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異性への恋心を大切にして生きてきた昭和の時代を振り返ってみましょう。

思い出される昭和のあの日あの頃

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乙女の淫情。其の一

◇衝撃の出会い◇
淫情1-1
あれはもう、今から45年も前の話しに成るでしょうか。どれほど平々凡々な
人生を歩んでこようと、誰にでも決して忘れる事の出来ない生涯の思い出の一つや
二つは必ず有るものです。勿論、かく言う私にも忘れ得ぬ青春の一コマがありました。

いまでこそ、優しく誠実な夫、二人の娘たち、そして三人の孫に恵まれ、平穏な生活を
送っている私ですが、女学生の頃は激しい恋に身をやつした経験があるのです。
甘く、ほろ苦く、そしていま思い返しても胸の締め付けられる様な恋愛でした。

どうして、あれほど情熱的な恋愛が出来たのか、還暦を過ぎた今と成っては、
本当に不思議でなりません。私は、恋に狂った牝獣でした。

当時の私は恋愛を成就させる為なら、
手段を選ばない、なりふり構っている余裕さえない少女でした。
若さという狂気じみたパッションは、時として人を異常な行動に駆り立てるのです。
私も、また青春の熱病に取り憑かれた者の一人でした。

あの頃の自分を振り返ると、私は自身に対する哀れみとともに恐怖が抑えられません。
17歳の私は、恋の為ならこの身を滅ぼしても構わないと思っていました。
そればかりか、他人のことなど如何でもいいと思い詰めた身勝手極まりない人間でした。

私は、東京近郊の自然に恵まれた土地に生まれ育ちました。実家は、
明治時代から続く老舗の造り酒屋、父と母、祖母は一人娘の私を溺愛していました。
大袈裟な言い方をすれば、お嬢さん育ちの私でした。小さい時から家族は
私の言いなりで、思い通りに成らなかった事は何一つ有りませんでした。

小学校から、都内の私立の付属校に通っていました。
今では珍しくも無いかも知れませんが、あの時代、
地元の公立校に行かなかったのは私だけだったと思います。

蝶よ花よと温室育ちできた私ですから、17歳になるまで恋らしい恋などとは
まったく無縁でした。時代のせいも有りましたが、両親が異性関係については
事のほか厳しかったからです。私もまた、さほど異性には興味ありませんでした。

私はのほほんと、しかし我がままに成長していました。そんな私の目を覚ませる
出来事が起きたのは、私が高等部二年の春のことでした。

 
淫情1-2
「こんど、町の診療所に新しい先生が来たそうだよ」
ぽつりと祖母が洩らした時、病気とは殆ど縁の無い私は全く関心が惹かれませんでした。
しかし、祖母は不満そうにつづけました。

「まえの先生は、長かったねえ。腕のいい先生だったよ。
 新しい先生は、未だ二十代だそうだよ。信用できないねえ。
 若い医者なんか。でも、まあ文句は言えないね。
 この町には、病院と呼べるところは、あの診療所一軒しかないんだから」
「お婆ちゃんは、週に一回は必ず病院へ行くもんね。お婆ちゃんにしてみれば、
 大問題かもね。丈夫な私には、あんまり関係ない。誰が、あの診療所に来ようと」
「ふん。澄子だって風邪ぐらいひくだろうが。関係無い事無いよ」
「私、病院なんて大嫌い。風邪ひいたって、行かないわ」

そう大口を叩いていた私が三十九度の熱を出したのは、それから二、三日後の事でした。
夜間、急に発熱した私を父が無理矢理、診療所に連れて行ったのです。
「先生、夜分に恐れ入ります。娘が高熱を出しまして。どうか、診てやって下さい!」

診療所の医師は、診療所に隣接した家に住んでいました。
だから、一応診察時間が決まっていても、時間外で訪れる人が後を絶えないようでした。
「おや、造り酒屋の・・・。構いませんよ。早くお入りなさい」

朦朧とした意識の中でも、私ははっきりと衝撃を感じていました。
診療所のドアを開けた若い医師を一目見て、カラダ中の血が沸騰する思いでした。
それが私と副嶋圭一郎(仮名)との初めての出会いでした。

今でも、あの衝撃を忘れる事は出来ません。
私が瞬間、気を失いそうに成ったのは熱のせいばかりではありませんでした。
あんな気持ちに成ったのは、あれが生れて初めてでした。
一目惚れとは、まさにあの事を言うのでしょう。
「さあ、ここに横に成って下さい、お嬢さん。大丈夫ですか、歩けますか?」

身長175センチを超えて居たのではないでしょうか、
スラリとした長身の凛々しい医師でした。
眉はきりりと太く、その下で涼やかな瞳がキラキラ輝いていました。
淫情1-3
(な、何てステキな人なの!こんな男性、この町には一人だっていやしないわ)
知性的な眼差しに見詰められ、私は金縛りに成って了いました。
鼻筋はまっすぐ高く通り、雄々しく結ばれた口唇はどことなく官能の匂いを漂わせ、
私をクラクラと魅了してしまったのです。私は、まさしく魂を抜かれてしまった状態でした。
「ふむ。歩けないようですね。では、僕が失礼して・・・」

茫然自失していた私をひょいと抱え上げると、副嶋医師はそのまま私の体を
診察台の上に横たえました。
拍子に副嶋のカラダから嗅いだ、色気も何もあったものではないクレゾールの匂いさえ、
乙女心をくすぐったものでした。

「胸の音を聞かせて下さい。ちょっと、前を肌蹴ますよ」
と、副嶋の指がパジャマのボタンに掛かった時は、心臓が飛び出してしまいそうでした。
胸のドキドキが彼に聞こえてしまうのではないか、と私は本気で思いました。

副嶋に診察されている間、私は今まで味わった事の無い至福を感じていました。
熱の為か、副嶋への思いのためか、カラダが雲の上でフワフワしているようでした。
(もしかして、これが恋?この気持ちが恋と言うものなのかしら!)
私にとっての恋は、映画やドラマや小説の中のもの、架空のものでしか有り得ませんでした。
それが一転、思いも寄らず恋の虜と成ってしまったのです。
(どうしょう!私、副嶋先生の事が忘れられなく成っちゃった)

風邪はそれから数日後にはすっかり快くなりましたが、
代わりの病が私に取り憑いて了いました。言うまでもなく、恋の病というものでした。
寝ても覚めても、診療所の医師の面影が私の頭の中から離れませんでした。
毎日毎日、考えることと言えば、副嶋のことばかりだったのです。

副嶋先生に会いたい、顔が見たい、声が聞きたい・・・。
その想いのみに頭を占領されて、食事もろくに喉を通らない、
勿論勉強など手に付きません。
「澄子は、何でそんなにぼんやりしてるんだ?あの風邪の後遺症じゃないか。
 もういちど、診療所に行って見てもらったった方がいい。脳でもやられていたら、困る」
  1. 純愛ポルノ
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プロフィール

アヤメ草

Author:アヤメ草
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アヤメ草(万屋太郎)です。
演歌の作詞や官能小説書きを趣味とする、
今年72歳に成る“色ボケ爺さん”です。
何時も私のブログを見て頂き
有難う御座います。

私の別ブログ
“詩(うた)と小説で描く「愛の世界」”
も開設から八年目に入り、
多くの作品を公開してまいりました。
此処にはその中から選んだ
昭和時代の懐かしい「あの日あの頃」
の作品をまとめて見ました。

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