深い仲になりました。
竹中は、言うまでもなく、私にとって始めての男でした。

竹中は、役所近くにある独身寮に住んでいました。
私は、毎日のように独身寮に通っていました。
1e.jpg
私達が初めてカラダの関係を持ったのは、
知り合って一ヶ月経ったある夏のことでした。
忘れもしない、其の夜は恒例の夏祭りが行われていました。

もちろん、私と竹中も手に手を取って夏祭りに出かけました。
そろそろ引き揚げようかという頃、
「光恵さん、寮に寄っていくだろう?ランボーの詩集を買ったんだ。
 朗読して上げるよ」
例によって竹中が私を寮に誘ってくれました。
「まあ、ステキっ。ぜひ聞きたいわ。私、ランボー、大好き!」

夏祭りの雑踏の中、人目も憚らず私はついはしゃいだ声を挙げました。すると、
「何がランボーだよ、ったく気取った野郎だぜぃ!」
後ろから、粗野な怒声が聞こえたではありませんか。

「光恵も光恵だ。ランボーが好きなら、このオレが乱暴してやろうじゃねえか!」
眉を吊り上げて振り向くと、剛次郎が嫉妬に歪んだ顔で、同じ漁師仲間の取り巻き
連中と立っていました。まったく、ガラの悪い連中でした。

「そんな青白いうらなり野郎と付き合って、何が面白いんだよ、光恵!
 島の女は、島の男とくっ付くもんだ。早く別れて、オレんとこへ来いよ」
「相変わらず、下品ね、剛次郎、誰があんたとなんかっ」

「さあ、こんな連中に構わず行こう、光恵さん」
赤銅色に焼けた肌の荒くれ男の一団に囲まれても、竹中は顔色を変えませんでした。
多少は怖かったのでしょうが、彼も私の前で精一杯に強がって見せて呉れたのだと思います。
剛次郎たちも、それ以上の狼藉にはでませんでした。

「ふん、今夜の所はこれくらいで勘弁してやるが、いいか、竹中!
 オレは光恵を諦めないぞ。オレは、昔からずっと光恵のことが好きだったんだからなっ。
 昨日や今日、島に来たおまえなんかに渡せるか。いつか、光恵を奪い取ってやる!」

剛次郎の捨て台詞を背中に、私達は寮に向かいました。
剛次郎の叫びは力強く、何やら説得力に溢れていました。
しかし剛次郎がいくら喚きたてたところで、私の心は竹中のものでした。
竹中の部屋に入ると、私は彼にしがみ付きました。

  1. 夫婦の今と昔
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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