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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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生きることへの歓び。其の四

~嘘、ウソ、恋人が死んだ!~
生きる事の歓び09
「拝啓 美智子さま お元気ですか。僕の方はぼちぼちです。
 仕事も順調で毎日楽しくやっています。あなたも仕事を頑張って下さい」
聡と結ばれて一年、その間には色々な事がありました。
まず、私は高校を卒業して短大に進学し、聡は友人と二人で、
小さな旅行代理店を共同経営することになったのです。

私達の交際は相変わらず文通で、会えるのは三、四ヶ月に一度が良い処でした。
しかし、其のうち私はおかしな事に気付き始めました。
相変わらず彼らは手紙が来るものの、明らかにその文面が変ってきたのです。
それは何だか他人行儀で味も素っ気も愛情も感じられない手紙でした。
おかしいと、私は直感しました。とても、聡が書いた手紙とは思えませんでした。

有る時期を境に文面がころっと変ってしまうなんて、書き手が変ったとしか考えられません。
そう思うと、もういても立ってもいられませんでした。
もしかしたら、聡は心変わりをしてしまったのだろうか。それとも彼の身に何かあったのでは?
とにかく聡のところへ行ってみよう。私は意をけっして、彼の住む街に行きました。
そこで待っていたのは余りにも残酷な事実だったのです。

「、美智子さんですか・・・判りました。駅前で待ってて下さい」
彼の家に電話すると、聡とよく似た男の人の声が聞こえてきました。
駅前で待っていた私の前に現れたのは、聡とは似ても似つかない貧弱な男の人でした。

「はじめまして、僕、聡の弟の隆です。何で僕がここに来たのかとお思いでしょうね」
聡の弟・中谷隆は、にわかには信じられないことを口走ったのです。
「兄は死にました。もう、三ヶ月になります」
「えっ、い、いま何て・・・何ていったの?」
青い空と茶色の地面が、ひっくり返ったように思えました。

もう一度、隆は言いました。
「兄は死んだんです。自殺でした。いっしょに会社を経営していた友人が、
 会社の金を持ち逃げしたんです。会社も巧くはいっていませんでした。
 あちこちに借金を重ねて、その借金も兄一人の肩に・・・
 その重圧に耐えられなかったのでしょう」
「う、嘘よ!嘘よ、そんなっ。聡が死んだなんて、私に黙ってそんなっ」
涙が滝の様に溢れ出しました。私は隆の胸ぐらを掴んでいました。

「美智子さんの事は兄から良く聞いていました。直ぐに知らせようかと思ったんですが、
 気の毒で出来ませんでした。申し訳ありません。手紙は僕が代筆していました」
その言葉を聞き終わらないうちに意識が遠くなり、私はその場に失神して倒れていました。
 
~兄貴の代わりに成りたい~
生きる事の歓び10
あのときのショックは筆舌に尽くしがたいものがありました。私の初めての真剣な恋は、
彼の死によって呆気なく幕を閉じてしまったのです。私と聡の間には、短かっただけに
美しい思い出だけが残りました。聡が死んだと言う事実を目の前に突きつけられても、
そうそう簡単に彼の事が忘れられる筈はありません。

悲しみに浸ると同時に、私に一言の相談もなしに、また遺言一つ残さずに自殺した
聡を恨めしくも思っていました。恋人に去られた私は深く傷ついていたのです。

「美智子さんが気の毒で成らなかった。だから、僕は兄貴が生きているのかのような
 真似をしていたんです。美智子さん、どうか一日も早く立ち直って下さい」
傷心の私を慰めてくれたのが隆でした。隆は毎週週末ごとに、私の住む街まで
逢いに来てくれたのです。そんな日々が何ヶ月も続きました。

私は隆の気持ちが、私に対する単なる同情では無い事に気付いていました。
隆は私が好きなのだ・・・私は段々と隆の思いやりにほだされていったのです。

正直言って、隆は聡と違い、男としては余り魅力的なタイプではありませんでした。
確かに兄弟ですから、どこか聡の面影を宿してはいましたが、聡を太陽に例えるならば、
さしずめ隆は月と言ったところだったでしょう。男としては背も低くパッとしない隆でしたが、
優しさや思いやりは人一倍ありました。
それに私も、心の中にぽっかりと穴が開いたみたいな、淋しい毎日を送っていました。

「僕で良ければ兄貴の代わりに成りたい。不謹慎な男だと思われるかも知れないが、
 僕は美智子さんが好きなんだ。兄貴を忘れられるように手助けしたいんだ」
ある週末、ついに隆ははっきりと私に気持ちを打ち明けました。

「いい加減な気持ちじゃないんだ。僕は君と結婚したいと思っている」
真剣そのものの隆に、私もグラッときてしまいました。
この人ならばきっと良い夫に成って呉れる事だろう。
穏やかな生活を約束してくれるに違いない・・・
私は頷き、その夜のうちに隆と男と女の関係を結んでしまったのです。
  1. 夫婦の今と昔
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アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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