肉欲と嫉妬の三年間。其の四
◇私の二重性活◇
ヘトヘトになって家のドアを開けると、修羅場が待ち受けていました。
玄関先に、鬼よような顔をした夫が立っていたのです。
「いままで何をしていた?誰と一緒だった?」
「勤め先の人よ。少し飲んで来たの。・・・子供たちは?」
「もう寝たよ。おまえが、車ん中で乳繰り合ってるあいだにな!」
「・・・・」
夢から覚めた思いでした。夫は知っている。車の中での出来事に気づいている・・・。
「郁子、おまえって女は・・・。こっちへ来い!」
「い、いやっ、やめてよ!」
夫は私の髪を引っ張り、そのまま私を居間へと引きずって行きました。
もうダメだ、すべてバレている。私は観念しました。
「いつからからなんだ?あの男は誰なんだ?」
「勤め先の上司よ。半年くらいまえからかしら・・・」
言い訳をしてもはじまらない、と私は正直に告白しました。
自分でも意外なほど、落ち着いていました。
「何てこった!どうして、おまえは・・・。いったい、何の不服があるって言うんだ!え?!
家もあるし、オレは真面目に働いている。子供達も、元気で素直だ?!
それなのにどうして?!」
夫はすっかり頭に血が昇っているようでした。まあ、無理からぬ事かもしれません。
妻の情事を覗き見してしまったのですから。
「そうね。何の不満もないわ・・・」
夫がカッカするのを見て、私はますます冷静になってゆきました。
どうせ、夫に理由を話したって判って貰える筈はない・・・
別に夫を見下ろす気持ちはありませんでしたが、
私は何時の間にか開き直る態度をとっていたようです。
「私だって、女なのよ。あなたにとっては、単なる使い古しの女房かもしれない。
だけど、私だって女だと認められたいの!生きている実感が欲しかったのよ」
「生意気な事を言うな!それと浮気と何の関係があるか?!」
夫が怒りたてばたつほど、私の腹は座ってゆきました。
このまま離婚という事に成っても仕方ない、洗いざらい本音を夫にぶちまけてやろう。
と私は一気にまくしたてていたのです。
「関係あるわ!はっきり言って、私、あなたでは満足できないの。
私は家政婦じゃないのよ。ましてや人形なんかじゃないわ。血の通った人間なのよ、
女なのよ!吉村さんは、私をちゃんと女として扱ってくれる。
女としての私を満足させてくれるの。私、あの人と別れるなんて出来ないわ。
たとえ、あなたと別れる事になっても離れることなんて出来ない!」
殺される事も覚悟の上で、私は自分の気持ちを吐き出しました。
と怒り狂うかと思いきや、夫はガックリと首を垂れたのです。
「じゃあ、オレと別れるというのか?オレと子供を捨てても、あの吉村って奴といっしょに・・・」
「吉村さんにも家庭があるの。あの人と結婚しょうなんて思っちゃいないわ。
ただ、離れなれないだけ・・・」
「そうか。そんなにおまえは・・・」
ションボリとうなだれて、夫は居間を出ました。
一晩がすぎて翌日、私達はもう一度話し合いました。
「どうしても、おまえがあの男と切れないというなら仕方ない」
夫は、驚くべき答えを出しました。
「しかし、オレは離婚しないぞ。子供たちが可愛そうだからな。
あの男とのことを認めてやるよ」
「あ、あなた・・・」
私は夫の言葉が俄には信じられませんでした。
妻の浮気を公認する夫など、聞いた事もありません。
「ただし、これだけは忘れないでくれ。飽くまでも、おまえはあの子達の母親だ。
あの子達には気づかれないようにやってくれ、
母親だと言う立場を忘れないでくれ。いいな。コレが条件だ」
夫の話しに一応は頷いたものの、もちろんスッキリした気持ちにはなれませんでした。
けれどもよくよく考えて見れば、私達夫婦が是までの生活を続けてゆくには、
夫が折れるしかないのです。夫が譲歩し、私が子供に気づかれないよう注意すれば、
何とか吉村との関係は保たれてゆくかも知れません。
こうして、私の二重性活は幕を切って落とされたのです。
ヘトヘトになって家のドアを開けると、修羅場が待ち受けていました。
玄関先に、鬼よような顔をした夫が立っていたのです。
「いままで何をしていた?誰と一緒だった?」
「勤め先の人よ。少し飲んで来たの。・・・子供たちは?」
「もう寝たよ。おまえが、車ん中で乳繰り合ってるあいだにな!」
「・・・・」
夢から覚めた思いでした。夫は知っている。車の中での出来事に気づいている・・・。
「郁子、おまえって女は・・・。こっちへ来い!」
「い、いやっ、やめてよ!」
夫は私の髪を引っ張り、そのまま私を居間へと引きずって行きました。
もうダメだ、すべてバレている。私は観念しました。
「いつからからなんだ?あの男は誰なんだ?」
「勤め先の上司よ。半年くらいまえからかしら・・・」
言い訳をしてもはじまらない、と私は正直に告白しました。
自分でも意外なほど、落ち着いていました。
「何てこった!どうして、おまえは・・・。いったい、何の不服があるって言うんだ!え?!
家もあるし、オレは真面目に働いている。子供達も、元気で素直だ?!
それなのにどうして?!」
夫はすっかり頭に血が昇っているようでした。まあ、無理からぬ事かもしれません。
妻の情事を覗き見してしまったのですから。
「そうね。何の不満もないわ・・・」
夫がカッカするのを見て、私はますます冷静になってゆきました。
どうせ、夫に理由を話したって判って貰える筈はない・・・
別に夫を見下ろす気持ちはありませんでしたが、
私は何時の間にか開き直る態度をとっていたようです。
「私だって、女なのよ。あなたにとっては、単なる使い古しの女房かもしれない。
だけど、私だって女だと認められたいの!生きている実感が欲しかったのよ」
「生意気な事を言うな!それと浮気と何の関係があるか?!」
夫が怒りたてばたつほど、私の腹は座ってゆきました。
このまま離婚という事に成っても仕方ない、洗いざらい本音を夫にぶちまけてやろう。
と私は一気にまくしたてていたのです。
「関係あるわ!はっきり言って、私、あなたでは満足できないの。
私は家政婦じゃないのよ。ましてや人形なんかじゃないわ。血の通った人間なのよ、
女なのよ!吉村さんは、私をちゃんと女として扱ってくれる。
女としての私を満足させてくれるの。私、あの人と別れるなんて出来ないわ。
たとえ、あなたと別れる事になっても離れることなんて出来ない!」
殺される事も覚悟の上で、私は自分の気持ちを吐き出しました。
と怒り狂うかと思いきや、夫はガックリと首を垂れたのです。
「じゃあ、オレと別れるというのか?オレと子供を捨てても、あの吉村って奴といっしょに・・・」
「吉村さんにも家庭があるの。あの人と結婚しょうなんて思っちゃいないわ。
ただ、離れなれないだけ・・・」
「そうか。そんなにおまえは・・・」
ションボリとうなだれて、夫は居間を出ました。
一晩がすぎて翌日、私達はもう一度話し合いました。
「どうしても、おまえがあの男と切れないというなら仕方ない」
夫は、驚くべき答えを出しました。
「しかし、オレは離婚しないぞ。子供たちが可愛そうだからな。
あの男とのことを認めてやるよ」
「あ、あなた・・・」
私は夫の言葉が俄には信じられませんでした。
妻の浮気を公認する夫など、聞いた事もありません。
「ただし、これだけは忘れないでくれ。飽くまでも、おまえはあの子達の母親だ。
あの子達には気づかれないようにやってくれ、
母親だと言う立場を忘れないでくれ。いいな。コレが条件だ」
夫の話しに一応は頷いたものの、もちろんスッキリした気持ちにはなれませんでした。
けれどもよくよく考えて見れば、私達夫婦が是までの生活を続けてゆくには、
夫が折れるしかないのです。夫が譲歩し、私が子供に気づかれないよう注意すれば、
何とか吉村との関係は保たれてゆくかも知れません。
こうして、私の二重性活は幕を切って落とされたのです。
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プロフィール
Author:アヤメ草
FC2ブログへようこそ!管理人の
アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。
私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。
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