憎き鬼(姑)ババァ・・・其の六
◇神様のいたずら◇
「いつまでも、此の侭でいたいね」
彼はその形を持続するように、静かに動きを止めた。
私は彼とは逆に、身悶えながら膣の中を収縮するように行動すると、
「あ、それとってもいいよ。もっと強くしてみて。ああ、とってもいい」
彼はたちまち興奮して、大きく腰を動かすと、間もなく達してしまった。
彼の精液は想像以上に私の中に入り、やがてぐったりする。
そのうち、外に溢れ出るような気がして、そっと体をゆすった。
「少し待ってよ。もう少しこのままでいたい。シーッは汚れたって構わないからさ」
人間って勝手なもので、欲望が終わると、後は、顔を見るのも億劫だと言われてるが、
彼は違った。何時までも、その余韻に浸っているようだった。
それからウトウトするうちに、夜明けとなった。そっと床から抜け出し着替えをしていると、
「あ、もう起きたの?ご飯食べてってよ」
「有難う。私が仕度するわ。何にするの?」
「朝からチャンコじゃね」
「パンとコーヒーがいいわ。
貴方お上手だからコーヒー煎れて、私はパン焼いて目玉焼きでも作るわ」
今朝も快晴。朝食の前に、二人して二階のベランダに夜具を日光浴させる。
富士山が遥かに見えた。
居間でのパン食とともに美味しいコーヒーに幸せ一杯な朝だった。
「この間、久ぶりに赤坂に行ったわ」
「おや、赤坂に何の用事?」
「懐かしくなると、たまに行って見たくなるのよ。私、若い頃、赤坂に縁があって、
大学を卒業して初めて働いた会社も、次の職場の弁護士事務所も、赤坂だったのよ。
結婚して子供が出来て暫くは専業主婦をしていたけど、子供は次第に成長して、
上の学校にも上げたいし、親子三人少しでも余裕をもった生活がしたくて、
ちょうど新聞広告で、帳場の係りを募集していた料亭に面接に行き、その場で採用されたの。
当時、其処の女主人は時の人とも騒がれていた人物で、小説のモデルにもなり、
ベストセラーになって、憧れていた人でもあったのよ。
女主人のことを、“奥様”とお呼びしていたわ」
「60歳をとうな過ぎていたけど、キリッとした美人で、貫禄があったわ。
以前、外務大臣まで勤めた方の愛人だったけど、経済の面では奥様の方が貢いでいたそうよ。
旦那様の本妻さんが病死なさり、料亭をやめて家庭に入るように申し込まれた際、
喜ばれるかと、思いきや奥様のご返事は意外にも、
(私には大勢、苦楽を共にしてきた従業員がおります。その人達を路頭に迷わす事は出来ません)
この言葉は当時の新聞にも載り、それからファンになってしまったのよ。
初めの頃は、堅い職場と違って、事務所の女性も古参ばかりで、
会社とは全く内容が変り、面食らうことばかりだったけど、夜ともなると、
奥様が立派に正装してお座敷に立ち向かう姿に、我が身の弱さを反省しながら、
頑張ろうと、といった気分に成ったの」
「客筋は一部上場の商社などの財界人や政界の大物といわれる超一流の人ばかり。
商社が接待するのは主に外人が多くて、特に、韓国と、中国系はアルコールに強くて、
係りのお姐さん、無理矢理強いお酒をのませ、悪い悪戯を強要するので、
毎晩、幾人かの女性が事務所に泣き込んで来るのよ。
でもお相手がお客様ではどうにもならず、そんな時、
『まかせなさい』と見事にとりなすのが、奥様の手腕だったのよ。
だから従業員一同、心から尊敬していたわ。
暫く前、新聞の死亡欄でその訃報を目にして驚いたわ。
当時の赤坂は華やかさ全盛で、民放の局も近くで、キャスターや俳優さんも
度々目にして、私なんかおのぼりさんみたいに見惚れる事ばかりで、
いいミーハー気分に成ってしまうのよ」
「苦労もあったけど、楽しい面もあってよかったね」
「あら私なんでこんな話になったからのかしら」
「いや、感動して聞いていたよ。特に、料亭のお内儀が、しゃきっとした態度で、
接待に向かう様子に、我が身に鞭打ち頑張った君の姿に、心引かれたよ。
君とは年も同じで、ちょうど僕も、そのころ(20年前)似たような苦労続きだった。
子供達は、お袋が元気だったから家事は全部引き受けてくれてたけど、
せめて少しだけでも寂しがらせないように、会社が終わると一直線に帰ったもんだよ。
仲間には付き合いの悪い奴とか、変人なんて陰口も言われたけど、
幸い母親が無くっても横道にもそれず、どうにか素直に育って、
苦労も無駄ではなかったと、ホッとしているところだ」
「お互いにとんだ打ち明け話になったわね」
「嬉しいよ。君の過去の話も聞けて良かったよ。
赤坂と言うから、どんなのろけ話になるかと、ちょっと覚悟していたけどね」
「まあ、お生憎様。期待するようなものは何もないわ。
結婚前も、結婚後も男は主人一人だったのよ。今まで何遣っていたのかしら、
今頃あの世に近付いてから、貴方のような方に巡りあえるなんて、
神様の悪戯かしら。それとも、お恵みかしらね?」
「君は悪戯って言いたいんだろう。僕は後者の方だと感謝してるんだ」
「あら、私だって同じよ」
話が落ち着いたところで、すっかり陽が昇って、暖かくなったが、師走の風は冷たい。
良いからと言われたが、朝食の後片付けを済ます。
「車で送るから」と親切に言って呉れたが、
「運動のために歩くわ」と言って玄関を出た。
「駅まで送るよと」と彼が後を追ってきた。
最寄の私鉄駅までは歩いて15分、
彼と二人確りと手を繋いで歩いた。
私は幸せな気分に充たされていた。
END
「いつまでも、此の侭でいたいね」
彼はその形を持続するように、静かに動きを止めた。
私は彼とは逆に、身悶えながら膣の中を収縮するように行動すると、
「あ、それとってもいいよ。もっと強くしてみて。ああ、とってもいい」
彼はたちまち興奮して、大きく腰を動かすと、間もなく達してしまった。
彼の精液は想像以上に私の中に入り、やがてぐったりする。
そのうち、外に溢れ出るような気がして、そっと体をゆすった。
「少し待ってよ。もう少しこのままでいたい。シーッは汚れたって構わないからさ」
人間って勝手なもので、欲望が終わると、後は、顔を見るのも億劫だと言われてるが、
彼は違った。何時までも、その余韻に浸っているようだった。
それからウトウトするうちに、夜明けとなった。そっと床から抜け出し着替えをしていると、
「あ、もう起きたの?ご飯食べてってよ」
「有難う。私が仕度するわ。何にするの?」
「朝からチャンコじゃね」
「パンとコーヒーがいいわ。
貴方お上手だからコーヒー煎れて、私はパン焼いて目玉焼きでも作るわ」
今朝も快晴。朝食の前に、二人して二階のベランダに夜具を日光浴させる。
富士山が遥かに見えた。
居間でのパン食とともに美味しいコーヒーに幸せ一杯な朝だった。
「この間、久ぶりに赤坂に行ったわ」
「おや、赤坂に何の用事?」
「懐かしくなると、たまに行って見たくなるのよ。私、若い頃、赤坂に縁があって、
大学を卒業して初めて働いた会社も、次の職場の弁護士事務所も、赤坂だったのよ。
結婚して子供が出来て暫くは専業主婦をしていたけど、子供は次第に成長して、
上の学校にも上げたいし、親子三人少しでも余裕をもった生活がしたくて、
ちょうど新聞広告で、帳場の係りを募集していた料亭に面接に行き、その場で採用されたの。
当時、其処の女主人は時の人とも騒がれていた人物で、小説のモデルにもなり、
ベストセラーになって、憧れていた人でもあったのよ。
女主人のことを、“奥様”とお呼びしていたわ」
「60歳をとうな過ぎていたけど、キリッとした美人で、貫禄があったわ。
以前、外務大臣まで勤めた方の愛人だったけど、経済の面では奥様の方が貢いでいたそうよ。
旦那様の本妻さんが病死なさり、料亭をやめて家庭に入るように申し込まれた際、
喜ばれるかと、思いきや奥様のご返事は意外にも、
(私には大勢、苦楽を共にしてきた従業員がおります。その人達を路頭に迷わす事は出来ません)
この言葉は当時の新聞にも載り、それからファンになってしまったのよ。
初めの頃は、堅い職場と違って、事務所の女性も古参ばかりで、
会社とは全く内容が変り、面食らうことばかりだったけど、夜ともなると、
奥様が立派に正装してお座敷に立ち向かう姿に、我が身の弱さを反省しながら、
頑張ろうと、といった気分に成ったの」
「客筋は一部上場の商社などの財界人や政界の大物といわれる超一流の人ばかり。
商社が接待するのは主に外人が多くて、特に、韓国と、中国系はアルコールに強くて、
係りのお姐さん、無理矢理強いお酒をのませ、悪い悪戯を強要するので、
毎晩、幾人かの女性が事務所に泣き込んで来るのよ。
でもお相手がお客様ではどうにもならず、そんな時、
『まかせなさい』と見事にとりなすのが、奥様の手腕だったのよ。
だから従業員一同、心から尊敬していたわ。
暫く前、新聞の死亡欄でその訃報を目にして驚いたわ。
当時の赤坂は華やかさ全盛で、民放の局も近くで、キャスターや俳優さんも
度々目にして、私なんかおのぼりさんみたいに見惚れる事ばかりで、
いいミーハー気分に成ってしまうのよ」
「苦労もあったけど、楽しい面もあってよかったね」
「あら私なんでこんな話になったからのかしら」
「いや、感動して聞いていたよ。特に、料亭のお内儀が、しゃきっとした態度で、
接待に向かう様子に、我が身に鞭打ち頑張った君の姿に、心引かれたよ。
君とは年も同じで、ちょうど僕も、そのころ(20年前)似たような苦労続きだった。
子供達は、お袋が元気だったから家事は全部引き受けてくれてたけど、
せめて少しだけでも寂しがらせないように、会社が終わると一直線に帰ったもんだよ。
仲間には付き合いの悪い奴とか、変人なんて陰口も言われたけど、
幸い母親が無くっても横道にもそれず、どうにか素直に育って、
苦労も無駄ではなかったと、ホッとしているところだ」
「お互いにとんだ打ち明け話になったわね」
「嬉しいよ。君の過去の話も聞けて良かったよ。
赤坂と言うから、どんなのろけ話になるかと、ちょっと覚悟していたけどね」
「まあ、お生憎様。期待するようなものは何もないわ。
結婚前も、結婚後も男は主人一人だったのよ。今まで何遣っていたのかしら、
今頃あの世に近付いてから、貴方のような方に巡りあえるなんて、
神様の悪戯かしら。それとも、お恵みかしらね?」
「君は悪戯って言いたいんだろう。僕は後者の方だと感謝してるんだ」
「あら、私だって同じよ」
話が落ち着いたところで、すっかり陽が昇って、暖かくなったが、師走の風は冷たい。
良いからと言われたが、朝食の後片付けを済ます。
「車で送るから」と親切に言って呉れたが、
「運動のために歩くわ」と言って玄関を出た。
「駅まで送るよと」と彼が後を追ってきた。
最寄の私鉄駅までは歩いて15分、
彼と二人確りと手を繋いで歩いた。
私は幸せな気分に充たされていた。
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プロフィール
Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。
私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。
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